【感想・ネタバレ】近代の呪いのレビュー

あらすじ

『逝きし世の面影』の著者が人類史の視点から近代を総括する注目の講義録。私たちはどこから来て、どこへ向かおうとしているのか──。この混沌たる時代を生き抜く現代人のための必読の書。 私たちはどこから来て、どこへ行こうとしているのか──。無限の経済成長にのみ幸福を見る時代は終わった。単線的な進歩主義に基づく近代史観から脱し、人が人らしく生きうる共同社会を取り戻すために、近代化の意味を再び問い直すときがきている。豊かさの背後に刻まれた呪いを自覚し、これからを生きる術を考える。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

国民国家の成立以来、つまり近代化以来、
国民は自立性を喪っていっているとする論考など、
現代を見つめるために役立つ、
近代というものを教えてくれる本。

熊本大学での講義を書籍化したもので、
・近代と国民国家
・西洋化としての近代
・フランス革命再考
・近代のふたつの呪い
の4話と、
大佛次郎賞を受賞したときの講演
・大佛次郎のふたつの魂
の五つの章からなる新書です。

民衆と市民の違いとはなにか。
僕はEテレ「100分de名著」という番組の
ハンナ・アーレントの回で
解説の仲正昌樹さんが平易に説明してくれていたことで
その違いを知ったのですが、
本書ではそのあたりももう少し深く、
近代と結び付けて解説してくれいて、
このトピックについて何か読みたいところだったので、
渡りに船といった体で読むのを楽しみました。

要するに、
民衆とは、国家天下のことはどこ吹く風で、
自分の周囲の出来事にしか関心が無く、
そういった生活圏で楽しんで暮らす人々。
比べて市民とは、その国家の構成員であることを自覚していて、
政治について経済について、
いろいろ勉強したうえでコミットしていく種類の人たちをいいます。

昨今の文化人には「みんな、市民になろうぜ」
っていう種類の言説や思想が多いですよね。
良いか悪いかは、
本書について、その良し悪しについて解説があります。
なるほどなあと思いますよ。
どっちに傾くかにしても、
極端に100%針が振れるようなのは害悪になりますね。

近代の呪いのふたつの面についても、
端的に言ってしまえば、
ナショナリズム化していく構造的な面と、
人間中心主義ゆえに自然を消費するものとしてとらえてしまうがゆえに、
生まれてから死ぬまで人工的世界に浸ってしまう貧しさ、
もっと言えば、それは間違いなんじゃないかと著者は言ってますが、
そういった社会構造や心理の面に疑問を持とうと訴えています。

本書では、近代を考えていくことで、
そういった現代の病巣がみえていくかたちになっています。
フランス革命とはなんだったか、だとか、
近代化といえば人権・平等・自由の獲得だが、
そもそもそれは真実なのか、といった見ていき方があり、
つぶさにみていくことで、
さきほど書いたような、近代の呪いと結びつく。

滋味の感じる語り口の文章です。
それでいて論理的で非常に有機的な近代論になっています。
しっかりしていて興味深く教えられる好著だと思いました。

著者の代表作『逝きし世の面影』は名著として名高いようで、
ツイッターなんかでも、たまに良い評判を読むことがあります。
これはまだ未読なんですが、いつか読んでみたいですね。

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2019年09月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

おどろおどろしいタイトルではあるが、講演録なので内容は平易である。
近代とはどういう時代であったか?
それは市場経済が世界化することによって始まり、かつてない衣食住の向上(ゆたかさ)を人類にもたらした。
しかし、それが皮肉にも「ふたつの呪い」に転化していく。
一つ目。ゆたかさをインターステイトシステムのなかで維持していくためには、強力な国民国家(民族国家)づくりが必要だった。その結果、民衆世界の自立性は解体され、民衆は教育された「国民」として国家に拘束されていった。
二つ目。急激な経済成長と人間中心主義を前提とする近代科学は、自然を資源として収奪し、自然と切り離された生活世界の人工化=カプセル化を推し進めた。
これが近代だ。本書はそういう著者の思想のエッセンスとなっている。
個人的には、近代の起点として神話化されたフランス革命が決してバラ色ではなかったと説く第三話が強く印象に残った。

0
2013年12月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「近代とは何だったのか」をテーマに、日本や世界の近代化を問い直している。一般に、近代がわれわれにもたらしたものは人権・平等・自由の三点に漸くされる。しかし、江戸時代においても無秩序状態というわけではなく、その時代に即した人権のとらえかたがあり、前近代社会よりも一面では近代社会のほうがキュウクツで、江戸時代にもそれなりの平等はあったことなどを興味深い内容だった。
 筆者が考える近代の恩恵は「衣食住の豊かさ」である。フリーな市場経済の世界化が衣食住の貧困を克服させた。その大小として2つの近代の呪いを人類は背負い込むことになったという。ひとつはインターステイトシステムであり、もうひとつは世界の人工化である。
 生活のゆたかさを新たにとらえ直し、経済成長がなくなればこの世は闇というような考え方を克服することは難しい。具体的にどうしたらいいのか。

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2019年08月16日

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