【感想・ネタバレ】翻訳をジェンダーするのレビュー

あらすじ

翻訳小説の女性達は原文以上に「女らしい」言葉で訳されていることがあります。翻訳と社会とわたし達の密接な関係を読みとき、性差別をなくすための翻訳、社会に抗する翻訳の可能性を探る一冊。

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Posted by ブクログ

ジェンダーについて興味があったので読んでみました。とても勉強になりました。
こうして世の中は少しずつ変わっていくのですね。考えたこともなかったことにふれて、自分の中ではまだぼんやりとまとまりませんが、もう少しジェンダー関連の本を読んでみたいと思います。

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2025年11月27日

Posted by ブクログ

第1章では、①翻訳小説の女性と現実の女性、②翻訳小説の中の女性と日本語の小説の中の女性、③女性の翻訳者が訳した女性と男性の翻訳者が訳した女性をそれぞれ比べながら、翻訳の中の女性たちは典型的な女ことばを話し、女性を女らしさの規範に閉じ込めてしまう懸念について論じている。
「わたしたちが気づかない間にじわじわと広がっていくイデオロギーは、わたしたちの意識の及ばないところでとても大きな影響を与えているのです。」(p.17)
「女ことばは女性が実際に使っている言葉ではなく、社会が考える女らしさの象徴だからです。翻訳された女性たちに女ことばを使わせるということは、女性たちを社会が考える女らしさという枠に押し込めることになります。そして、一人一人の個性を「見えない化」してしまうのです。」(p.115)

第2章では、1970年代にアメリカで女性たちによって発行された「Our Bodies, Ourselves」の内容や背景にあるフェミニズムの潮流に触れつつ、日本の女性たちがそれを翻訳する過程でどのような課題に向き合い、社会規範に抵抗したかがわかりわすくまとめられている。
『女のからだ』では、女ことばを使わずに女性を「見える化」したり、女性器名称のネガティブ表現をなくすために工夫したり、ジェンダーニュートラルな職業名を取り入れたりと、その時代(1974年)ではとても画期的な試みがいくつもなされていた。

第3章では、現代でも課題となっているネガティブイメージのない性器の名称が自分の体を肯定したり、性教育を行う上でいかに重要か、また「彼」「彼女」のほかのインクルーシブな代名詞についてなど、興味のある内容が取り上げられていた。これらは現在の日本では定着した言葉がないために、その存在が無かったことにされてしまったり、翻訳する上で困ってしまう。
日本語以外で少しずつインクルーシブな代名詞が取り入れられていることは知っていたけど、それらの言語でも新しい代名詞を作り定着させることは難しく、それらの単語が必要だと声を上げ続ける人の存在によってやっと市民権を得てきたことがわかった。日本語ではどんな単語が作れるか、自分でも考えてみたいと思う。

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2024年10月08日

Posted by ブクログ

翻訳される時の言葉がジェンダーの影響を受けていることがよくわかりました。言葉はジェンダーに影響を受けるけれど、言葉がジェンダーを意識させジェンダーに影響していることもあるのだと教えられました。興味深いです。言葉の大切さを改めて感じました。

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2025年02月24日

Posted by ブクログ

あまりにも多くの方々が、社会が考える『規範』に縛られてきたことか。本書は今までの霞んだ景色をクリアなものにしてくれる良いチャンスとなった。

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2024年12月08日

Posted by ブクログ

「翻訳ヒロインのことば」、
しっとりの秘密、しっとりますか~?

 そこには、ジェンダーが関わっているんですって!
ジェンダーは、社会的・文化的につくられる「男らしさ」「女らしさ」を意味する概念ですね。

 例えば、日本語の会話文の文末詞。
① とても女らしい文末詞には、
 「わ」「わね」「わよ」「わよね」「だわ」
 「なの」「なのよ」「かしら」などがあり、
② まあまあ女らしい文末詞
 「かわいい などのイ形容詞」「待ってね などに付く「ね」」
 「でしょ」などがあるそうです。

 そして、翻訳の中では、もっとも典型的な女ことばが用いられ、実際に女性が使っていることばよりも強調されてきたそうです。
 なので、「翻訳小説や映画のヒロイン」は、女らしい、しっとりしたセリフを話しているのですね(しっとりの秘密)。

 女ことばは、女性であることを明確に示しますが、個人としての特性、つまり個性を見えなくしてしまいます。
 そこで、しだいに、一律の女らしさから、それぞれの個性を尊重する翻訳へと変化しているそうです。何も言われなければ、それが自然だと思わされてきた女ことばも、変わっていこうとしているのですね。

      翻訳は社会を映す鏡

 新訳される外国の小説がこれからどう変化していくか、楽しみです♪
 これからは、しっとり、カラッと かな w

※この本は、「ちくまプリマー新書」。中高生、いわゆるヤングアダルトを対象とした本です。未来を拓いていく若い人たちに本書のような論点を考えてもらうことは大切ですね。

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2024年12月02日

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