あらすじ
《 NHK BSスペシャル「FIND MY LIFE ──戦後78年目のGIベビーたち──」出演 》
「一人ぼっちで生きてきた。」──私を産み、そして捨てたお母さんに一目会いたい。
〈 歴史に翻弄された女性のルーツと家族をさぐる渾身のノンフィクション 〉
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新宿三丁目の小さな飲み屋。
一目で白人とのハーフであることがわかる女性「ベルさん」が、身の上話をする。
ベルさんは戦後間もなく生まれ孤児院で育ち、ストリッパーとして全国を回り、その後はホテルの清掃員など様々な仕事についた。
いま、「迎えに来る」と言ったのに現れなかった母に、会いたい思いが募る──。
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作家・岡部えつは「ベルさん」の生きてきた足跡をたどり、消えた母親の調査に乗り出す。
その旅は意外な展開を見せ、横浜、北海道、そしてアメリカへとつながり……。
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【目次】
第一章……記憶
第二章……調査・二〇二二年
第三章……母
第四章……猜疑心
第五章……家族
あとがき
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
米兵と日本人女性の間に生まれた堤麗子でもあり、アネッタでもあるベルさん。見知らぬ父に大した未練はないけれど、幼い頃のたった数度の短い母との邂逅が心に残っていて70代にして母を探すのに、文筆家でもある著者がつき合う。
ベルさんはもの覚えが悪かったりすぐ怒り出したりするんだけど、それも幼い頃の愛着障害からくるものとの見立て。どれだけ不安定な気持ちを抱えながら独りで長い歳月を生きてきたのだろう。どん底まで堕ちてしまいそうな境遇なのに、それでもストリッパーをやめた後は掃除婦としてほそぼそと生計を立て、50代にして夜間中学に通ったりと、彼女なりに一生懸命に、真っ当に生きてこようとしたことがわかる。でも、満たされない子ども時代が影響してかの振る舞いが損する人生を強いてきたのだろう。
最終的に母はもう亡くなっていたんだけど、その足跡をたどることができ、異父弟妹とも会うことができて、まあよかった。でも何ともいえない苦さが残る。
ベルさんと著者の母親探しに途中からテレビのドキュメンタリー取材がかかわってくるんだけど、この輩がけっこうやってくれる。もともとその番組を見て、この本ができることも知ったんだけど、その背景でこんなにベルさんと著者が翻弄されていたとは。書中ではどこのテレビ局ともいってないんだけど、1回だけ「NHK」と出てくるのを見つけた。著者のささやかな復讐かもね。
Posted by ブクログ
戦後間もなく生まれたベルさんは、孤児院で育ち、ストリッパーとして全国を回り、その後はホテルの清掃員など様々な仕事についた。
GIベビーのベルさんは、ずっと一人で生きてきた。
小学生の頃に一度会いに来てくれたお母さんは、「お利口さんにしてたら迎えてに来るよ」と言ったまま、いつまで待っても来なかった。
お母さんはどうしているんだろう。
ずっと、何度も思っていた。
彼女は何度か母親を探そうとしていたが、失敗していた。
これは著者が、ベルさんと親しくなり彼女の記憶を辿って母親探しをするまでの記録である。
彼女のこれまでのことを知るとGIベビーのことについて深く知らなかったことに気づく。
学校で習うわけでもなければ全く何も知らないままだったかもしれない。
ベルさんの幼少期に経験した辛さや傷つけられたことや家族がいないことの寄る辺なさなど想像しきれない。
最終、母親のその後がわかったこと、家族たちとのことを含めてベルさんが「お母さんは、愛されていたんだね」と言ったことが探してよかったんだと…。
Posted by ブクログ
GIベビー、ベルさんの家族捜しの物語。
GIベビーとは現地女性とアメリカ軍兵士との間に生まれた子どものこと。
もちろんベルさんの人生も語られ、そこには戦後日本の姿がうかびあがってくる。
著者・岡部えつ氏は、ベルさんを公私にわたりサポートしながら
家族捜しに奔走する。
読み出したら止まらない面白さ。
ふだん本なんて読まない80代の母が、
我が家に滞在中、読みふけったほどだ。
母曰く「戦後、私のよく知っている時代が出てくるから面白くて」とのこと。
母は生粋・ハマッ子。終戦時は5歳、横浜の記憶も鮮明にあるのだから
もちろんか。
驚いたことは2つ。
アメリカは愛人、恋人関係にある女性がいるGIを
遠隔地に転勤させたということ。
(以前、ファミリーヒストリーで観た草刈正雄さんもこのパターンか)
またGHQは日本の戦災孤児を保護しながらもGIベビーは見捨てたという。
根底には異人種間結婚への嫌悪、つまりは人種差別があったからだそうだ。
もうひとつ。
ベルさんの家族捜しに大きな力を発揮するのがDNA検査。
アメリカはこの種の情報にオープンで、しかるべき手順を踏めば
アクセスできるのだという。
そもそも、多くの人がデータ登録をしていると言うことに驚きだ。
面白かったけれど・・・
買って手元にずっと置きたい本ではないので、★4。