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Posted by ブクログ
鮮烈なカバーイラストで手に取った作品。でも読み終わって心に残ったのは、やや掠れ気味のボーカルだった。読み終わった小説で音声が響いたのは、初めての経験だ。
東京の片隅でプライドどころか自分の才能の残滓を切り売りする、元シンガーのボイストレーナー吉本のところに集う彼らはそのまま、東京の縮図。大麻使用で堕ちた元アイドル。うらなりのボーカリスト。嘘をつきつづける風俗嬢。仲間外れの主婦。さびしいヤクザ。常に醒めた目で彼らに向き合い、でも不器用に歌を通じて彼らを変えてゆく吉本にも、辛い過去があった。
ヒキタクニオの小説にはいつだって毒がある。主人公は落伍者だったりコロシヤだったり角を生やした女性だったり。読者はその紛々たる毒によろめきながらも、いつしかその冷たい甘さにやられてゆく。かさかさした文体にたっぷりふくまれた皮肉な愛情。今回もまったく同様で、良い子に膝に手を置いたまま、ヒキタクニオ劇場の観客でいつづけたはずの自分があれよあれよというまに熱に巻き込まれ、膜を破ってどどうと流れてくる熱気に当てられてサヨウナラ。ところがそれが、気持ちよい。ぎゅうぎゅうに絞られてかえって爽やかに身が軽い。
ペーパーテストで100点を取っているのに実技で歌を歌わされると3しかとれなくなるほどの私なのになぜこの小説に惹かれたのだろう?と思ったがこれは多分、ボーカルに代表される欲望の合法的な大排出への願望なのだと思う。膿みだろうが欲望だろうが不満だろうがなんだろうが、とにかく全部出し切ることへの快楽。
揺さぶる才能(声)なんてなくてもいい、ただ、叫べ。
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