あらすじ
<第30回坪田譲治文学賞を受賞した名作『クリオネのしっぽ』続編がついに刊行! この本からでも楽しめます>
中二の唯は、六歳下の弟のヒロと、介護士の母と三人暮らし。
仕事で忙しい母の代わりをつとめ、体の弱い弟のために毎日家事をこなしている。
おしゃべりや主張することが苦手な唯にとっては、弟のことを思いやりながら過ごす毎日や、友人の美羽と好きな本について語り合うゆったりとした時間が何より大切だった。
そんなある日、弟のヒロが一人で亡き父の実家へ行くと言う。
ヒロがいなくなった家で、自分の中身が空っぽだと自覚する唯のところへ、クラスのトラブルメーカー・サッチがやってきて……。
一人の少女の豊かな内面を鋭い視点で切り取った、自立の物語。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
『クリオネのしっぽ』の続き。前の話では大人しくて芯が強いという印象だった唯の視点で語られる。母子家庭で家事をこなし、弟の面倒も見なくてはならない、いわゆるヤングケアラーとしての問題を抱えている。(そういえば前作での美羽も、精神的な母親の心配をするという意味でヤングケアラーだった。)それでも良い姉でいることで安定を得ていたが、サッチによって変化を迫られる。サッチというキャラクターは危ういけど、つくづく面白い。大雑把なところと細かいところがないまぜになっている。本作が遺作ということで、彼女たちの今後について語られることがないのは、ちょっと残念だけど、『クリオネのしっぽ』で、なんとなく放り出されていた結末が、それなりに形をとってくれた気がする。
Posted by ブクログ
唯と自分の頭の中の声が同じで、自分のための物語かと錯覚した。
好きなこと、やりたいことが見つかって、純粋にやりたいって気持ちと同時にやりたいことが見つかったことに安堵するのも、考えたくないこと、中途半端にしてることをキャビネットにしまい込んで時々思い出してしまうのも、本当に共感した。
自分が高校生の時のことを少し思い出したよ。
自分の生きる目的を他人に委ねず、軸をもつというのは難しいことだと思う。
唯は特に軸を他人に合わせていたし、誰かと一緒じゃないと何も楽しむことができないという描写もあった。
最後のイルカの話はその時と対照的で、誰かと一緒にいることよりも、自分の好きなことをして、そこに誰かいてくれたらもっといい、という考えを感じた。
あくまで私の感想ですが。
表現が本当に素敵でまた何回も読みたいと思えるお話だった。
Posted by ブクログ
離婚、ひとり親の家庭は増加傾向と聞くし私の周囲でも多いけど、貧困家庭はいない。慰謝料をもらっていなくても、シングルファザーもシングルマザーも、定職で収入を得て、塾や習い事に子供を通わせ、当人も趣味や旅行をしている。平均年収だけどシングルだから親も受けれる医療費無料とかの補助は使っているようだが。だから、この物語の各子どもたちの生活に、リアル感を私は持てなかった。