あらすじ
【推薦】武田砂鉄さん(ライター)
歴史は常に今を問いかけてくる。
聞かれるのを待っている声は、
誰のもとにも在るのかもしれない。
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戦地から届いた当時の手紙は、想像もつかなかった戦時中の暮らしを生き生きといまに甦らせた。
家業を「不急不要」とされ、祖父は軍事研究の道へ。
大叔父は若き陸軍将校としてアジア各地を転戦し、沖縄へ──。
人類学者が、自身の家族史をひもときながら、その足跡を訪ねて紡ぐ、等身大の〈昭和と戦争〉。
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【目次】
01 裏山のほとりで
02 蔵の中
03 科学と動員
04 水底の魚
05 縁側の椿
06 絹糸のひかり
07 オルガンの歌
08 埠頭にて
09 遠い島影
10 月と海鳴り
11 物語の外で Ⅰ
12 物語の外で Ⅱ
13 竹林と夕星
14 雲の行方
あとがき
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Posted by ブクログ
女性が亡き親族の足跡から戦時中の世相や市井の人の暮らしを描くという点で、星野博美氏が思い出されるが、作風はもっと情緒的。従軍した大叔父の亡くなるまでの手記、婚約者との書簡、長男として意に染まぬ家業を継ぎ徴兵されなかったことで図らずも研究職となった祖父の複雑な心情が感じられる。著者の姉だという銅版画家の装丁と挿画もいい。
P17 その時々の季節の、大気と植物と水と土の醸し出す匂い。畑に足を踏み入れるとき、草木の茂みにホースで水を撒くとき、子どものころの感覚がふっと甦る。
P238 わたしの知らないうちにこの場所に生きて去っていった人たちの、今ここにいていつかはいなくなる人たちの、今ここに存在しているものたちすべての、まぼろしのような儚さのせいかもしれないと思う。年月というもの。生死ということ。
Posted by ブクログ
戦争体験はどこかちょっと離れたところにあるもの、と思いがちだった。
でも、太平洋戦争の時に、父母や祖母や祖父や親戚などがどうしていたのか、そうしたことを覚えている人たちは実は身近にいる。でもだんだんいなくなってしまう。
Posted by ブクログ
子供の頃の祖父母と家,裏山の記憶から祖父の弟,大叔父の遺された手紙から立ち上る戦争の影.誰にも残っていただろう敗戦に向かって進んだ同調圧力と失われた者への思い.
こういう真実のかけらは記憶する人が亡くなっていくことで忘れ去られてしまう.こういう本は個人の思い出かもしれないが普遍的な広がりを持つ歴史だとも思った.
イシイアツコさんの銅版画も素敵だ.