あらすじ
東京にある総合出版社に勤務する編集者「わし」は、人知れず自らの性的な問題に苦悩していた。幼い頃に刻み込まれた、ある性的嗜好が大人になった現在も、恋愛の深刻な障害となっているのだ。その原因となったのが某少年漫画誌だったのだが…。モーレツでサイケな70年代が育てはぐくんだ世代の悲喜劇。鋭い時代考察と、うずくやましさ満載、姫野ワールド全開の傑作短編集。
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Posted by ブクログ
70年代を描いた懐かしさあり、やましさあり、そして共感もありの短編集。「オー!モーレツ」「お元気ですか、先生」「少年ジャンプがぼくをだめにした」などの6編が収録されています。
70年代と言えば、安保闘争がちょうど70年代初頭の頃の出来事であり、フォークソングが流行したり、サイケ調のファッションが流行したのって70年代のことでしたよね(だから「サイケ」ってタイトルなのね)。
この短編集は、ただそれらの世相や出来事をなぞり、「そういう時代だった」や、当時を生きた人たちのノスタルジーだけには終わらない作品たちで構成されています。(もちろん作中には懐かしい言葉もポンポン飛び出していて、それはそれでおもしろいけれど)むしろ、70年代を検証した小説集であるといえそうです。読みながら、「どんな時代だったのか?」を考えてしまいます。
私がすごいと思った作品は「お元気ですか、先生」です。一見ほのぼのとしたタイトルなんですが、中身がすごい。ここに登場する小学校の教師はなんて恣意的な教育をするんだろう。えこひいきにヒステリー。まるで教師の天下?読めば読むほど、ここに登場した先生とは違うパターンであるけれど、自分の小学校時代の担任を思い出してしまいました。
気分で怒る、なぐる、セクハラは当たり前、詳細は書けないけれど今なら教育委員会から指導されてもおかしくないようなお仕置きもあり、今思えば非常に理不尽だと思えるような決まりも作られたし、そしてもちろんえこひいきもあり...。
おそろしいことに、そんな教師が他クラスや学年の担任にもゴロゴロ。
この短篇でこのように描かれたと言うことは、こんな教師が70年代では当たり前だったのか?と思ってしまう。
また、「オー!モーレツ」は作者の小学校時代を思わせる作品。どこまでがフィクションなんだろう?なんて不謹慎なことを考えてしまいそう。