あらすじ
【内容紹介】
一般にバブル崩壊後の新規学卒採用が特に厳しかった時期に学校を卒業した世代を「就職氷河期世代」と呼んでいるが、彼・彼女らは非正規の割合が多い世代であり、さらにここにきて高齢者の再雇用と新卒者の初任給上昇に挟まれた形で、賃金上昇が著しく低い状況となっているだけでなく、くわえて早期退職の候補にも入るようになってきた。
本企画は、自身もこの世代であり「30年ぶり賃上げでも増えなかったロスジェネ賃金」というレポートを執筆したエコノミストの著者が書く、就職氷河期の経済的真実を書いた一冊。
【目次】
はじめに 就職氷河期世代は本当に経済的に割を食っているのか
第1章 「就職氷河期世代」はなぜ生まれたのか
・超売り手市場から就職氷河期へ
・バブル崩壊を経て採用数の大幅縮小へ
・大企業が新規採用を抑えたことで深刻さが増した
・進路変更を迫られた学生たち
・1990年代後半から増えてきた非正規雇用
・非正規雇用の問題点
・企業目線重視の派遣法改正
・リーマン・ショック、コロナ・ショックと就職氷河期の違いとは
・自己責任論から国による対策へ
第2章 「就職氷河期世代」の雇用事情
・中年になった今もポスト縮小や抜擢人事で割を食っている
・フリーター&派遣社員率が高く、全体賃金が目減りしている
・新卒の人材確保、定年延長の間で起きた就職氷河期世代の年収減少
・賃金は上がり切らないまま、早期退職の対象に
・働き盛りの現在でさえ、過去のどの年代よりも低い正社員率
・就職氷河期世代は転職しても賃金が上がりにくい
・就職氷河期世代にできること、やるべきこと
第3章 「就職氷河期世代」の経済事情
・無視できない就職氷河期世代の貧困問題、格差問題
・貯蓄志向が強く、消費力が弱い就職氷河期世代が与える経済への影響
・政府主導の支援対象者が100万人もいる現実
・未婚率の高さとパラサイトシングルの今後
・上がり続ける税率と増えない収入の間で
・アベノミクスがすり抜けていった世代
・長い非正規生活による老後への不安
第4章 「就職氷河期世代」の生活事情
・物価が上がっているのに、消費支出が前の世代よりも10%以上低い
・人口ボリューム世代なのに全体支出が増えない衝撃
・教養娯楽費は減り、一部の消費だけが増加
・110万人に迫る親の介護。33万人に迫る親の介護による生活不安
・高齢貧困危機に陥る数は現在の2倍とも
・空き家の増加などで親からの遺産の資産価値が減少の危険性
おわりに もし就職氷河期がなかったら、今の日本はどうなったのか?
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Posted by ブクログ
本書では、就職氷河期世代がいかに「割を食った」世代であるのかを多角的に検証している。
就職氷河期世代というと、就職難であったために、非正規雇用に就かざるを得なかった人が多いという印象しかなかった。確かに、それもそうであるが、問題はそれだけに留まっていなかった。就職氷河期世代において正規雇用を得られたとしても、当該世代は例えばバブル期の人が同じ年齢であった頃よりも賃金が少ないなど、「割を食って」いる。また、今後就職氷河期世代が高齢者になると、介護の問題や自身の年金の問題が深刻化し、このままでは相対的貧困に多くの人が陥ってしまう。
すなわち、就活時の過去、働き盛りの現在、また老後の未来においても「割を食って」しまっている世代なのである。
他の世代の共感を得ながら、当該世代には手厚い支援を行うことが社会として求められると感じた。
Posted by ブクログ
エリートだけでは、モノを作ってくれる人、サービス業で働いてくれる人、モノを販売してくれる人も必要だから、頭がいい人だけだと服を買うことすら出来ない。散髪してくれる人もいないと成り立たない。経済は、沢山の人たちが、いる事で流れる。新しい産業が、無茶苦茶稼ぐ企業が日本には産まれなかった。
Posted by ブクログ
就職氷河期世代の社会的影響が分かりやすく解説された本。第三次ベビーブームが来なかったことによる少子高齢化問題は現状の問題。そして今後その世代が高齢化したときに本当の危機が訪れそうな予感。それに備えて十分な貯蓄が必要と再認識。
Posted by ブクログ
就職氷河期世代がどれだけ「割を食って」いるのかをとくとくと解説した本。
もっと早い段階で政策支援があるべきだったこと、リーマンショック後の経済政策等に至らない部分があったことなど、環境不備は否めないんだろうと思う。
個人的には3章の最後の
「安定した就職をすることができずとも、経済的に「自分でできることは何か」と考え、できることをやるのも大切なこと」
が、響いた。
Posted by ブクログ
話題の本なので読んでみた。
氷河期世代といっても、転職してうまくいった人、それまでの価値観ではダメだった人がパーソナルスキルで成功した人もいるが、他世代に比べて割合が低いと思う。
氷河期世代は可哀想と一貫しているが、本書を読む氷河期世代は勝ち抜いてきた人だと思われるし、この乖離をどうしていくかが気になった。
Posted by ブクログ
いろいろと言葉の定義が甘く、著者の都合によって使い分けられていたり、グラフを多用している割には、読み取りにくいグラフやわかりにくいグラフが多かったりして、ツッコミどころは多いです。
が、就職氷河期世代が背負わされてきた苦労を、マクロな視点で理解するための入門書としては、読んでもよいかもしれません。
要するに、
・1995年くらいから2010年くらいまでの15年間ぐらいに、大学の新卒として就職活動をした人たちを、就職氷河期世代と呼ぼう。
・就職氷河期世代は、バブル期に大量採用した反動で求人数が非常に少なくなった状況下での就職活動を強いられた。
・それゆえ、就職氷河期世代は、正規雇用の割合が低い(非正規雇用の割合が高い)。
・しかも、大企業の方が求人数の絞り方が大きかったため、就職氷河期世代は、大企業に就職した人が少ない。
・結果として、就職氷河期世代は、平均給与が低い。
・さらには、1990年代後半の世界金融危機、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災などの影響で、就職氷河期世代は、給与を挽回する(非正規雇用から正規雇用にステップアップする)機会に恵まれなかった。
・その上、近年は、新卒採用時の初任給がアップしている一方で、就職氷河期世代の給与は抑えられている。
といったことかと思います。
就職氷河期世代が、ある程度順調に正規雇用に付けていたら、給与は今よりもよく、結果として婚姻率が上がり、もしかしたら第3次ベビーブームが起こり、今とは違った世の中になっていたかもしれません。
が、国の無策により(といってよいと思います)、第3次ベビーブームは起こらなかったわけで、子どもがある程度生まれることを前提に作られた日本の社会の仕組みは破綻の危機に瀕しています。
ちなみに、これらの内容は、以前読んだ『アラフォー・クライシス』が大体カバーしているので、かなりの既視感がありました。
また、内容の緻密さも、『アラフォー・クライシス』の方が上だと思いますので、この本よりも、『アラフォー・クライシス』をお勧めします。