【感想・ネタバレ】言葉の道具箱のレビュー

あらすじ

「言葉とコミュニケーション」は、哲学の問いであり、「私」の問いである。

美味しさを伝えるには、「言葉が奪われる」とき、言い換えの力、ジェンダーを表す単数のthey…。日常の問いを哲学につなげ、柔らかな言葉で新たな可能性を探る。「紀伊國屋じんぶん大賞2023」第2位に輝いた『言葉の展望台』、『言葉の風景、哲学のレンズ』に続くエッセイ集。

「コミュニケーションについて考えるなかで徐々にわかってきたのは、目の前の相手としっかりと向き合うためには、ときに自分自身で物事を決めるのを中断し、相手に身を委ねる必要があるということだ。私の言っていること、私が発話を通じてしていること、そして会話のなかで現れる私とあなたの関係、そのいずれも、私単独で決めることではなく、私とあなたのあいだで相互的に調整されることであって、だからこそときには自分の意志を引っ込めてあなたのやりかたに合わせることもできる。」(本書より)

【目次】
レンコン団子の美味しさ
言葉が奪われる
「卒煙支援ブース」へようこそ
「生き延びましょう」とあなたに向けて
自分自身を語るために
いま、ここから、私が投げかける言葉
会話の事故
哲学者に語れること
突如、迫りくる
理想的な言語、不完全な言語
あれ、そうだっけ
呼びかける言葉

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

群像で連載していた言葉の展望台をまとめたシリーズ3巻目にして最終巻。
著者は言語とコミュニケーションを専門とする哲学者。
そもそもトランスジェンダー/ノンバイナリーの人々はそうでない人々よりも自殺リスクが高い。
一人称権威の話が面白かった。普通は私痛いというと信じてもらえるがネット上やマイノリティの人は信じてもらえないことがある。

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2025年02月06日

Posted by ブクログ

三木那由多の少し脱力した感じの哲学エッセイが好きで読み続けている。本作もそんな感じで期待を裏切らない。一方で強烈に考えさせられる程の抑揚もない。期待したものが、期待した通り提供される安心感とマンネリ感。

恐らく、著者のポジションがハッキリしている事も関係していそうだ。トランスジェンダーというハッキリしていない印象ながら、しかし、ハッキリした立ち位置。それが際立つ個性となってしまう社会の不寛容、均質性ゆえか。

そんな中で気になったのが、単数の「they」。heでもsheでもない、複数形ではなく単数のthey。ジェンダー中立的な仕方で特定の個人を指す用法は比較的最近のもので、2015年にアメリカ方言学会の「今年の単語」に選ばれたらしい。

それまでトランスジェンダーを表す代名詞を使いたいときには「she/he」や「s/he」だった。問題は、これに当てはまる日本語がない事。

なるほど、言葉が思考をつくるとはこういう事か。多分、トランスジェンダーの方に対し、「彼は」とか「彼女は」とどちらかに定めた会話をしている。無理矢理、寄せている。それはtheyらの入るトイレやお風呂を無理矢理、決めるように。

彼人(かのひと)が良いのだろうと著者はいう。しかし、中々、日本では浸透しなさそうだ。

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2025年06月30日

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