【感想・ネタバレ】能登半島記(未完)-被災記者が記録した300日の肉声と景色のレビュー

あらすじ

能登半島という船で、みんな一緒に揺れ、泣き、怯えてきた。
能登在住の新聞記者・前口憲幸氏(北陸中日新聞七尾支局長)が、震災発生以来、今もなお毎日執筆・発信し続け、地元の被災者から大きな共感を呼んでいる現地レポートと写真を書籍化。
取材者であり、被災者でもある著者が、さまざまな思いを抱えながら、地元の人と同じ目線で綴るリアルタイムの記録を、震災一年の節目を前に全国に届ける。

*本書の印税の一部は能登半島地震災害義援金へ寄付致します。
*本書の印刷は、能登の印刷所でおこないます。
あろうことか元日だったから、インパクトが強かったから、覚えている方は多いかもしれません。でももしかしたら、遠く離れた場所の、遠い昔の話だと感じている方もいるかもしれません。2024年1月1日午後4時10分。能登半島地震です。あの日から、300日を数えます。
この地に拠点を置く地元メディアの取材者として、ペンを握っています。今なお傷が癒えず、痛ましさ残る被災地を歩き、声なき声に耳を傾ける日々です。
平地が少ない急峻な半島です。その昔から、多様な魅力を育んできた地形がネックとなり、なかなか復興が進みません。停電、断水、通信障害道路寸断、がれきの撤去…。どの項目をみても、2016年の熊本地震よりも、その5年前の東日本大震災よりも、難航している感が否めません。
それでも、です。能登の人たちはくじけず、励まし、支え合います。「大丈夫。何ともない」を意味する「なんとんない」。奥ゆかしく、控えめに語るのです。
■8カ月後、再びの試練
「千年に一度」の大地震から8カ月余り、9月下旬のことです。今度は「百年に一度」の記録的な豪雨が能登を襲ったのです。大小の河川が氾濫し、大規模な土砂崩れが相次ぎ、いくつもの集落を孤立させます。地震で助かった能登の命をのみこみます。「なんとんない」を口にする力、もう残っていません。
傷口に塩をもみ込まれた多重被災の地。誤解を恐れず、オブラートに包まず、言います。能登の危機だと感じています。そんな今こそ伝えたくて、1人でも多くの人に目を向けてほしくて、筆を執りました。北陸中日新聞の朝刊「能登版」に、あの日以来、1日も欠かさず掲載を続ける掌編コラムに新たな書き下ろしも加え一冊にしました。東京新聞の朝刊「特報欄」でも再掲されている小さな囲み記事のシリーズです。「何があっても、北陸中日新聞は恐れません。能登半島という大きな船を降りません。大きく揺れても、たとえ沈みそうな危機に瀕しても、握ったオールを放しません。能登のために、本気で泣ける記者が乗っているのです。現場を知れば知るほど、今は『復興』という言葉を気安く使えません。けれど、必ず夜は明ける。そう信じます」-。これは地震から1カ月の節目に合わせた「能登版」で、取材現場を統括する七尾支局長として誓ったメッセージです。この思い、少しも揺らいでいません。
■元旦は追悼の日
でも正直、ここ最近、心の隅っこにもやもやが宿っています。「もう正月こんといてほしい。よくある元日のああいう感じとか思い出したくない」。秋空がきれいな日。夫と2人で暮らす70 代の知人女性が、道路の向こうのススキを眺めながら、こんな思いを打ち明けました。あらためて、この現実に気づきます。この先ずっと、能登の人たちは、能登にゆかりある人たちは、元日を迎えるたび、黙とうをささげます。お祝いの日ではなく、追悼の日なのです。「おめでとう」が言えないのです。
能登で暮らし、誰かと会い、うんうんとうなずき、共感し、怒り、泣き、一緒に数えた300日。このコラムは、すぐ目の前の、その瞬間を切り取った記録です。被災者の1人として、休むことなく伝えている被災地のリアルです。

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Posted by ブクログ

 字数が限られている文の中に、人がいて、声があります。大切な人を失った人、ぼう然と立ち尽くしている人、悲しみに打ちひしがれている人、前を向こうとしている人、隣の人を思いやる人、励ましている人、助けようとしている人、支えようとしている人、そしてその人たちの声。その都度その情景が目の前に現れてきます。そして胸を打たれます。こみ上げてくるものがあります。写真からもメッセージが伝わってきます。非日常であるはずの日常の画像がたくさんあります。写真からも「この災害を忘れるな、忘れてはいけない」が伝わってきます。
 私は自身の読んだ本をあまり人に勧めたりしないのですが、この本は家族や友人たちにも勧め、グループLINEでも拡散しています。ぜひこの本を多くの人に読んでもらいたい。そして能登の地震を忘れないで欲しいと思います。

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2025年01月31日

Posted by ブクログ

本書『能登半島記(未完)』は、北陸中日新聞社の七尾支局の記者が「朝刊のコラムに書き綴ってきたものを10月分までまとめたもの」である。あくまでも被災者の視線で伝えようとしてくれている。言葉にならないという言葉が何度も出てくる。
けなげに生きていこうとする人々のそのままを紹介してくれている。

コラムという限られた文章のために、助詞などが省かれていて、なんだか、外国人が単語を羅列して話している日本語のようにも感じる。

「未完」とあるのは、まだ、地震被害は終わっていないから。
多分、ずっと未完だろう。

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2025年01月06日

Posted by ブクログ

昨日買って、今日読み終わる。新聞のコラム欄を本にしたもの。辛いけれど、目を背けてはいけない。向き合うことはしたくない。かもしれないけど、向き合うことで前へ進む。どのくらいかかってもいいから、向き合いたい。
自分は間接的な被災者。
とりあえず、残りの人生向き合っていこうと思ってます。

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2025年05月07日

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