あらすじ
100年前に成立した治安維持法。稀代の「悪法」とされるが具体的な検証は未完である。多角的な視点から再考を試みる唯一無二の書。
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Posted by ブクログ
天下の悪法「治安維持法」。
なのだが、悪いところばかり書いててそうすかって感じがした。
もちろん、色々悪い結果になった。思想警察の根拠となって、拷問も横行したのは事実。
共産主義にちょっと片足の小指踏み込んだという「形式」のみでしょっ引かれるのも、なんか魔女狩りみたいで酷い。実際、酷い例が山ほど挙げられている。
しかし、だ。
時代の背景は日本は存亡をかけた戦争を繰り返しており、日清、日露、どちらで負けてても国がなくなっていたかもしれず、この時期はさらに大きな戦争すら想定され、共産主義とは実際に国を転覆し伝統を血で断罪することが実体として目の前にあったのだよね。
そんな時期に国を引っ掻き回されたら溜まったものではないし、共産主義への恐怖があったことも事実なのだろうと思う。怖れりゃそりゃ、過剰にも反応する。
弾圧だという前に実際騒乱起こしてたり、確かに違法な取り調べもあったろうが、じゃあ全部本当に思想の自由を完全に認めていたらどうなったのか。
内面自由は当然なのだが、それが表現、行動に現れた時にどんな影響があるのか。
現実の前に難しいとは思うよ。
結果として問題の多い方に行ってしまったのだが、じゃあ、治安を維持するという法規が全くなければ、どうなっていたのか。
あまり考えたことがなったが、結局、日本は長い戦争で、兵士を除く国民が現実戦場に立たされたのは、終戦が近づいてからなんだな。戦場は日本国土から遠く離れた外地だった。
戦時といっても、国民の自由を阻害する敵は、敵国でなく日本国であったわけだ。
目の前に銃持った敵が迫って来てたら、俺の思想を守れ、とかいってる暇ないもんな。
治安維持法というか、むしろその運用とか刑事訴訟の方がひどかった気もするが、ひどかったならひどかったで、それをなくしてしまえではなく、効果はどうだったのか、目的はなんだったのか、0ー100で判断するのではなく、じゃあ今現にそうした方が必要なのだとしたら、どうすればいいのか。
そういう論点が、なんでないのだろうと思う。
安易に、新たな戦前という言葉を使うのは、共産主義に恐怖して膾を吹いた治安維持法と、なんら変わりがない。
新たな戦前は迫っていると思うが、方向が逆ではないか。
本としては、事例が分厚すぎて、飽きる。
6割飛ばしても結論は変わらない。