【感想・ネタバレ】「俳優」の肩ごしにのレビュー

あらすじ

*この電子書籍は、『「俳優」の肩ごしに』文春文庫版を底本としています。文春文庫版には、新たに山下澄人さんとの対談、山下智久さんの特別寄稿、池澤夏樹さんの解説を収録しています。】

実人生と俳優業の原理は似ている――橋のたもとの恐ろしい狂人、淡い憧れを抱いた女先生、父の復員と死……幼年期から少年期の記憶の断片は演技の原点となり、やがて独自の表現へと昇華した。波乱の人生を駆け抜けた孤高の俳優が、特異な視点で自由自在に綴った初の自伝。
付録に山下澄人との対談を収録。
特別寄稿・山下智久
解説・池澤夏樹

「人は与えらえた役柄のなかで生きるしかない」
稀代の俳優、初の自伝!

【日経新聞「私の履歴書」で大反響!】
●狂人、女先生との同居、戦争体験
●俳優の原点…父の帰還と「ハダシの疾走」
●文学座→劇団「雲」→37歳でフリーに
●黒澤明、森繁久彌、三船敏郎、山田太一、寺山修司、伊丹十三…巨人たちとの出会い
●俳優人生の転機『ヘンリー四世』
●老いをどう迎えるか? etc.

単行本 2022年11月 日本経済新聞出版刊
文庫版 2025年1月 文春文庫刊
この電子書籍は文春文庫版を底本としています。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

初めて「演技」を意識した苦い思い出が胸を打つ。父の復員の知らせに裸足で飛び出す努少年。親戚のうちに着いた父に会いに山道を駆けながらも「ウソだな、おれ、おしばいしてるな」と思う。
僕が喜ぶと思ってる母たちの期待に応えないといけないと思い必死に走る…。

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2025年01月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 俳優業、演技について言えば、僕は役の人物の世の中とうまく折り合えない部分を探し、そこからキャラクターに入っていくクセがある。

 言葉なんか覚えるんじゃなかった、と嘆いた詩人がいたが、それを言うのも言葉、僕らは言葉に縛られている。世の中、言葉で出来ている。
 しかし、言葉に対する以前のもやもやした感情、あるいは突然湧き上がってくる情動といったものが人にはある。これらは出来立てほやほやだから、まだ頭脳の検閲が済んでいない。その分、新鮮で刺戟的。当然危険性もあるのだが。
 作文などとは違って俳優の演技は心の動きと表現がほぼ同時に進行している。生きのいい演技ほど心の動きを「言葉」に整理する時間がない。
 一方、演技には物語を伝えるという大きな役割がある。物語を失くしたらキャラクターの居場所もなくなるからだ。そして物語は言葉で成り立っている。
 いずれにしても、あらかじめ決められた瞬間など人生にはない。とはいえ物語は不可欠である。台本の決定された言葉からどのくらい自由になれるか、その按配が難しい。

 おもしろい出来事があった。われわれの稽古は、まず机について台本を読み合わせる作業から始まる。それぞれ独習してきた成果がありキャラクターの輪郭が見える。何日かして大きな役の俳優が欠席し、せりふのない若者が代読した。全くの棒読みで、舌が廻らなかったり読み間違えたりするのだが、力が抜けていて新鮮、説得力があるのだ。役の人物、その心の動きがよくわかる。引き込まれてしまう。これにはびっくり。
 役を与えられた俳優は、日々手がかり足がかりを探し、それを頼りに前へ進もうとする。つい、それまでの成果をなぞってしまう。これがいけない。例えばお習字はなぞった瞬間、命を失ってしまう。新しく一気に行かなければダメ。演技も同様。代読の若者は拙いながらもまっさらの白紙に何かを書きつけた。勇気を持って投げ出すこと。守ってはいけない。
 白紙にリセットする、これが大事だと思う。シャーロック・ホームズが名探偵だったのは警察のような既成の操作方法を知らなかったからだというアマチュア論がある。素人には専門家にはない自由さがある。だから僕はプロになりたくない。長く仕事をしていればなにがしかの技術が身に付く。でもそれは舟底に付着した貝殻みたいなもの、がりがりと削ぎ落とそう。余計な猿知恵演芸は捨て裸でいこう。すっぽんぽんで最後の挑戦をしよう。

山下「自分をさらけ出すことの恥ずかしさ、自分が自由になることの喜び」って言葉も書かれていますね。イギリスの俳優ジョン・ギールグッドの言葉。
山崎 それは気に入ってる言葉なんだ。やっぱり、演技するっていうのは自分をさらけ出すことだから恥ずかしいよ。露出狂じゃないんだから。でも、それをやってうまくいくと、自由になれる。その快感は忘れられない。
山下 僕も恥ずかしいと思わない表現者は馬力がないように思います。
山崎 自意識の壁って厚い方がいいんだな。逆に壁が薄いと簡単に自己表現できちゃうんだけど、自意識のあまりない人が演技をしても面白くない。自意識の壁が厚ければ厚いほど、突き破って外へ出たときの勢いが強くなるんだ。表現するのが恥ずかしくてたまらない。でも、それを突き破らなきゃって衝動に動かされたときに出るエネルギーが表現にとっては大事なんだと思う。

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2026年03月17日

Posted by ブクログ

日経新聞の「私の履歴書」を一冊にまとめた物。生い立ちから現在までを俳優業とは何か演技とは何かというのを淡々として語っている。俳優にありがちなエゴを全面に出すのではなく、与えられた役割をこなしていくのを信条としているので、あまり演じたキャラクターへの思い入れがないようだ。自分は必殺仕置人の念仏の鉄が大好きだったので、その辺を語ってくれるかと期待していたが、ほとんどなかったので残念。どちらかというと文芸作品映画、テレビ、シェークスピアの舞台などが話の中心で少し私にとっては退屈でした。

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2025年02月04日

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