あらすじ
あの転校生の辻アキトだ。
ジャンパーにジーンズの辻さんは電柱のうしろにかくれるようにして、お寺をじっと見つめていた。
道をへだてたところにいるあたしには気づいていないようすだ。
しんせきの集まりできたのだろうか。いや、それならば同じように黒い服を着るだろうし、かくれてながめる必要はない。
めずらしいのか。
おそうしきや法事といった風習が、前に住んでいた町とはちがっていいて、何かよほどきょうみをひかれるところがあるのだろうか。
まったく周囲に注意をはらっていないほどの真剣さが不思議だった。(本文より)
あらすじーー「うっかり自分の考えを言わないのがせいかいなのだ」と思いつつ、そんな自分を少しみみっちい性格だと思っている美海は、正直になんでも言いすぎて「性格が悪い」とクラスメートから言われている隣のクラスに転校してきた辻アキトと仲良くなる。
アキトは別に悪い子ではなく、少し変わっているだけだと思っていた美海だが、
やがてアキトがお寺だのおそうしきだの、不吉な場所にばかり興味を持ったりお年寄りに厳しい様子を何度か見てしまい胸がざわざわしてくる。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
シンプルな設定で転校生の人間性・謎の行動・最終的なテーマが一本筋として通っていて、雑味の少ないきれいな筋立ての話だなと思いました。逆にこの要素の少なさでよく1冊分埋まったもんだなと思うんだけど、読んでて薄いとかは全然感じなかった。何らかの技巧があるんでしょうね。
Posted by ブクログ
空気を読まずに思ったことをそのまま言ってしまうアキトはたぶん発達障害なのだろうけど、周りの人たちが診断名ではなくて、彼女独自の特長としてそのことを捉えているのがよかった。
アキトに戸惑いながらも友だちでいることをやめない美海の中にも、流されない強さがちゃんとある。
Posted by ブクログ
嫌われないよう本心を隠して周りに合わせる美海。転校生のアキトはその言動からヤバいヤツと思われていましたが、思ったことを素直に言葉にしているだけだと美海は気づきます。
老人の死に関心を持っているらしいアキトに、疑問を持ちつつも、理解しようとしていく美海のまっすぐなところがよかった。そしてその理由がわかったとき、涙が出ました。
Posted by ブクログ
安東みきえさんによる児童文学。
空気を読まない転校生のアキト、周りをよく見すぎて言葉のみこんでしまう主人公の美海。
対照的な二人が距離を縮めていくまでのお話。
美海は空気を読みすぎるところがあるが、だからといって流されやすいわけではなく、客観的に物事を捉える力がある。
思ったこと、気になることをどんどん口に出してしまうアキトは、変わり者で性格が悪いとレッテルを貼られてしまうが、美海は反感を抱きながらも一方的な見方をせずに、理解しようと努力する。
この年頃の子どもの友達関係の難しさがよく分かる。
誰もが美海のようになれたらいいのだろうけれど…。