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Posted by ブクログ
最初に「遠くて浅い海」を読んでしまったので、実は途中、二人の結末を思い出してなんだか余分な気持ちを抱えながら読む羽目になった。まぁそれは私のアンラッキーなので、これから読む方はまず、こっちを読んでから「遠くて・・」を読むことを推奨したい。
オカマの蘭子と福岡にやってきた消し屋の幸三。存在そのものを「消す」彼の今回の依頼は、野球賭博にからむもの。チームのスタープレイヤー・真壁を試合の間だけ、消してほしいというのだ。しかも命は取らず、真面目一辺倒の真壁を自主的にサボタージュさせてほしいと。幸三が目をつけたのは以前借金を作って妻子を置き去りにした真壁の真の父親である、大神。クスリを打ちながら大神が語る転落の模様は生々しくもあり、うら寂しくもある。
東京ボイスではボーカル、という糸でつながった複数の人生が綴られ、オーケストラのように各ポジションに順々にスポットが当てられたが、今回はピンでライトが強烈に当てられる。しかもひとえに真壁だけに。今回くっきりと描かれるのは光と、そうして、影だ。まっすぐに光に向かって歩む真壁には、その後ろの影に堕ちてゆく実父の姿は見えないし、大神からは逆光を背に、真壁はまぶしすぎるのだろう。
長年連れ添った妻にさえ、食べられないことをひた隠す、真壁が鶏肉を食べられない理由。冷めた鶏肉がたべものからなにか別の、冷たくばさつく物体に変わったとき、それまでは確実に親子だった2人の時間が別のモノに変わったのだろうと思う。
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