【感想・ネタバレ】プーチンの帝国論 何がロシアを軍事侵攻に駆り立てたのかのレビュー

あらすじ

●ロシア正教と亡命思想家の預言――、惨劇を生み出した決断の真相
ロシアのウクライナ侵略は、なお終わりが見えない。なぜ兄弟民族が殺し合う悲劇が21世紀の現代に起きたのか、何がプーチン大統領を戦争へと駆り立てたのか。本書は、日本経済新聞前モスクワ支局長が、今回の侵略にロシアという国家の姿や歴史が深くかかわっていることを、プーチン体制に決定的な影響を与えたロシア正教の原理主義と20世紀の思想家イワン・イリインに焦点を当てて明らかにする本格的ロシア論。

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プーチンの変節を広範に解明

今まで、プーチンの考え方が、文化・宗教的、経済的、そして国際関係的に時系列で事実を挙げて、変わっていく様を、ここまで精緻に客観性をもって
説明している著書はなかったと思います。ロシアンスクール記者のプライドの詰まった一冊、ロシア、ウクライナに関係する人には必読の書と思いました。

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2025年01月10日

Posted by ブクログ

プーチンの行動の背後にある考え方を理解する一助となった。
「ロシア正教」と「統一ロシア」「ロシア世界」というキーワードとその歴史的背景はあまり認識していなかった。
イワン・イリインというロシアの思想家も知らなかったが、プーチンへの影響も認識できた。
ウクライナ侵攻は容易には収まらない。

【目次】
 序章 専制と正教会と軍
軍事礼拝/軍大聖堂/プーチン氏の軍大聖堂訪問/共犯関係/「息子殺し」のモチーフ/侵攻を支えるロシア正教会/ロシアと正教は「切り離せない」/国民の7割が「正教徒」/正教と保守層/「聖戦」か

 第1章「ひとつの民(たみ)」――ウクライナ侵略への狂信
侵攻の予感/「死ぬまであきらめない」/プーチン論文「ひとつの信仰で結ばれる」/「ひとつの言語」/クリミア併合演説との類似性/「疑似国家」/「レーニンが設計した」/ノボロシア(新ロシア)/「ロシア世界」とは/プーチン氏の基金/「ソ連崩壊はカタストロフィー」/正教で結ばれた文明/保守派の文明論/文明の衝突と保守派/保守強硬派3人衆/プーチン氏の使命/ピョートル大帝をめざす

 第2章 プーチン氏の懴悔(ざんげ)聴聞僧――ロシア正教会の原理主義
「スパイの教会」/正教徒プーチン氏/チーホン師との出会い/聖地アトス山の訪問/「帝国の滅亡。ビザンチンの教訓」/現代ロシアへの教訓/オリガルヒへの嫌悪/ウクライナ問題への示唆/東西教会の分裂に始まる/ロシア正教の倫理観/個人主義への批判/霊性(ドゥホーヴノスチ)/ロシアの集団主義/「第三のローマ」という使命/現代に引き継がれた政治理論/対カトリックの最前線/ロシアの選民意識/スラヴ民族を救う/正教とプーチン政権が見た夢/ウクライナの宗教対立/ウクライナの正教会分裂/クリミアの聖地復活/正教会が預言した戦争

 第3章 ナショナリズムの源泉――亡命思想家イワン・イリイン
ドンスコイ修道院に眠る偉人たち/歴史・思想書を読みふけるプーチン氏/プーチン演説のイリイン/「自立するロシア」/憂国の思想家/共産主義打倒の闘い/ロシアとは何か/多民族国家のロシア/ロシア人は「指導的民族」/境界なき広大な平原/ロシアの使命/反西欧の思考/ルソフォビア(ロシア恐怖症)/ロシアの「敵」/西欧の手先/被害妄想か/「ロシア解体を望む西欧」/ウクライナと反連邦/ウクライナ問題を預言/「ロシア解体」への危機感/世界への破滅的影響/「神の事業」としての戦争/ソ連崩壊後の経済危機/独裁かカオスか/独裁によるロシア再生/ファシズムへの共感/正教を備えた権威主義国家/「統一ロシア」と「ロシア世界」/イリイン思想の伝道師――映画監督ミハルコフ氏/イリインに染まる政権/保守政権の教科書に

 第4章 保守強硬への転換――パヴロフスキー元政治顧問の証言
「リベラルな中道派大統領」/欧州共通の家/「カラー革命」への恐怖/NATOへの不信/プーチン崇拝と「クレムリン宮廷」/ミュンヘン演説、反米への号砲/「多極世界を」/緊迫するNATO東方拡大問題/NATOは約束を破ったのか/拡大を容認したロシア/ウクライナ侵略の脅し/幻想の終わり/「米国好きブルジョア」の反動/プーチン氏が〝切れた〟リビア空爆/親ロシアのセルビア/反プーチン運動/米国の陰謀/ツァーリの涙/反米の旗幟(きし)鮮明に/保守主義宣言/2014年のウクライナ政変/合意破棄に激怒/2022年の軍事侵攻、正教国家の逆襲へ

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