あらすじ
部屋を満たすようにして流している音楽は「まだ完全な恋ではない、でも絶対に、淡いあこがれとか、片思いとかじゃない、なんて言えばいいのだろう、色濃く漂ってくる恋の気配みたいなものを感じさせる主旋律。そのあとに続くのは、春の嵐だ。(本文より)
春の嵐のように自信満々な初恋、友達以上恋人未満の遠距離初恋、球根のように地中深くうめておきたい秘密の初恋、運命の初恋、ひそやかにふくらむ初恋。五粒のチョコレートボックスのような10代の恋のせつなさがつまった五つの物語。
第一話 春の嵐と夏の約束
第二話 秋の竜巻と冬の薔薇
第三話 猫の天気予報
第四話 七つの「好き」の物語
第五話 晴れ、ときどき雪
エピローグーーあとがき、ときどきエッセイ
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
5つの恋の物語。
ピアニストを目指す愛理、父とアメリカに住む晴樹、花が大好きな世緒莉、ニューヨークのボーイフレンドに会いに行く夢美、ベイカリーカフェりんごの木で働きながら定時制の高校に通うまりな。
それぞれ一人称で紡がれる恋の軌跡。
読み始めは「わたしは/ぼくは」でつらつらと書かれる感情的な文章が取っ付きにくいと感じたのと、それぞれのお話の主人公や登場人物にもっと深みがありそうなのに、サラッと描くんだなあ、短編として描くにしては設定が盛り盛りだなあと感じていました。
それらの謎が解けたのが、あとがきの後の作品紹介です。
それぞれのお話に出てきた子達のお話がちゃんと本としてありました。驚きました。
読み終わりの時点では、文章のとっつきにくさには慣れて、全体を読むと纏まっていると感じて、私の中では⭐︎4つかなあと思っていましたが、作品紹介でその事実を知って、だったらこれはめちゃくちゃいい作品じゃないか!と⭐︎5つになりました。
それぞれの本を読んだ上でまた、この本に戻ってきたいと思います。
私は小手鞠るいさんの作品を読み始めたばかりなので全くピンときていませんでしたが、作品に触れてきた人が冒頭のあらすじを読んだらめちゃくちゃ興奮するんだろうなと思うと、粋なことをするなあとしみじみ思いました。