【感想・ネタバレ】「密息」で身体が変わる(新潮選書)のレビュー

あらすじ

いま、日本の社会が極端に弱っている。アガリやすく、キレやすく、無気力……これは身体からの警鐘だ。近代以降百余年、日本人の呼吸は浅く、速くなった。私たちの身体に眠る力強い「息の文化」をいかにして取り戻すか? 虚無僧尺八の偉才が体得した、呼吸の奥義。ナンバ歩き、古武術に続く画期的身体論。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

虚無僧尺八の海童道祖の呼吸法「密息」。それは座禅の呼吸法でもあり、床に座る日本人が古来から行っていた呼吸法だとの気づき。
腰を落とし骨盤を後ろに倒すことで、お腹に息を入れやすくする。
息を吸うときも吐くときも腹をやや張り出したまま。それは和服の帯に腹を張るのと同じ動作。
この密息の呼吸法で、腰が据わり、身体が安定することによって、視点のフォーカスイン/アウトや倍音による音楽の従構造の音量と音質の重みなど、日本人独特の感性が説明できるとする。
腹式呼吸ではなく、腹を張ったまま息を吐きだす呼吸法は、馴染みがあるというよりは、やはり新鮮だが、個人的には水泳に使えそうだと感じた。
16-139

0
2016年08月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

筆者は尺八奏者

■密息
尺八に伝わる呼吸方法
日本の身体意識・身体文化に密接に結びついている

尺八の音に魅せられて海外の音楽大学、大学院へ進学
胸式呼吸、腹式呼吸、逆腹式呼吸、循環呼吸とマスターするも、
尺八の演奏にはどの呼吸法もそぐわない

尺八は菅内の容量が非常に大きく、
世界的にも稀なほど大量の息が必要な楽器
虚無僧寺にて教わった奏法が密息

秘密の技法という意味ではなく、
「息をひそめる」、息を自他にわからせないようにするという意味

■密息の特徴
・大量に息が吸える
骨盤を後ろに倒すほど、吸える量が増える

・一瞬で吸える
鼻から吸うのが楽で、しかも音もなくできる

・強い安定感
骨盤が後ろに倒れているため、安定感がある
身体が動かず、安定し、吸う音がしないため静止感がある

・着物文化とのつながり
着物を着ると自然とできる呼吸
着物は着崩れないために、常に腹を張るようにしている必要がある
その状態での呼吸法が密息

・昔の日本人はみんな密息だった
密息でなければ演奏が難しい尺八の曲が非常に多い

■密息の方法
・腹を張り出したまま、吐いて、吸う
腹を張り出してその形を変えないこと
外の筋肉を動かさず、横隔膜だけを動かす

・力を抜く
へその下、下腹のみに力を入れること

・呼吸をしながら周囲に注意を向けてみる
身体は動かない、世界が静止したように見える
感覚が鋭敏になる、音・ものの動きを明瞭に感じられる

・骨盤を後ろに倒す(上級)
椅子に座って、腰を背もたれにつける感じ
首の付け根をやや前に出す感じ
力を入れないこと

・鼻の奥を広げて、目頭から吸う

■骨盤の位置と日本人
・日本人はかつて骨盤が後ろに倒れていた
日本の伝統的な家屋、農作業では後ろに倒れている方が自然な動作
現在は西洋風の家屋、生活で骨盤が立ち気味であるが、
西洋人ほどに立ちきってはいないため、精神的にも不安定となる

日本では国風文化ができた頃から床座の文化
立ち座りを繰り返すことで足腰が鍛えられた
椅子が普及した現在でも、お酒を飲むときなど床座が落ち着く

帯の文化は、腹部を抑え密息と深い結びつきがある
密息ができれば着崩れることがない

西洋人は身体の外側の筋肉が発達していて、骨盤も立っている
腹式呼吸は本来西洋人のための呼吸法

伊東浩二「日本人は他の人種と比べて、
最も骨盤が後ろに倒れている民族」
黒人の骨盤は前傾していて、
それがスプリントのスピードを生み出している

ナンバ歩きは加速には向いていないが、
山道・田んぼの多い悪路では安定する歩法
重心の上下動がない

骨盤が後ろに倒れているため、のこぎりなどを"引く"文化である
"しゃがむ"文化、西洋人はしゃがむことができない

0
2011年12月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

尺八奏者である著者が、腹式でも胸式でもない密息という日本古来の呼吸法を紹介し、そこに帰ることを勧めている本。著者によれば、無理に西洋式の体の使い方をしていることが、日本人の体の負担になり、パフォーマンスが上がらない原因にもなっているとのこと。

0
2017年03月05日

「ノンフィクション」ランキング