あらすじ
発達障害に関する情報は多いですが、職場にいる彼らと共に仕事をすることについては、必ずしも正確な情報が広がっているとは言えません。本書のテーマである「グレーゾーン」は、発達障害の傾向がありながら、その診断が付いていない人たちです。なおさら正確な情報は、みなさんに伝わっていないのではないでしょうか。
グレーゾーンには、発達障害の人とは少し違った特性があります。
筆者はカウンセラーやアドバイザーとして、これまで行政機関・民間企業・病院などで、約1万人の悩みを聴いてきました。その中には、グレーゾーンの人たち、さらにその上司や部下に当たる人たちもたくさんいました。
グレーゾーンの部下を持つ上司が、部下の言動に振り回され、管理能力がないと評価されて悩んでいる。グレーゾーンの上司を持った部下が、上司の指示がコロコロ変わり、ストレスで会社に行くことが嫌になっている――最近では、職場でのこんなケースに対する相談が増えてきました。
本書は、主にグレーゾーンの部下を持った人に向けて書いていますが、グレーゾーンの上司を持ったときの対応法についても書いています。部下に関する相談は以前からたくさんありましたが、上司に関する相談は、国会議員や首長などのパワハラ報道をきっかけに増えてきた印象があります。
発達障害グレーゾーンは、社会に出てから発覚するケースが多く、職場のサポートには課題が多く残されています。本書は、発達障害グレーゾーンの特性から、彼らとの関わり方まで、職場で起こりうる事例をもとに分かりやすく解説しています。一方で、グレーゾーンの人たちが持つ特性をいかすことも組織全体の成長のチャンスにつながります。
※カバー画像が異なる場合があります。
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Posted by ブクログ
書名は「発達障害グレーゾーンの部下たち」となっているが、「発達障害グレーゾーンの部下・上司・同僚たち」としても良いと思えるほど、いろんなケースへの対処法が書いてあった。企業などの現場でカウンセリングや研修をしてきた経験から、事例は具体的であり、専門用語を多用しないという方針でありながら内容は深いという印象である。
最初から発達障害と分かっていれば話は別だが、部下・上司・同僚が「グレーゾーン」となると、周囲の人間は気づかないことが多い。その結果、日々ネットニュースで流れるパワハラやイジメが起こり、ブラックな職場になることも多いだろう。あらかじめ、発達障害の特性を理解し、対応法を心得ておくことは重要である。
思い当たることのある人が職場にいたら、必読の書と言えるでしょう。
あとがきの著者自身の子ども時代や社会人になってからの体験談もまた、プロのカウンセラーのストレスマネジメントが分かり参考になる。
Posted by ブクログ
数ある発達障害関連の書物の中で、会社員で働くマネージャー(管理職)目線で書かれているものは数冊しかない。その中でもタイトルどおり、ニッチではあるだろうがまさにドンピシャリ求めていたテーマだった。当然のことながら、知っていることばかりではあるが「何が有効か」は結局はその当事者しか分からないし、また正解があるわけではないのが難しいところ。
Posted by ブクログ
部下を持つ管理職、プロジェクトをまとめるリーダーなど、複数のメンバーを抱えチームを率いるような立場にある方なら、誰もが悩みを抱えたことがあるだろう。そう、全員が同じ性格や能力ではないし、誰に何を担当してもらうかによっては、仕事の精度も品質も大きく変わる。中には途中で離脱させてしまう事も、大きな組織になればなるほど可能性としては高まる。特に性格や個性の違いから、人によって叱り方も頼み方もまるで自分の個性が喪失したかの様に振る舞っていると、今度は自分自身が疲弊してしまうなんて事もある。誰もが様々なシーンで似た様な経験をされているのではないかと思う。
グレーゾーンという言葉自体が白でもない黒でもないグレーという言葉を用いていることから分かる通り、微妙にそうした雰囲気を持つものも沢山いるし、私自身も音や匂いに過敏な体質だから、読んでいて自分に当てはまる事も多くある。
身近な所では、こだわりが強く、特に会議の議題に挙げるほどでもない事に強く白黒つけたがる者、また仕事は異常なまでにスキルがあるのに、寝坊ばかりで会議の遅刻は当たり前、昼休憩の時間も守れないなど自由気ままに振る舞う者、そして世に言う「意識高い系」の者。最後のタイプのメンバーは、他のメンバーが残業していても自分の仕事が片付いたらさっさと帰ってしまうだけでなく、遅い事を要領が悪いとまで言い切ってしまう。それでも何とかチームとして存在できているのは、その他多くのメンバーが文句も言わず(陰では言っているかも知れないが、それが寧ろ普通)、溢れた仕事のフォローや、捌ききれない仕事があっても我慢して対応してくれているお陰だ。そうした時、決まって自分の管理能力の低さを思い知り、また悩む。
そんな悩みを常に抱えながら、時には保健師や外部の機関(心療内科)の世話になる事も多い。本書に記載されている通り、グレーゾーンというのはグラデーションだから、程度の違いこそあれ、大半の人はいずれかの特徴を持っていると思う。ASDであれADHDであれ、それをそういうものと知っているのと知らないのでは対処の仕方、スピードに大きく差が出てくるだろう。私の場合、まだそうしたグレーゾーンという言葉が聞きなれない(聞いた事ない)時代に、そうしたメンバーを預からせてもらったおかげで、ある種失敗と成功を繰り返す中で対応法を体得してきた感はある。だが、それも一つの個性として割り切り、我慢をし続けた挙句、薬に頼る様になってくるとこちらの医療費代も嵩む。何よりいつまでも薬に頼って、万が一効かなくなったら一大事と、こうした書籍を何冊も読みながら、繰り返し繰り返し復習して身につけていく必要があると考える。おかげで未だ何とかそうしたメンバーとも一緒に仕事を続けられている。
今後、益々少子化で採用が厳しくなっていく中、そうした個性際立つメンバーであっても、必ず何かマッチする仕事はあるだろうし、採用時に気付きが無く、採用後に解ったなら、別の道を準備してあげる事も、本人だけでなく、社会のためにはなるのではないか。そうした個性を持つメンバーと何度も繰り返し会話するうちに、どういった場所、会社が合うのか考えた事があったが、人事や上長、周囲に相談しているうちに、そのメンバー自身で違和感を感じていた事を私に伝え、自分の場所に巣立って行った者がいた。正直な所、自分の力がまた及ばなかった悔しさを覚えたが、その様に本人と一緒に考える場と時間を設けられた経験は大きかった。
これまでの人生もこれからの人生も真っ直ぐな一本道ではない。別々の人生を全く違う長さ歩いて、或いは走ってきた人間同士が、今この場所で交わり合った。それが職場でありチームである。誰一人として同じものではない、違った能力、違った知識、違った性格の人間同士が同じ目標を達成しようと力を合わせるのだから、互いに違和感や対立が生まれるのは当たり前だ。その中で、それを纏めていく立場の人間がいて、その人自身にもメンバーとは異なる個性がある。お互いに様々な人と個性が集まって、互いにそれを尊重し合える関係性が築ければ、もっとチームは纏まり、更に大きな目標を達成できるだろう。
ピアケアは最近特に気になるキーワードである。それができる人は当然にその知識や経験において、職場で悩む人の助けになれるだろうし、究極的には、その知識を皆で共有し、分かち合える職場が作れれば、職場の幸福度の向上、ひいては業績向上や社会貢献にもつながっていくのではないかと思う。ありきたりの考えだが、未だ未だ多くの職場が同じ様な悩みを抱え、苦しんでいる人が沢山いるのが現実ではないだろうか。