あらすじ
〈画面越しで虚空に向かって初めてメッセージを送り、短い小休止のあとに、見ず知らずの人から返事を受けたときは、わくわくした。黒いガラスにただ単色の文字が見えただけだったが……(本書第2章より)〉テクノロジーと自由を誰よりも愛したサイバーリバタリアンのジョン・バーロウ、人々の信頼を裏切る中央当局を排除するために仮想通貨Bitcoinを世に放ったサトシ・ナカモト、完全な自由市場のはずが「ソ連2.0」へ傾くUberの創設者トラビス・カラニックとギャレット・キャンプ、宇宙にまで手をのばすAmazonの皇帝ジェフ・ベゾス……。これらデジタルプラットフォーム君主たちの野望や、栄光と蹉跌の経済学的メカニズム、そして彼らに抗った人々を、生い立ち・思想・行動の面から、ストーリーとデータで描く。デジタルテクノロジーを駆使する彼らが直面する、中世ヨーロッパやソ連の人々と共通の課題とは?自由のためのプロジェクトが不自由をもたらすのはなぜか、君主への反乱の成否は何が決めるのか、デジタル帝国が強大な力を握ることの問題はなにか……。サイバーリバタリアンの理想が生んだ「雲の上の帝国」と、地上の国家の比較から、私たちがコントロールを取り戻す道筋を引きだす希望の書。プラットフォームも、国家も、重要なのは「制度」だ!
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
これはすごく良い本。骨太で読むのに時間がかかったがそれだけの価値のある本。
感想を言えば、IT企業の技術を使えば全ての問題が解決するという風にナイーブに考えていた自分が恥ずかしくなったというもの。
ネット社会の黎明期から、順に有名企業の成り立ちと課題そして彼らのとった解決策とその解決策が彼ら自身が目指していた理想といかに乖離してしまったかが分かりやすく論じてある。この本を読むと、中世から現代に向かって「国家」のような様々な仕組みが必要になったのと同じ事が、IT 企業でも起きているということがよくわかる。社会学、経済学、政治学といったいわゆる「文系」学問の大事さを再認識した。
以下、最終章から引用。ネタバレかもしれませんのでご注意下さい
実際のところ、彼らの試みが失敗に終わったのは、たとえインターネット上であっても、技術者は全能ではなかったからだ。そこでは彼らのコントロールを超えた社会的、経済的な力がはたらいており、その力こそが、それぞれの制度がうまく機能するかどうかを左右するのである。
非公式で、分散化され、非強制的で大規模な社会秩序を実現するというバーロウ主義者の考えは、故意ではないにせよ、人間が持っている難儀な本質に屈したのだ。理想として掲げたものは、悪人によってというよりも、その純粋さによって裏切られたのだ。
したがって、いわゆるテック企業の多くが今用いているのは、ある意味、従来型の政治術にすぎない。シリコンバレーの技術者は、国家がすでに経験した多くのことをトライアルアンドエラーによって再発見しているという意味で、経済を再発明しただけだと言える。
その逆もまたしかりだ。国家が伝統的にやっていることというのは、ある意味、単なるテクノロジーである。世界で最初のデータベースは、古代メソポタミアの帝国における税と行政に関する記録だった。 古代帝国もまた、地図、郵便網、そろばん、数学的アルゴリズム、そして所有地を管理するための暗号を開発した。近年でも、国家がコンピューターやインターネット、全地球測位システム(GPS)の開発を推進している。国を治める術のほとんどは、情報処理やコミュニケーションが別の形式に置き換わったものであり、それゆえ、情報やコミュニケーション技術がつねにその根幹であることは変わらない
Posted by ブクログ
まだ子どもの頃、インターネットに抱いていた幻想を思い出しながら読んでいた。自由で誰でも世界中と繋がれて素晴らしい世界を作るんだというイメージがあった。今のインターネットにはプラットフォーマーがいて、それらがどのようにして現在に至るのかを知ることができた。
Posted by ブクログ
章ごとにテーマや取り上げるテック企業が小気味よく配列されていて、進行中も読後の記憶の足がかりとしても助かった。
テクノロジーの進歩史として、日本や海外それぞれの過程を取り上げたビジネス書的なものも楽しめるが、それらが独占的地位を占めていく過程で生まれるデジタル農奴といった問題に切り込んでいくさまは、かつてのインターネット黎明期の主張や、起業家の高邁なアナーキスト的志向とは相反して、実態として興味深いが「消費者」として果たしてどう向き合っていくべきか。
Posted by ブクログ
巨大テック企業はいまや国家を超える規模になった。これらの企業は立ち上げた時点では自由を標榜し、中央集権体制や既得権力層を嫌っていたはずなのに、いまや規約という法律、国境を越えた独占と囲い込みで、自らが独占的権力者となっている。
巨大テック企業を立法・行政・司法の観点で見たときに、経済の自由に任せた結果から三権分立が機能しておらず、立法と行政が重複して司法は機能していないとする視点が興味深い。
Posted by ブクログ
人間のやることは技術が発展しても変わらないのか?
AIか発達しても同じことが繰り返されるのか?
技術がとことん発展すると変わるのか?
考えさせられる
Posted by ブクログ
薦められて読み始めたが、読み終わるまですごく時間がかかった…途中で何度も寝落ち。
こういう本を読み慣れてないからだと思う。ちゃんと読めるようになりたい…
Posted by ブクログ
入念な調査に基づいて展開された解説であった。クラウドというフロンティアで、今はプラットフォーム企業が皇帝のように支配している段階なんだと理解した。デジタル世界に自由を夢見た人もいたけれど、人間の社会としては、本質的にリアル世界と変わらないというのも面白い。中流階級がまとまって交渉力を持つようになれば、デジタル世界も民主化されていくのだろうか。。
Posted by ブクログ
今や巨大プラットフォーム企業は国家を超えた存在となった。
ユーザーの莫大なリソースや情報を抱え込みながら、
サービス利用料という税金を徴収し、利用規約という法律を作り、
国家予算を越えるほどの収益を生み出している。
こういうの、どーかとおもいますけどねーーー!!!
というお話。
実質現代の経済を支配する巨大プラットフォーム企業たち。
彼らは選挙なく選ばれた、領土なき国家の皇帝だ。
自分たちは仕組みを整備する配管工をやっているつもりかもしれないが、
その実、政治家となっている。
開かれた市場を目指し、
ユーザーによるユーザーのための居場所を作るため、
権力や既得権益を打破しようと生み出されたはずの、
様々なオンラインプラットフォームたちはいつの間にか、
自らが忌み嫌っていたはずの権力そのものになってしまった。
この問題に気づいた者たちは、
なんとか理想に立ち返ろうと様々なシステムの導入を試みたが、
極めて良心的な思想を持ったオーナーを持ってしても、
いまだ理想とは程遠い状態になっている。
どんなサービスも必ずその道を辿ってしまう。
結局のところそれは、新しい支配構造を生んだだけだった。
あるいはここで必要なシステムとは、現代的な制度に基づくものではないかも知れない。
彼らが皇帝なら、今のオンラインプラットフォームを取り巻く状況は中世の社会と同じだ。
皇帝による君主政治に対し、
市民革命を経て共和政に移行し、議会による民主政治が行われるようになったのが
人類の歴史で、それが現代の政治制度に繋がっていく。
つまりまず、立法と行政を分ける必要があるのだ。
それをひとつの企業が同時に行使していることに問題の根幹がある。
必要なのは、権力を分散し、互いに監視、牽制しあう政治システムだ。
我々は歴史上様々な痛みを経験しながら、何度も間違え、そのつど立て直し、
ようやくこの社会制度を生み出してきたのではないか。
「プラットフォームの経済的制度はかなり現代的かもしれないが、政治的制度に関しては、暗黒時代のままだ。このため、プラットフォームは、公平性や尊厳よりも私利私欲を優先させる安価な制度枠組みを用いて、国家の諸制度と競争できてしまう」
第12章 / p295
現状は、プラットフォーム上のサービスを利用して生計を立てる者が現れる一方で、
彼らの生殺与奪権はプラットフォーマー側が握っており、
なんら説明することなく、急な制度変更や、値上げを行うことができる。
たとえそれにより生活が立ち行かなくなる人が現れ、命の危険にさらされても、
プラットフォーマー側は考慮しない。
福祉の概念が存在しない暗黒社会のようなものだ。
と。
これらを裏付ける事例が、
プラットフォーム事例と歴史事例から見出せる共通の構造として様々引用されていきます。
まあまあボリュームあるので読むの大変だけど、
付箋はいっぱい貼ることになったな。
あの件も、この件も、全部に先回りして反論が用意されてる周到さ。
もうわかった、わかったから。
うんうん。これもそうだね、あれもそうだね。
んんー!!プラットフォーマー許すまじ!!
という気分になってくる。
おちついて。
自分もデジタル系制作会社に務める身としては、
業務上必要なツールやサービスの値上げに直面することは多々ありまして。
身につまされるなあ。