あらすじ
中国のアジア太平洋覇権を阻止せよ!
米国が「世界の警官」だった時代は終わった。防衛戦略の優先順位は主敵を中国だけに絞り、米日印豪韓で反覇権連合を形成することだ。
「パワー」の集積地アジアで覇権を握りつつある中国。台湾統一を「歴史的必然」と明言し、軍事侵攻の危機がしのびよる。もはやアメリカ一国だけではその勢いを止めることはできない。では、日本はどう立ち向かうべきか? アメリカの対中戦略を変えた若き俊英が提言する。
目次
序 新進気鋭の戦略家が提案する「中国と対峙する新戦略」 奥山真司
第1章 「拒否戦略」とは何か?
第2章 「拒否戦略」はこうして生まれた
第3章 アメリカだけでは中国を止められない
第4章 中国を封じ込める「反覇権連合」
第5章 日本には大軍拡が必要だ
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Posted by ブクログ
軍事力のみが人を強制的に従わせる力であり、その源泉は経済力。アメリカが自国の繁栄と安全のためには中国がアジアで覇権を握るのを防ぐ必要がある。アメリカの目線から見ると至極真っ当な論理。日本の目線で、中国による軍拡を、真剣にリスクとして捉えて、対処しようとしている政治家はいるのか?
Posted by ブクログ
「中国に勝つ」ではなく、「中国の拡大を止める」ための「反覇権連合」による「対中抑止」。
これは、「自由で開かれたインド太平洋」戦略の延長線上であり、現実的な線なのではないだろうか?
ただし、そのためのコストを日本がきちんと負担できなければ、絵に描いた餅である。
Posted by ブクログ
中国によるレーダー照射問題について考えていた。中国が照射を行うことで何か戦略的利益を得ているようには見えない。国際世論は中国に厳しく、日本側が行動範囲を狭める理由もない。むしろ日本世論を硬化させ、防衛費増の正当性を高めるだけだ。技術的に先進でない限り威嚇にもならず、音声データも証拠として無意味。さらに「撃てないこと」を互いが知っている以上、照射を超えるエスカレーションは起こり得ない。撃てば、国際世論では撃った側が必ず不利になるし、潰せる火力はただ一機。採算が合わない。だから撃てない。撃てないから、挑発にもならない。
首輪に繋がれた犬の威嚇だ。
30分も銃を頭に突きつけて良いはずがない。
それでも“非合理”な挑発が起きるのはなぜか。現場レベルの政治的パフォーマンスが優先され、示威行動こそが出世の材料となり、軍人自身にとっての“合理性”が国家の“不合理”を生む。こうして、中国の利益を損ねる行為ですら「軍部の暴走」あるいは「判断の稚拙さ」として現れる。
本書を手に取るにあたり、こうした現実の“ねじれ”を頭に置いておく。不合理な内部事情。日中問題をじっくり考えるには最適な一冊だ。
マラッカ・ジレンマ。中国経済の発展はアメリカなどが管理する海路(とりわけマラッカ海峡)を通じて石油などの原料を輸入しなければならない。中国が国力を維持するためにアメリカに海路を握られたジレンマを示す。
対中反覇権連合を強化せよと著者はいう。その時、中国にとっての最適な戦略は、平和的手段を用いてわれわれの同盟を破壊すること。だが、「経済制裁」は、非軍事的な手段のなかでは最も強力な形ではあるが、本質的ではない。アメリカは北朝鮮、キューバ、北ベトナム、イラン、イラクなどに対して制裁を行ったが、どれもうまくいかず。ウクライナ戦争においても、ロシアに対する経済制裁が全く機能していない。
同じように、中国は、最もターゲットにしている台湾に対し、経済面でさまざまな圧力をともなう措置を講じてきたが、中国の目的とは逆の結果、つまり台湾の中国離れを起こしている。
こうした事実は、結局、経済パワーの代替手段は「軍事力」しかない事を示す。経済的圧力は無意味だから、軍事的圧力へ。それを拒絶する日本の取るべき策とは。本書にヒントがある。読み応えのある一冊だった。
Posted by ブクログ
中国を抑止する事がアメリカにとって最優先課題という話。
今やその重要性は誰も否定しないと思うけど、問題はトランプがその戦略を追求するのに、自己規律を欠いている事であって、ロシアや中東に拘っている様にしか見えないし、言動も二転三転していて、まともな戦略がない様に映る。
あと、日本も軍備拡張とか核許容の議論がそんなに急進的に進むと思えない。それも大きな問題か。
Posted by ブクログ
現米国トランプ2次政権の国防次官であるコルビー氏による(国防次官就任前の)著作。
氏が提唱する国防・外交戦略である「拒否戦略(Strategy of Denial)」について平易、具体的に解説されている。
「拒否戦略」とは一言で「中国の覇権を拒否すること」。
誤解されがちだが、その目的は米国の覇権の確保・維持でも、中国(共産党)の崩壊でもない。
中国が他国に(軍事力を背景に)自らの意志を押しつけてくるのを「反覇権連合」によって防ぎ、中国がアジアの覇権国にならないようにできるのであれば、「中華民族の偉大な復興」を実現しても構わない、とさえ著者はいう。
冷戦が冷戦で済んだのは、戦争の可能性を前提に軍事力を整備・強化したからであり、その教訓から、中国の軍事的暴発を防ぐには「反覇権連合」、とりわけ日本、台湾、韓国、豪州の軍備増強が急務。
想定敵国のロシアに対し圧倒的に大きい経済規模を持つ欧州や、経済規模の小さいアフリカ、中東に力を注ぐのは不合理。
地域的にも経済影響力が大きく、成長途上であり、かつ覇権的野心を抱く中国の存在が大きい(特に東、東南)アジアに持てる資源を集中すべき。
という氏の主張はそのままトランプ政権の方針となっているようにみえる。
中国に覇権を握られるということは、一党(一人)独裁の強権政治の影響下に入ることを意味し、日本がその主要な標的となっていることに日本人はもっと危機感を持つべきだという氏の指摘には、背筋が凍る思いがする。
Posted by ブクログ
現在、米国の国防次官として活躍するコルビー氏の一冊。彼は、トランプ政権における安全保障戦略の軸となる考えを提唱した人である。それは、ウクライナ、中東よりも、喫緊の課題であるアジアに集中して対処すべきというものである。本書執筆後、2次トランプ政権のブレインとして、様々な場で交渉を行っている彼が、その前提となる考え方を発表したのが本書の位置づけである。
複雑化する国際安全保障について、問題を冷静に分析し、目標を明確にして、すべき対処を組み立てていく。彼のロジカルな論の展開に圧倒される。
Posted by ブクログ
彼の議論は彼の主著『拒否戦略』や彼のポスト、インタビューから相当読んだものの、日本向けに書かれたものであるために入ってきやすさがある。また、2021年の主著からウクライナ戦争が始まり、中東の泥沼化が進む今日の世界。どう見てもアメリカが現在の2正面で必ずしもうまくいっているとは言えない状況。そこにおいて本来割くはずだった中国や西太平洋への優先度が下がっている。また、日本が拒否戦略としての防衛戦略を選択したのもこの間。そうした中であえて言えば「拒否戦略のあとで」と言える新著。来週迎える総選挙にも関わる内容であり、多くのことを日本人に考えさせる。特に最後の5章「日本には大軍拡が必要だ」は彼の持論で私としては嫌というほど見たが、そのロジックには納得させられる。また、彼の議論を読むと常々思うのは戦略家とはこういうものなのかと思わせられる。奥山真司氏は「現代のジョージ・ケナン」に例えられることがあるという動きを紹介しているが、完全には一致できないが、そのロジックには常々納得させられたような気になってしまう。日本のメディアだとついつい「○○年までに台湾有事が起きるか否か」の議論に終始しまいがちであるが、「起きるか否か」よりも従前の備えの重要性を改めて説いている。私としては驚くものではないが、それを知ってほしい人には届かないのだろうとも思う。ワイドショー的な争点が重要視されている今回の総選挙。投票する前に一度立ち止まって、開き日本の明日を考えるきっかけにもなるであろう一冊だと思う。民主党政権か共和党政権か、コルビーが政権入りするかはさておき、アメリカの戦略家のハンディーな本を読むことに損はないのだと思う。
Posted by ブクログ
アメリカは中国に勝てないから逃げ出すので日本や韓国や台湾が盾になれや、と言っているようにしか見えない。
とは言え逆説ながら日本人が中国と戦争する覚悟を決めないとこの本の通りになるだろう、というのが悲しい現実ではある。
Posted by ブクログ
アジアが世界の中心
PPP購買力平価 中国がアメリカを超えている
世界のGDPの40% 東アジア沿岸部から東南アジアにかけて ヨーロッパ20%以下
重要な理由:マーケット、ライバル(=中国)、アンバランス(=対中国)
拒否戦略 (中国の偉大な復興は否定しない 台湾独立も賛成しない 現状維持)
戦狼外交の中国への服従を拒否する
反覇権連合 侵略を不可能にするパワーバランス
経済パワーの代替え手段は軍事力しかない 台湾の次はフィリピン
ITや金融サービスや娯楽は紛争が起こったらパワーに直結しない
アメリカ一極は無理 GDP25%
経済制裁やプロパガンダではなく ハードパワーが必要
準備をすること
アメリカの再工業化 同盟全体で 小さな政府から大きな政府へ
平和主義 ではなく、集団防衛 侵略者が行動を起こす前に 抑制するために
中国のミサイル備蓄量はここ3年で倍増 日本の防衛費GDP2%は焼け石に水