あらすじ
「科学としての政治学」は、どのような道み程をたどったのか――。
本書は、戦後に学会を創り、行動論やマルクス主義の成果を摂取した政治学が、先進国化する日本でいかに変貌してきたのかを描く。
丸山眞男、升味準之輔、京極純一、レヴァイアサン・グループ、佐藤誠三郎、佐々木毅などの業績に光を当て、さらにジェンダー研究、実験政治学といった新たに生まれた潮流も追う。
欧米とは異なる軌跡を照らし、その見取り図を示す。
目 次
まえがき――科学としての政治学の百年
序 章 本書の方法
第1章 民主化を調べる――占領から逆コースまで
1 蠟山政道グループの選挙調査
2 岡義武グループの政治過程分析
第2章 英雄時代――講和独立から高度成長期へ
1 石田雄の圧力団体論
2 升味準之輔の一九五五年体制論
3 京極純一の政治意識分析
第3章 近代政治学の低迷と挑戦者――豊かな社会の到来・・・
1 田口富久治のマルクス主義政治学
2 三宅一郎の投票行動研究
第4章 新しい流れ――一九八〇年代の断絶と連続
1 レヴァイアサン・グループ
2 佐藤誠三郎の自民党研究
第5章 制度の改革――平成の時代へ
1 政治改革の模索
2 新制度論
第6章 細分化の向かう先――二一世紀を迎えて
1 ジェンダー研究
2 実験政治学
終 章 何のための科学
あとがき
参考文献
主要人名索引
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Posted by ブクログ
敗戦直後から現在に至るまでの日本政治学史。主要な学説や論点が、概説されている。
印象深いのは、2000年代以降における関心の分散化である。敗戦直後は民主化、1960年代は1955年体制、1980年代は米国実証政治学の導入とそれへの反発、1990年代は政治・行財政改革などの大きな論点があり、これが活発な共同研究や論争につながっていた。これに対して現在では、ジェンダーや実験政治学といったテーマがあるものの、かつてのような大きな流れにはなっていないようである。学説史にとどまらず、政治学や社会科学の今後にも示唆を与える1冊。
Posted by ブクログ
巻末にリストされている参考文献の数がもの凄く多いです。
これらの参考文献を使って、第二次世界大戦後の日本の政治学がどのように、発展してきたのかを記述しています。
論文の引用件数を数えて、誰が政治学の中心だったかなどを紹介しています。
丸山眞男、蠟山政道、松村岐夫などの論文が引用件数が多かったようです。
政治学のような実験できないと思われていた学問分野でも、実験政治学という一分野が発達してきている、などがわかりました。
この本の作者は、大学の先生でなくて、国家公務員だそうですが、仕事をしながらこんな凄い本を書くのは、本当に凄いと思いました。
Posted by ブクログ
日本における政治学がどのような経緯で今日にいたっているか、ということがわかる本である。学生にとっては政治学入門に代わる本である。政治学を勉強する、あるいは興味がある学生にとってはいい本であると思う。
Posted by ブクログ
本書は、戦後日本の政治学の歩んできた過程を丸山真男から最近のジェンダー論・実験政治学まで「科学としての政治学」という観点から叙述したものであり、それぞれの時代を代表する政治学のトレンドやトピックスを織り交ぜながら興味深いものとなっている。『レヴァイアサン』という雑誌に集った学者たちを総称してレヴァイアサン・グループと界隈では呼ばれているのははじめて知った。先日、火事でお亡くなりになった猪口孝先生もその一人。若き日のお写真が涙を誘う。個人的には佐藤誠三郎のところが一番面白く読んだ。
ところで、著者も「あとがき」で弁解しているが、国際政治学や行政学、地域研究、政治思想などの研究がすっぽりない。つまり私が学部時代に教わった政治思想史学者で顕著な業績と多くの弟子がある藤原保信先生やゴミ問題の先駆者である行政学の寄本勝美先生、あるいは若くして亡くなってしまったが、超有名な国際政治学者の鴨武彦先生などへの言及がまったくないということだ。あと『市民参加』の篠原一先生も言及がないなぁ。
この本は新書なので、そうした「限界」があることを踏まえて読む必要があろう。