あらすじ
アラブ政治における混乱の原因は、倫理と法の混同による、イスラーム諸国の正義をめぐる考えの不一致にある。その歴史的経緯をたどり直すことで、ねじれた糸を解きほぐし、革命の出口を探る。
オスマン帝国の崩壊に始まる「ねじれの構造」は、植民地主義を経て現在に至るまで続いている。この事態をさらに複雑化させているのがイスラームの政治文化──イスラーム道徳に基づく政治判断、独裁制である。混迷する現代アラブ政治の内実を、ムスリムである著者が自身の経験と研究から分析。中東はなぜ分かりにくいのか?素朴な疑問に答える、アラブ理解に必読の書。
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Posted by ブクログ
混迷する現代アラブの政治を分析。なぜこうなのかって理由がよく納得できる良書。
一部はアラブ政治の枠組み。アラブ諸国の政治動向の背景にある歴史的体験として今なお消えない十字軍症候群、突然崩壊したオスマン帝国、植民地主義によって引かれた国境線とパレスチナ問題がある。アラブ諸国には統治者論以外の政治思想がなく、舶来の様々な思想も根付かなかった。民主主義も主権が全てアッラーに属するというイスラームの政治文化とまだ折り合いがついていない。
二部はそのようなイスラームの政治文化の中で現れたムバラク、フセイン、カダフィ、ブルギバとベンアリ、アサド父子、サーレフといった独裁者についてのケーススタディ。
三部は「イスラーム力」について。アラブ政治とイスラームに関係はないとの主張があるが、いつも独裁、軍政、上意下達であることの背景にはイスラームがある。政治判断は倫理道徳に基づく。イスラーム傾斜が進む中で日本も中東に柔軟で透明性の高い社会を作るため「アラブ維新」協力できるのではないかと結ぶ。