【感想・ネタバレ】統辞構造論 付『言語理論の論理構造』序論のレビュー

あらすじ

生成文法による言語研究の「革命」開始を告げる記念碑的著作.句構造や変換構造などの抽象的な言語学的レベル,言語の一般形式に関する理論,文法の単純性の概念などが,人間言語に対する深く透徹した洞察を与えることを立証する.併録の論考および訳者解説では本書の知的背景を詳細に説明し,その後の展開も概観する.※この電子書籍は「固定レイアウト型」で作成されており,タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています.また,文字だけを拡大すること,文字列のハイライト,検索,辞書の参照,引用などの機能は使用できません.

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Posted by ブクログ

学生時代に生成文法を学んだ身でありながら、誠に恥ずかしいことに、チョムスキーのこの記念碑的著作を読んだことがなかった。文庫が出たのを好機として読んでみた。

文法の形式的側面の自律性、構造依存性、変形部門の必要性など、言語学の入門書に必ず書いてあるような議論はこの著作で示されたものだったということを知った。
チョムスキーが1975年に書いた文章と、訳者による解説が付されており、生成文法が誕生した時代背景やその後の発展過程をリアルに感じ取ることができる。訳者の福井氏も解説で述べているように、生成文法は当初から、チョムスキーがたった一人で理論を構築したのではない。むしろチョムスキーの学問的貢献は、互いに直接は関連をもたなかった研究関心を統合し、一つの体系としてまとめ上げたところにあったのだった。

現代においては、本編よりもむしろ、付録のほうが読む価値があると思う。

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2016年10月09日

Posted by ブクログ

生成文法と言う言葉も聞き慣れない知識レベルのため、言語学については素人で語れる身では無いが、戦後すぐの時期に数学的に語学の構造や発展の過程を解き明かした学者がいた事に米国の懐の広さを感じた。しかしそれでも20年余り出版されなかった論文があったりなど、革新的な考え方は世に認知される形になるまで時間が掛かる物だと改めて認識させられた。
後半の訳者の丁寧かつ広い知見に基づいた解説文により、言語学の知識が無くとも学問的な変革に対してチョムスキーが果たした役割りや意義が理解できる。

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2025年05月22日

Posted by ブクログ

「言語」とは、人間がある個別言語を話せるというときに、脳内に内蔵している認知システム、さらには、限られた資料(経験)を基にしてそのような認知システムに到ることを可能にする生物学的賦与物(生得的機能)である。
このような言語研究に広く深い影響を与え、しばしば学問上の「革命」と称される生成文法理論の誕生は、本書で告げられたものである。
句構造に基づく直接的な記述の範囲を基本的な文の核(複合的な動詞句や名詞句を含まない,単文かつ平叙文かつ能動文)に限定し,これらの基本的文(精確に言うと,これらの文の基底にある連鎖)から他のあらゆる文を変換(の繰り返しの適用)によって派生させるようにすれば,英語の記述を大いに単純化できる上に,英語の形式的構造に対する斬新で重要な洞察を得ることが出来る。
文法は,3部構成の内部構造をもつと考えられる。文法には,句構造を再構築することが出来る諸法則の列と,形態素の連鎖を音素の連鎖に換える形態音素規則の列がある。この2種類の規則の列を結びつけるものとして変換規則の列があり,変換規則は,句構造を伴う連鎖を形態音素規則が適用できる新たな連鎖に換える。句構造規則と形態音素規則は,変換規則とは異なり初等的であると言える。変換をある連鎖に適用するためには,その連鎖の派生の履歴を知っていなければならないが,変換以外の諸規則を適用するときには,その規則が適用される連鎖の形が判っていれば充分なのである。

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2016年09月21日

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