あらすじ
科学捜査を切り開いた捜査官の極秘ファイル
地下鉄サリン事件、和歌山カレー事件、ルーシー・ブラックマン事件……日本中を震撼させた凶悪犯罪に対して、科学的知識を駆使し、わずかな痕跡から謎を解き明かしてきた男がいた。刑事とともに捜査の最前線に立ち、「科学と捜査の融合」を志した日本初の「科学捜査官」が綴った、息をのむような戦いの日々と、貴重な歴史的記録。
【警察小説の第一人者・黒川博行氏 絶賛!】
「バイブルにして読まなあかんです」
第一級資料+傑作ノンフィクション
●オウムの科学を解明した伝説の男
この事実は、オウム真理教が生成したこの特異なサリンが、松本で使用されたものであることを証明する科学的な根拠になった。科学は嘘をつかない。しっかりと事実を突き詰めたとき、全ての説明に矛盾がなくなる。(本文より)
※この電子書籍は2021年3月に文藝春秋より刊行された単行本の、文庫版を底本としています。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
面白くて熟読してしまった。
以前ネットニュースで冒頭の土屋元死刑囚とのやり取りが抜粋されており、とても興味深かったのを思い出し購入。
サリン事件は服藤さんのキャリアの一部で、科捜研から警察に転属してからも、様々な事件に関わり科学捜査を現場刑事と世の中のために推進した。
稀有な経歴だけにとても苦労されたようだけど、間違いなく多くを変えた。諸事件の科学的根拠、結論に至るまでも読み応えがある。組織の人事的な部分より科学捜査に興味がある方にとっては、一部の内容は退屈に感じるかもしれないが、この組織特有の窮屈さやおおらかさ、全てをひっくるめてでないと語れない内容でもあったと思う。
Posted by ブクログ
科学捜査の礎を築いた方の警察官人生の自伝的な内容。
実際の事件を科学的なアプローチをどのように行ったを丁寧に紡いでくれていて、非常に面白かった。
また、人との関わり方や自分の信念を信じて0から1を作り上げた考え方など学ぶ部分も多かったです。
Posted by ブクログ
時代と共に犯罪も巧妙化してる
日本を震撼させた凶悪事件の解決に
科学から切り込んだ人
捜査員や古い警察の体質に抗いながら
丁寧に現在の科学捜査の立ち位置を作り上げた人
こだわりが自分の手柄でもなく
科学はウソをつかないとの信念
地道に捜査する捜査員へのリスペクトを忘れてないところ
魅力ある人です
Posted by ブクログ
知らなかった人の武勇伝といえば武勇伝だけど、経歴が素晴らしすぎて、驚きながら読んだ。
世のため人のためという精神で仕事に向かった人。
一時的に報われなくても諦めないだけでなく、やはり人脈作りも大事だと改めて思わされた。
該当する科学の知識を学び直して再読したい。
Posted by ブクログ
何かで紹介されていた。
警視庁で科学捜査官として先進的に取り組み、組織をうごかしてきた著者が、関わってきた事件や仕事について書かれている。
警察組織や内部の話がとにかく複雑でよくわからなかった。捜査に科学は不可欠で、それを推し進めてきた功績はあると思うが、本にするならもう少しわかりやすくするべきだったのではないかと思う。
Posted by ブクログ
面白かった。日本で科学捜査というものを確立した一人の警察官の話。あの地下鉄サリン事件でサリンを同定、そしてオウム真理教のサリン合成事実を科学的に証明した凄い人である。警視庁と警視庁を行ったり来たりしているが、何でこんなにポストがややこしいんだろうか。
Posted by ブクログ
ご本人だから書ける当時の思いも含まれている点は、とても貴重であり、遺すべきものと思います。
ただ、本人からの視点だけでは、事件を間違いなく伝えられているかがわからず、警察組織の問題点も偏った見方になっている恐れがあります。
第三者によって、著者の周囲の方への取材をされ、その結果も踏まえてまとめられると、なお良いのではと思いました。
Posted by ブクログ
先日のテレビ、新プロジェクトXをたまたま見て、過剰表現もなく、ただただ面白くて中座できなかったのが、この科捜研の毒物専門家の服藤さんと、オウムの化学者で神経毒サリンを生成した土谷正実の対峙だった。
事件発生後すぐにサリンだと同定できたのもこの方に拠るところが大きい。
静かに物証と化学知識で語る服藤さん。
逮捕後、黙秘のままだった土谷を前に、異例の面会に臨む服藤さんは、化学者として語りかける。
君は面白い研究をしていたね、と大学院論文を読んだ服藤氏が語ると徐々に態度を軟化させる。
大学と違ってオウムは楽しかった、なんでもやらせてくれた、と語る土谷。
それでも黙秘したがる土谷を前に延々と化学式をかいて見せる。
それだけで、土谷に対して、同じレベルでわかってるひとがいることを示す。
土谷が発明したらしい、ある特殊な方法を示す化学式を見せた瞬間、土谷に動揺が走る。
第一章の肝が↑のシーン。
映画より映画のよう。ひえー。
その後も、当初生ぬるい科捜研に失望していたが、一念発起し、警察と大学に同時に在籍して博士号をとり、毒物の専門家になったことや、それでもあらゆる事件で現場主義を貫いて活躍したことが描かれている。
物証を積み上げ、揺るがないものを作るために、こんなに警察は苦労しているんだなあ。
後進のために、警察の組織をより良くするために、と精進努力を重ね、現場の声をきき、全国を駆け回り、出世して、環境を改善していく。
優秀な人材が余計なことに時間をとられないよう、システムを作る。
こんな人たちが警察にいるのなら、心強いと思ったし、あらゆる有名な事件にかかわるさまは、現代のシャーロック・ホームズや、秘密シリーズの薪さんに(清水玲子)を彷彿とさせた。
最後の謝辞によれば、息子さんも同じ道に進んだとのこと。
忙しい忙しい現役時代に、子供を保育園に連れていくシーンがある。
妻は看護師でやはり忙しく、実家はどちらも遠い。
育児を支える社会インフラあってこそ。
この多忙で優秀なひとを支え、息子さんの育児をサポートしてくれたんだなあと思う。