あらすじ
「ちょっと聞いてもらえないか」
始まりは、2022年の春先にかかってきた1本の電話だった。
「こんなディール聞いたこともないよ。とにかくひどすぎる。史上最悪のディールだ。セブン&アイがおかしくなっている」
電話の主は、セブン&アイ・ホールディングス(セブン&アイ)による百貨店「そごう・西武」売却の入札に参加した、ある投資ファンドの幹部だった。M&Aの常識ではありえないひどい運営に憤り、私にそれをぶちまけてきたのだ。
その後、そごう・西武売却は難航し、アクティビスト(物言う株主)からも株主提案を受け、セブン&アイは大きく揺さぶられていく。
――取材で明らかになったのは、過去最高益を記録するなど絶好調に見えるものの、足下は盤石ではなく、その将来に不透明感が漂っているというガリバーの姿だった。かつて、流通業界の「勝ち組」「優等生」などと呼ばれたセブン&アイにいったい何が起きているのか。そごう・西武売却を軸にその舞台裏に迫ったつもりだ。(はじめに)
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Posted by ブクログ
セブン&アイはイトーヨーカドーが祖業であり、オーナー伊藤家や、その意向を受けた経営陣の忖度により、ここまで守られてきたが、アクティビストファンドのサードポイントやバリューアクトの攻勢により、ついに重い腰を動かす。
手始めに鈴木元会長が買収した問題児、そごう西武百貨店をフォートレスに売却。続いて、フランフラン、バーニーズニューヨークを売却。現在、イトーヨーカドーやロフトの売却に動いている。
伊藤家出身の伊藤順郎は現在副社長。その子供弘雅もセブン&アイ。鈴木敏文の息子はオムニチャネル構想に失敗し、現在は独立。
アリマンタシォンはクシュタール(カナダ)、サークルK(アメリカ)を展開。売上692億ドル、時価総額8.6兆円で売上規模は同程度だが、時価総額でセブン&アイを上回る。
彼らはすでに2度の提案を行っており、セブン&アイの業績低迷で買収の現実味が高まっている。そんな中、創業家が自らMBOを画策するなど、混迷を極めている。セブン&アイの主力事業はアメリカのコンビニ事業で、もともと親会社だっただけに独立機運も高い。アリマンタションの目的もアメリカ事業か。
創業家によるMBO後も、アメリカ事業をアリマンタションに売却するのではと言われている。ヨーカ堂は結局売却の道を辿ることになったが、ヨークベニマルとくっつけることでなんとかやっていける構造になっている。果たしてこのコングロマリットの行く末は。