【感想・ネタバレ】この世の喜びよのレビュー

あらすじ

第168回芥川賞受賞作!

娘たちが幼い頃、よく一緒に過ごした近所のショッピングセンター。
その喪服売り場で働く「あなた」は、フードコートの常連の少女と知り合う。
言葉にならない感情を呼びさましていく芥川賞受賞作「この世の喜びよ」をはじめとした作品集。

ほかに、ハウスメーカーの建売住宅にひとり体験宿泊する主婦を描く「マイホーム」、
父子連れのキャンプに叔父と参加した少年が主人公の「キャンプ」を収録。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

えもいわれぬ喪失感を感じる女性の表現がすごく美しく自身の母親と重ね合わせながら読み終えました。
素敵なお話しでした。

0
2025年05月06日

Posted by ブクログ

なかなか一文が終わらない、句読点が少ない文で、ちょっと読みにくいです。あと誰が何を喋ったのか、場面転換がいつあったのかが分かりにくかった。(私の読解力の問題ですし、そこが良いところでもある)

・表題作
若者と喋るとパワーが貰えるし、子育ては人生2周目の追体験、みたいな話。著者の作品を初めて読みました。文体もそうですが、心地良いゆらぎを感じて、読んでいて新感覚で面白かったです。

・3本目のお話
お母さんになると、お母さんじゃなかった頃には戻れないのだと思いました。

0
2025年01月26日

Posted by ブクログ

表題作は、他者に伝えることが得意ではない主人公の「あなた」と、他者に屈託なく伝えることができる「少女」を中心とした小説。
「あなた」の中を絶えず流れ続ける言葉を、そのまま写したような文体で話は進む。癖はあるが、現在から記憶まで思考が転々とする様子がとてもリアルで、ここまで文字で表現できるものなのかとびっくりした。





0
2025年06月02日

Posted by ブクログ

詩でも小説でも、井戸川射子の言葉は、過去を慈しみ、今を鮮やかにうつしとり、未来に開かれている。
『石井千湖 解説』
不思議な小説でした

0
2025年01月15日

Posted by ブクログ

詩のように書かれた物語。本来なら句点で区切られるような文章が読点で繋がれてゆき、不思議なところで句点が打たれる。解説を読み、まるで川のような文章だと思った。道端を這う水が流れ行く先を見ようと水を辿っていくが、思いもよらないタイミングでその水が途切れるような、そんな感覚。視点もそのように移り変わっていく。“あなた”の目の前の出来事が書かれていると思いきや、段落を変えず次の文章では、“あなた”の過去の出来事に視点が移り変わる。思考の自然な揺らぎを文章で読むことにしばらくは慣れなかったが、慣れると意外にも読める。目の前の少女と、自分の二人の娘の小さな頃を重ねる“あなた”。親として娘たちを大切に思う気持ちと、目の前の少女を大切に思う気持ちが、ゆっくりと重なり合っていく。それは親心ではなく友愛なのだが、“あなた”はそれをまだ受け取る心の準備が整っていない。「この世の喜びよ」とは新たな自分に出会えることや、大切なものや人が増えていくこと、自分の中に新たな感情が芽生えることの喜び、なのだろうか?

0
2024年12月09日

Posted by ブクログ

内側から溢れ出る水を、言葉の形に押し留めているような詩的な文体。頭の中で響く言葉のように、連綿と読点で繋がれ流れている。「私の頭は私の考えにいつも付き合ってくれる」自分の記憶を呼び起こせたことをあたたかな言葉に紡げるのが素敵。

0
2024年10月31日

Posted by ブクログ

祝文庫化。2023年の芥川賞受賞作品。言葉の可能性を追求していくチャレンジングな作家という印象。こういう作家に光を充てていく芥川賞はやっぱり面白いと思う。

0
2024年10月29日

Posted by ブクログ

読んでいる間はずっと灰色のイメージ。暗いと言うのは違うのかもしれないが、晴れやかな気持ちには一度もならなかった。けれど読み終えるとなんだか、まぁ人生とはこんなもんだなとしっくりくる。なにもうまくはいかないし、とびっきりキラキラした出来事もそうそう起きない。

1
2025年06月02日

Posted by ブクログ

三編の短編集。

表題になっている『この世の喜びよ』
は読んでいて なかなかその文章に慣れることができなかった。
主人公は“あなた”という二人称で語られる 穂賀という ショッピングセンターの喪服売り場で働く中年女性。
社会人と大学生の娘がいる。

ある日“あなた”はフードコートに頻繁に一人で来ている十五歳の少女と話しをするようになるのだが 何度か話すうちに口下手な“あなた”は 少女を怒らせてしまう。

文章がなんとなく詩のようだ。
“あなた”の目に映っている場面や、その時々に入り込んでくる回想を思いつくまま語っているような感じで、まとまりがなく 散らばっているような印象を受ける文章だった。

正直 私には なかなか手強い作品だったけれど、売り場に立つ人間の目線や広いのに閉塞感が漂うショッピングセンターの空間はよく描かれていると思った。


0
2025年09月26日

Posted by ブクログ

言葉という掴みどころのない有形無形な存在を、濃密でありながら象る輪郭が見えないような、不思議な気持ちになる短編集だった。
この物語に出てくる登場人物たちは皆どこか不器用で、漠然とした不安を抱えている。
ひとりでは不明瞭だった思いが、人との関わりの中で交差し時にぶつかりながら明瞭さを帯びていく様は、一抹の妖しさを感じると共に心惹かれるものがあった。

0
2025年08月15日

Posted by ブクログ

 つらつらと、流れる言葉に流されてしまうかと思うが、所々に、はっとする表現がある。
詩を書くひとの心が見える、とでも言うのか。
流れていく言葉と、流れを止める言葉を楽しむ読書となった。

0
2025年04月24日

Posted by ブクログ

表題作

過去と今、未来を行ったり来たり。
語りかけられているようにも聞こえる。

ぼんやりと過去を懐かしんだり、
過去を通して今を見ていたり、
心と時間、思い出とか考えが同じ一直線上にあって、
1人の人間の営みを内側から感じられた気がする。

読み慣れない文章で句読点も少なく、
流れるようで、一冊が詩集のようだった。

新鮮、と言う意味で星四つにしました

後半くらいまでずっと走馬燈見てるんかと思った笑

0
2025年01月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

表題作は、スーパーの喪服売り場で働く中年女性が、いつもフードコートにいる中学生と話をするようになる様子を、同じスーパーで働く人たちとの交流を交えて描くお話

何か大きな事件があったり、決定的に悲しい出来事があるわけではないのだけど、日常を送る中で孤独を募らせている中年女性が、自らの子育てが終わりを迎えようとしている中で、中学生に心を開こうとするというような内容で、読んでいて切ない気分になる作品でした。

二人称で書かれているのが特徴的だけど、過去を振り返ってやさしく自分に語りかけているように感じたけれど、二人称は同時にその語りかけが読者にも向けられるように感じられるから、情報の処理のプロセスがいつもと違う感じになって、読むのに時間がかかってしまいました。

特にドラマ性のない現代の普通の人々の暮らしの中に普遍的な人生の後半の寂しさを描いているところが芥川賞に繋がったのかな。

0
2024年12月19日

Posted by ブクログ

言葉(文章)の使い方が独特で、どうしても「あなた」だったり「彼女」だったりで読むリズムが崩れてしまった。

0
2024年12月04日

Posted by ブクログ

音声で聴いていたので、この小説のすごさがわかるほどのレベルに達してはいないのだが、淡々とした描写のまま何事もなく、小説は閉じられる。表現方法が特徴的とのこと。芥川賞受賞時の選評を引いておく。

平野啓一郎
「V・ウルフ風の「意識の流れ」を二人称で描くという難しい挑戦が成功している。」「「あなた」という穂賀への語りかけは、ヤング・ケアラーの少女への「あなた」へと転ずる最後の場面で、彼女の子育てを否定する、唯一の真の他者へと開かれる筈だったが、その対立性は曖昧に呑み込まれ、結局、全篇を貫く自己承認回路へと吸収されてしまう。」

小川洋子
「(引用者注:「荒地の家族」と共に)丸をつけた。」「特異なのは、何も書かないままに、何かを書くという矛盾が、難なく成り立っている点にある。」「ごく当たり前に、“あなた”の過去と現在は一つに溶け合う。」「状況設定の特別さに頼らず、平凡を描写する言葉そのものの力で小説を成り立たせる。タイトルとは裏腹に、これは凄まじいことをやり遂げた作品ではないだろうか。」

島田雅彦
「何処か心地よい室内での日常的営みを大胆な筆致で描いたフェルメールを思い出させるが、技法は正攻法なので、完成度の高いエチュードという印象。」

松浦寿輝
「常同的な人物、常同的な場所、常同的な日々。それにこれほどの言葉を費やしてみせるミニマリズムの趣向をどう評価するか。最後の段落で甦ってくる風と光と水音の記憶にはうたれないでもないが、そこに「この世の喜び」というほど大仰なものが漲っているのかどうか。」

奥泉光
「how(引用者注:どう書かれているのか)への意識と工夫の点で傑出していた。」「技法の洗練はともすれば世界を狭くしてしまう弊があると、自戒を込めつつ助言もしたいところだけれど、まずは受賞作たるに十分な技術の練磨があると考えた。」

0
2024年11月14日

Posted by ブクログ

地の文と台詞、誰が今何をしているのかが掴みにくく、私の中で曖昧になってしまうことがあった。ただその詩のような文章が魅力的でもあるのだが。

0
2024年11月12日

Posted by ブクログ

いま自分がどこにいて何をしてどんな立場であるのかが分からなくなる感覚。どれも現実で過去でもあり今なのだ。かつての空気や音を思い出す不思議な気持ち。句読点の付き方があまり馴染みのないリズムなのだが途中から慣れた

0
2024年11月12日

「小説」ランキング