あらすじ
厳選した小説から織り込まれた言葉の技術を解析し、不朽の名作といわれる所以を探る。
また、文章読本の変遷を辿って近代文学の特異性を解読し、文章術の極意に迫る。
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Posted by ブクログ
たとえば映画を観るとき、「映画の観方」を意識したことのない人は、ただストーリーだけを追うだろう。
「どんな映画だった?」
「うん、あのね、~~っていう話だったよ。」
というように。つまり、物語を語る「メディア」としての、映画。
しかし、一度「カット」或いは「ショット」、「光」、「モンタージュ」などといったさまざまな「切り口の存在」を知った者は、それ以降それら複雑な要素の織物としてしか「映画」を感知するこが出来ない。
その瞬間から、映画は媒介物などでなく、ただ「映画」として存在しはじめるのである。
まったく同じように、小説にも、その作品を統合的にそのような形たらしめている複雑な要素があり、それら要素に着目することで、ただ「物語」を追うだけでない、豊かな織物としての「文章」を愉しむ事が出来る。
この本は、ただ漠然と「ストーリー」を追っていたのでは気づくことの出来ない、小説それ自体の肉体とでも言うべきものの存在を可視化させ仔細にレクチュァしてくれる、大変に親切な「読むこと」の入門の書である。
ロジカルで機知に富みつつも、平易な文章で読みやすい。
おすすめです。