あらすじ
牛丼屋のカウンター、向こう側から注がれる以前とは違う視線。スキャンダルが元でアイドルでなくなったカズヤは、そんなものには慣れっこになった。マイナスからのしあがるうち、様々なことが麻痺していく。さあ、ボイス・スタジオへ行こう。ここには東京の空の下に居続けたいと喘ぐ人間が集まってくる――。東京で暮らす「普通」の人たちの喘ぎが響く!
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Posted by ブクログ
官能小説っぽくって初めはちょっと引いたが、ストーリー構成、心理描写がすばらしい作品だった。
作者は、ロジックよりは感性を重視しているようで、小説家というより芸術家的な思考回路に思えた。
他の作品も読んでみよう。
Posted by ブクログ
ボイス・トレーナーの吉本の元へ訪れる7人を主人公にしながら、
繰り広げられる物語。
どちらかというと、明るい太陽の元を元気に歩く人たちではなく
いろいろ背負った危うい人たちばかり…。
トレーナーの吉本自身も、過去を背負って生きています。
東京で七転八倒しながらも、生きる強さ、
その力を感じました。
Posted by ブクログ
鮮烈なカバーイラストで手に取った作品。でも読み終わって心に残ったのは、やや掠れ気味のボーカルだった。読み終わった小説で音声が響いたのは、初めての経験だ。
東京の片隅でプライドどころか自分の才能の残滓を切り売りする、元シンガーのボイストレーナー吉本のところに集う彼らはそのまま、東京の縮図。大麻使用で堕ちた元アイドル。うらなりのボーカリスト。嘘をつきつづける風俗嬢。仲間外れの主婦。さびしいヤクザ。常に醒めた目で彼らに向き合い、でも不器用に歌を通じて彼らを変えてゆく吉本にも、辛い過去があった。
ヒキタクニオの小説にはいつだって毒がある。主人公は落伍者だったりコロシヤだったり角を生やした女性だったり。読者はその紛々たる毒によろめきながらも、いつしかその冷たい甘さにやられてゆく。かさかさした文体にたっぷりふくまれた皮肉な愛情。今回もまったく同様で、良い子に膝に手を置いたまま、ヒキタクニオ劇場の観客でいつづけたはずの自分があれよあれよというまに熱に巻き込まれ、膜を破ってどどうと流れてくる熱気に当てられてサヨウナラ。ところがそれが、気持ちよい。ぎゅうぎゅうに絞られてかえって爽やかに身が軽い。
ペーパーテストで100点を取っているのに実技で歌を歌わされると3しかとれなくなるほどの私なのになぜこの小説に惹かれたのだろう?と思ったがこれは多分、ボーカルに代表される欲望の合法的な大排出への願望なのだと思う。膿みだろうが欲望だろうが不満だろうがなんだろうが、とにかく全部出し切ることへの快楽。
揺さぶる才能(声)なんてなくてもいい、ただ、叫べ。
Posted by ブクログ
ボイストレーナーの吉本を中心にした連作短編集。それぞれ濃い登場人物が出てきます。この作者の作品は、裏社会というかアンダーグラウンドなのか業界の話がとても面白い。全然知らない世界だけど、、、。声に対する描写も面白い。読んでよかったです。
Posted by ブクログ
元ミュージシャンの吉本のボイス・スタジオを舞台にした連作風小説。吉本自身もゲイなのだが、ボイス・スタジオにレッスンに来る連中は一癖も二癖もあるヤカラばかり。吉本が前に出ずに脇役に徹して、変なヤカラの生態を際立たせる辺りが面白い。まるで現代日本の縮図のようだ。
Posted by ブクログ
元売れない歌手でゲイの男性が教えるボイストレーニングの生徒達は、それぞれ人には言えない悩みを抱えている。トレーニングを通して少しは悩みが軽減されるものの、決して完全解決には至らないところがミソ。この中途半端加減が「無理しなくてもいいよ」と言われているようで、なんとなく暖かい。