あらすじ
ドストエフスキー文学の翻訳・研究者として名高い著者の自伝的エッセイ.少年時代に初めて『罪と罰』を読んだ時の衝撃から学生時代の文学サークル体験,ロシア留学時のスパイ容疑事件,プーシキン・メダル授賞式など,自らの人生のエピソードにドストエフスキーの作品世界が重ねあわされながら語られる.(解説=野崎歓)
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Posted by ブクログ
翻訳者でドストエフスキー研究者の亀山郁夫さんのエッセイ。
文学者を志すようになった幼少期〜学生時代の体験、幾度にも渡るドストエフスキーの足跡を追ったロシアへの旅、日本と世界で起こった事件や災害についての体験など、内容が濃いが、魅力的な文章に引き込まれ、一気に読めてしまう。
亀山さんの情熱と優しさに包まれるような読書体験だった。
ずっと読んできて、終盤に、
「文学を愛するとは」
「芸術への限りない愛」
と言うワードに目が止まった。
最近タルコフスキー監督の映画を見たときにも、同じことが自分に突きつけられた(ので、これは著者のメッセージや本の感想というより現在の自分の個人的な心の在りようだが、ここは日記として)。
自分は果たして、本当に文学や芸術を愛しているのだろうか。
これほど本を読み、芸術作品に触れ、その背景を知りたいと歴史的事実から思想、哲学、言語まで学びながら、今思うのは何も掴んではいないということだ。
本著最終章のヨハネの黙示録の引用、
「あなたは、冷たくも熱くもない。むしろ、冷たいか熱いか、どちらかであってほしい。」
は、自分に向けられた言葉だと感じた。
時代のせいにしたいと願いながら、自分の責任は自分だけにあることも知っている。