あらすじ
カラー画像200点以上!
誰しも美術作品に感情を揺さぶられたことがあるだろう。
一方で、美術の用いられ方は時代や体制によって異なり、制作当時に見た人々の衝撃は、わたしたちと同じとは限らない。
本書では、すでに忘れられていた人々も含め、多様な芸術家たちの物語を通じてその作品を案内していく。
兵馬俑やノックの彫刻、ジョットやミケランジェロなどのルネッサンスの芸術家、ケーテ・コルヴィッツ、パブロ・ピカソ、フリーダ・カーロなどの先駆者、アイ・ウェイウェイやシリン・ネシャットなどの抵抗としての芸術を創作する現代芸術家、そしてソフォニスバ・アンギッソーラ、ジェイコブ・ローレンスなどの忘れられた芸術家。
一方でニジェール渓谷、ペルー、ラパ・ヌイ、オーストラリアなど各地を訪ね、土地と深く結びついた作品への理解を深めていく。
美術をより近くに感じる10万年の旅に出発しよう。
この躍動感あふれる一冊は、背伸びしたい高校生や退屈している大学生、そして学びを深めたいすべての大人にぴったりだ。マリンズは、芸術と人間の物語に広範で曇りない理解を示している
メーガン・コックス・ガードン
(ウォール・ストリート・ジャーナル書籍欄執筆者)
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Posted by ブクログ
トピックはこれまでの美術史では取り上げられていない作品や人物、地域も多く意欲的。特に女性の作品についての扱いに力が注がれており、無知が啓発される。
各章のタイトルは、その章の一部を表していると割り切った方が良い。例えば8章は「プロパガンダとしての芸術」だが、ここに決してプロパガンダとは言えない源氏物語絵巻が取り上げられたりしているからだ。
同時代というだけで、様々な地域が横断して記述されている箇所が多い。わたしが学生時代、世界史を苦手としていた理由もそこにあり、本書を読むのにかなり根気が必要だった。なぜこうなったのかの考察がなく、事実の羅列が続くのだ。
本書の1番の欠点は説明されている作品に関する図版が少ないことだ。特に現代アートの図版がほぼないのはどういうわけか。また解説を読み解くにはサイズが小さく、拡大図が必要と思われるものが多いが、それもほぼない。ちなみに図版数はゴンブリッチの『美術の物語』の半分ぐらい。画像のサイズは電子書籍版では比較的大きく扱われていたから紙の出版の限界でもある。
いろいろ書いてしまったが、以下のメモにあるような作家と作品に出会うきっかけを作ってくれたことは心から感謝したい。
〈メモ〉
ソフォニスバ・アンギッソーラ<カニに手を挟まれて泣く子ども>1554年頃
プラウティッラ・ネッリ<最後の晩餐)1550年代
アルテミジア・ジェンティレスキ<ホロフェルネスの首を斬るユディト)1612~1613年
エリザベッタ・シラーニ <太腿を傷つけるポルキア>1664年
マリー゠ギユミーヌ・ブノワ<マドレーヌの肖像>
1799年
ハリエット・ホズマー <ゼノビア>1859年
エリザベス・フォーブス<ザントフォールトの漁師の娘>1884年ニューリン派
ケーテ・コルヴィッツ(死せる子を抱く母)1903年
エリザベス・キャトレット(わたしは世界に向けて歌う)「黒人女性」シリーズより1946〜1977年