あらすじ
反体制ハードボイルド小説!
本書は、左翼誌『情況』にて2020年1月号(冬号)から2022年7月号(夏号)まで3年にわたって連載され、好評を博した、『蒼ざめた馬』(ロープシン)や『党生活者』(小林多喜二)の系譜に連なる革命小説である。1980年代から90年代にかけて著者が経験した法政大学の学生運動をもとに、「愛」と「革命」と「暴力」に生きた過激派学生の姿を描く。
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Posted by ブクログ
1980年代半ばに学生運動はあったのか。
社会からは学生運動活動家の存在はほとんど認知されなくなった時代だ。
しかし、お茶の水の明治大学には新左翼の巨大な看板が駿河台の坂道を睥睨し、マスクで顔を隠した社会人活動家が成田空港拡張工事反対の街頭署名集めをしていた。
学生運動活動家は間違いなく存在したはずだか、彼らの実態を知らない人が大半だろう。
本書では80年代学生運動活動家の現役当時の党派間抗争や活動家引退後の中年期における人生模様が描かれる。
党派内外の人間関係や指導者の個性や人望を攻略して小規模党派が党派間抗争を挑む。
こうしたことは学生運動に限らず、現代人の生業や生活の営みにおいて参考になる。
学生運動活動家は組織運営をし、党派の目標を定め、人を統率し目標に邁進するという意味では企業や団体などあらゆる集団に必要なスキルを身に付けている。
だが、活動家引退後にそうした組織運営のスキルを活かして大成する人はほんの一握り。
活動の過程において犯罪を担うと社会復帰が困難になる。
学生運動の外に居た人たちにとっては無縁の苦労を背負っているように見えるが、学生運動だけが特別なのではなく、我々も何らかの特別な体験によって特別な人生を歩むことはあり得る。
本書では学生運動活動家のその後の人生についても触れているが、人生の難しさを体験または見聞きしている中高年世代にとっては共感できるはず。
ハードボイルドタッチの作風の中にも登場人物たちの特異な思考によりユーモアもほのかに漂い飽きさせない。
一話がずつがそれぞれ完結しているので短編集的な読みやすさもある。
80年代学生運動に触れた本は多くないし、読みやすい本書を足掛かりに知るのも良い。