【感想・ネタバレ】こころをとらえる響きをもとめて 録音芸術としての〈ロック〉ガイドのレビュー

あらすじ

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録音は、ロックをどう変えてきたのか。
〈一発録り〉から〈AIビートルズ〉まで半世紀の変化と、必聴盤150枚を解説。
ワールドスタンダード・鈴木惣一朗がみずからの音楽観をまとめた集大成。

音楽の録音は、〈一発録り〉から〈AIビートルズ〉へとこの半世紀で大きく変化していました。その変化はロックとミュージシャンをどう変えてきたのでしょうか。本書では、ミュージシャンで文筆家の鈴木惣一朗さんが自身の体験をふまえながら、録音芸術としての〈ロック〉をガイドしていきます。

「稀有な録音物は、分け隔てなく、それぞれの人の「こころの奥のポスト」に、あたたかい手紙を送ります。そして、その手紙を開けば、聴く人は、必ず〈諍いのない世界〉へと導かれる。改めて、音楽を聴くという行為は、「素晴らしい体験」だと思うのです。」(「はじめに」より)

【目次】
はじめに

オリエンテーション

第1回 アナログレコーディングの世界の充実 1970年代~
1970年代とはいつのこと?/「空白」とは「そら・に・しろい」/すかすかな空気をうめるように/録音のはじまり/天使を信じた農夫の歌/音とともに残すもの/音とは空気振動のこと/むかし、エンジニアはまずマイクを立てた/「その人らしさ」をどう記録するか/こころによりそう「そっとつぶやく」歌い方/音楽とは計り知れないもの
【ディスクガイド 1970s】

第2回 デジタルレコーディングの世界の事始め 1980年代~
世界は、ずーっと1980年代/ピカピカのデジタルサウンド/1980年代をつづけたい人たち/確かにノイズはなくなったけれども/積極的なあきらめ/「絶対」を信じた時代から離れて/1980年代のレコーディング風景/1980年代のマスタリングの風景/デジタル疲れの音楽家
【ディスクガイド 1980s】

第3回 デジタルレコーディングの世界の完成 1990年代~
記憶のなかの終末/大量に消費される音楽たち/音楽のアバ化/「標題音楽」と「絶対音楽」/メッセージではなく、ファッション/コンピューター時代の耳がほしがったノイズ/音楽を聴きましょうよ/音響という地平線の上で/「渋谷系」の音楽に核はあったのか
【ディスクガイド 1990s】

第4回 コンピューターの中だけで作られた自由な音世界 2000年代~
録音に革命がおきている/「リアルの人間」が「フェイクの人間」を演じているということ/ロックダウンとベッドルームポップ/異空間へいざなうテクノロジー/21世紀のあたらしいひびきはどこにある?/いま・ここをあなたと共有するための音/ブラジルの音楽の海の底へたどりつく/偶発的で、小さな欠陥/ひとり遊びの世界/大きな魚をつかまえよう
【ディスクガイド 2000s-2020s】

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Posted by ブクログ

作品紹介・あらすじ

録音は、ロックをどう変えてきたのか。
〈一発録り〉から〈AIビートルズ〉まで半世紀の変化と、必聴盤150枚を解説。
ワールドスタンダード・鈴木惣一朗がみずからの音楽観をまとめた集大成。

音楽の録音は、〈一発録り〉から〈AIビートルズ〉へとこの半世紀で大きく変化していました。その変化はロックとミュージシャンをどう変えてきたのでしょうか。本書では、ミュージシャンで文筆家の鈴木惣一朗さんが自身の体験をふまえながら、録音芸術としての〈ロック〉をガイドしていきます。

「稀有な録音物は、分け隔てなく、それぞれの人の「こころの奥のポスト」に、あたたかい手紙を送ります。そして、その手紙を開けば、聴く人は、必ず〈諍いのない世界〉へと導かれる。改めて、音楽を聴くという行為は、「素晴らしい体験」だと思うのです。」(「はじめに」より)

*****

本書を購入した直後に「あ、しまった!」と思った。というのも以前鈴木惣一朗氏が書いたポール・マッカートニーに関する本が面白くなかったからだ。そこで読み返してみようと思ったら既に手元になかった。僕はビートルズ関連の書籍はつまらない内容でも手元に置いておくことにしている。それなのに手放してしまったということは、残念ながら自分にはまったく響かなかったんだな、とおぼろげながらに思い出した。さて、同じ著者による本書、どうなのだろうと心配したまま読み始めた。

結論から言えば、そんな思いは杞憂に終わった。本書は、氏が音楽プロデューサーとして数多くのレコーディングに携わってきた経験を語った講義の書き起こしと、氏がセレクトした150枚のディスク・ガイドから構成されている。自分の守備範囲のど真ん中を自身の言葉(口述)で語っているから、説得力があって好感がもてた(じゃあ、あのポール・マッカートニーの書籍は一体なんだったのだろう)。

オリエンテーションの内容は前述のように語り口に芯があり、自然と納得できた。僕も以前、簡単な宅録をしたことがあるので、なるほどな、と同感したり、目から鱗が落ちたり、プロフェッショナルのレコーディングとはこういうものなのか、と新鮮な気持ちで読むことができた。多少手前味噌な部分もあったように思うけれど、面白さに水を差す程ではなかった。

ディスク・ガイドに関しては3分の1程度は聴いたことがあるアルバムだったのだけれど、残り3分の2は未聴。まったく知らないアーティストやバンドのアルバムも紹介されていた。特にアンビエント系や音響系の音楽はほぼ素通りしてきた。細野晴臣氏の作品にしても初期の頃や「トロピカル三部作」は大好きなのだけれど、ノン・スタンダード期の作品はまったく聴いてこなかった。今回、このディスク・ガイドを読んでいくつか聴いてみたのだけれど、これがなかなか良い感じ。きっと聴かず嫌いだったのだな、と少し反省している。そういう気持ちにさせてくれたことも含めて、本書は気持ちよく読み進めることができた。

余談だけれど、以前ならこういうディスク・ガイドを読んで、聴きたくなった作品はお金が許す限り購入していた。結果としてかなり無駄な散財もしてきたなと思っている。現在は全てではないにしても、ほとんどの作品をサブスクで聴くことができる。本当に便利な世の中になったな、と実感。それがいいのか、悪いのか、便利になった分、音楽との向き合い方も少しずつ変わってきているようにも思える。

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2025年11月14日

Posted by ブクログ

鈴木惣一朗さんの作品は残念ながら未聴、細野さん周辺の方。レコーディング現場の時代毎の変遷がまとめられた本は少ない印象。貴重です。
ディスクガイドの80年代までは知っているものが多く、それ以降は知らないものが増える。著者と同年代だが、社会人になってからは、時代の音楽を追わなくなったということか。

0
2025年04月01日

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