あらすじ
泰山府君、牛頭天王、金神、八王子、大将軍、盤古大王、土公神・・・・・・。冥界や疫病、あるいは暦や方位などに関わる神々。陰陽道の信仰にもとづいて祀られてきた神々。忘れられてきた、もう一つの日本の神々。
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Posted by ブクログ
「陰陽道」、言葉としては知っているがその内容はと言われると正直良く分からない、陰陽道とはどんなものなのか知りたくて、本書を読んでみた。
まず、その歴史の概要は次のようなものだったと説明される。
確かに陰陽・五行説の考え方、暦・天文・占術の知識や技術は中国渡来のものだが、「陰陽道」とは10世紀ころにそのような名称で呼ばれた、日本で独自に編み出された信仰、祭祀、呪術の体系だとされる(20頁)。
律令制度では陰陽寮という役所があり、陰陽師もそこに所属する役人であったが、高名な安倍晴明は官職としての「陰陽師」というより、一種の「職業」、職能的呪術者として活躍したという。そして時代の推移の中で、民間社会に根付いた在野の陰陽師たち―唱門師、博士、ヒジリ、暦売りーが登場する。
一方、宮廷陰陽道の系譜としては、安倍家の流れを受けた土御門家が、その「許状」を得ないと「陰陽師」として認定されないというシステム(門人化による保護とその見返りとしての上納)を江戸幕府・朝廷に認めさせた。しかし、明治3年、いわゆる陰陽道禁止令によって、このシステムは崩壊した(28ー32頁)。
次に、人間の寿命を記録した戸籍を管理する組織の長官職の「泰山府君」、巨丹、蘇民という「隣の爺型」の物語パターンとして語られる「牛頭天王」、さらには「盤牛王」のような暦に関わる神々などが、縁起や関係文献とともに紹介される。
さらに、高知県物部村に伝わる「いざなぎ流」を詳しく紹介しつつ、陰陽道との関係が説明される。著者のフィールドワークの成果が存分に発揮された章。
初めて知るようなことがほとんどで、明治新政権による国家の方針により、陰陽道が封印・禁圧され、一つの信仰、民俗が失われてしまった影響の大きさを実感する。
付論として収録された「折口信夫の「陰陽道」研究・再考」は、本書全体の内容の頭の整理ができて、とても有益。