あらすじ
天国までの道の途中に佇む写真館。ここには、訪れる死者の人生が写真に収められ保管されている。
ここで死者は、人生を振り返りながら、自分が生きた年数だけの写真を選び、自らの手で走馬燈を作るのだ――。
そんな人生最後の振り返りの儀式を手伝うのは、写真館に来るまでの記憶をなくした青年、平坂。
九十二歳の老婆が選んだバスの写真、四十七歳のヤクザが選んだクリスマス・イブの写真、
そして七歳の子どもと笑顔を浮かべる青年の写真。
「たった一日ではありますが、過去に戻って、一枚だけ写真を撮り直すことができます」
と平坂は言い、訪れた死者をそれぞれの過去へと誘う。
記念すべき日のあの時に戻り、思い出の写真を撮り直しながら、彼らは人生の最期に何を想うのか。
そして平坂に訪れる、悲しくも優しい結末とは……。3つの物語が紡ぎ出す、感動のミステリー。
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Posted by ブクログ
「このミス大賞」の文字に ひかれ 読んでみました。
基本 この文字のあるものに 外れはないので。
そして 新しい 作家との 出会いがあるので
読む前は すごく ワクワクします。
今回も 期待を裏切りませんでした。
中間の ネズミ君と ヒーローの一枚 いいですね。
ほかの ところと 関係ないかな。
あったんですね。
皆さんも 気が付かれましたか。
見つけたとき ちょっと うれしくなりました。
Posted by ブクログ
人生が終わった時、自分の年齢の数だけの写真を選び走馬燈を作る事ができる。そして一度だけ、過去の最高の瞬間の写真を撮りに行くことができる…。最初のハツ江さんとミツルのお話が好きだな。平坂さんが一枚しか写真を持ってない理由…。ミツルのお話が一番最初ということか。続編も読んでみたいな。
Posted by ブクログ
読み終えた後、また最初に戻って「ある事」を確認したくなる。あの世とこの世の狭間にある「写真館」。ここでは人生の思い出写真を整理して、走馬燈を作る。それからあの世へ行く。死者を案内する平阪と死者たちとの関わりにも注目。それぞれの思い出が温かくもほろ苦い。過去に戻って何かを修正したり、やり直したりする話じゃなかったのが新鮮だった。思い出のアルバムを見て懐かしむような読後感。「ミツル」はミスリードだった。
Posted by ブクログ
「谷中レトロカメラ店の謎日和」がなかなかよかったので同じ作家さんつながりということで読むことにしました。主人公の平坂は「谷中~」の店主である今宮とも似たところがあある、ほんわか・ほっこりした人物。写真にまつわる仕事という点も共通しています。
ただ、本作はカメラ店ではなく、死者を迎え走馬燈作りを手伝う、加えて人生のある一日に戻りお気に入りの写真を撮りなおす手伝いをするという、いわばあの世とこの世の境目とでもいうべき場所が舞台になっています。
物語の中では3人の死者を迎えるのですが、そのうちの一人はまだ幼い少女で、平坂の授けた知恵によって死を免れることになります。が、その人物こそ第一章の最後に登場する彼女だった…。ゆえに時間的には第三章が一番古いうことになり、第一章とつながりを持たせているという構成で、本作全体が一つの”環”になっているのですね。
『このミス』大賞シリーズとして刊行されているものの、ミステリー的要素は少な目(というかほとんどない)で、物語全体に流れているほっこり感を味わうことができる作品です。あの世へ”おくる”場面を描いたストーリーでありながら、もの悲しさよりもみな、晴れ晴れとして気持ちで旅立ってゆく、そして遺されたひとたちにも前を向いて歩いていく希望がある、そんな雰囲気を感じられる一冊といえるでしょう。