あらすじ
十七歳で産んだ子に生涯を捧げた女優は、芝居への情熱を捨てきれず、東京へと飛び立った。独り暮らしの心細さを支えてくれたのは、映画のスチールで活躍するカメラマンの反町だった。昔の話だが二人には希望があった?? それから四年後、八方尾根で消息不明となった反町の故郷・天橋立に向かう道原刑事の姿が……。不思議に優しい眼差しが、凶悪犯を追い詰める! 傑作山岳ミステリ。
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Posted by ブクログ
この道原伝吉シリーズの時間軸というのは
一応サザエさんワールドに組み込まれているようなのだが
最近の伝さんは山で事件があっても山に登らないのだ。
そういうのは若手に任せて、どっちかというと観光三昧なのだ。
その所為もあってか、伏見刑事が山岳救助隊に異動したこともあってか
別だと思ってた紫門一鬼シリーズの世界観がだんだんリンクしてきたように思う。
そして、全体の雰囲気が西村京太郎氏の十津川刑事シリーズと似てきた気がする。
あちらは列車、こちらは山岳、という違いはあるが。
内容とは別に筆致も大きく違っていて、
西村氏の文章より梓林太郎氏の文章はなんというか淡々としている。
その乾き具合というか、いい塩梅の突き放した感じが読んでいて安心するのであった。
更に最近よく思うのは、
この手のミステリ小説は最初から犯人らしき怪しい人物が設定されているものなのに
この道原伝吉シリーズに関しては
怪しい人物を追っているうちに明後日の方向から真犯人が突然現れる、という趣である。
いつどこでシフトしたのか、読んでいてわからないことも多い。
でもってこの話もまさにそのタイプで、
読者が犯人だと思っていた人物と真犯人が何の違和感もなく摩り替わっていて吃驚する。
読後感が当たりかハズレかはけっこう賭けだったりするのだが
今回は当たりだったかな(笑)。
このシリーズを読むのをやめられないのは
そういう意外性とギャンブル性にあるのかも、とちょっと思った。