あらすじ
なぜ、ある者は勝ち、ある者は敗けたのか?
鎌倉時代から室町時代へ。後醍醐天皇、足利尊氏、楠木正成――、彼らは時代の覇権を取らんがため、どう行動し、その何が勝敗を分けたのか。「弱さが強みになる」「非常識が優位に立つ」など、歴史を振り返ると見えてくる「波乱の時代で勝つための方程式」を、傑物たちの生きざまを分析しながら読み解く。初学者でも日本最長の軍記物語『太平記』を理解できる、平易な入門書。
*電子書籍版には収録していない資料図版がございます。あらかじめご了承ください。
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Posted by ブクログ
歴史は現在と過去の間の対話であるという有名な言葉があるとおり、人は現在の問題の解決のヒントを過去に求める。
『いま、私たちは、時代が大きく変わろうとする「あわい」のただ中にいます。(略)価値観が大きく揺らぐ渦中にありながら、あるいは渦中にあるからこそ、私たちは変化の大きさやスピードになかなか気づけません。そんな時代だからこそ、揺れ動く「あわいの時代」に翻弄される人々の姿、強かに生き抜いた人々の姿を、『太平記』に見いだすことが意味を持ってくると思います。』(本書115、116頁)。
それだけではない。太平記を題材に、語り・解説役と質問役に分かれ、「なぜ、楠木正成はそんな戦い方をしたのか。なぜ、足利尊氏はそんなに強くなったのか」などと問答し、語り・解説役と質問役を交替で行うことで、想像力を培い、「未来を見る」能力を育むことができる。(本書152頁)。
メディアやSNSなど誰かにより「見せられた未来」に接することが増え、「未来を見る」能力が退化している現在、太平記に接することは、非常に意味を持っている。
垣根涼介の『極楽征夷大将軍』や松井優征の『逃げ上手の若君』がなぜ今高く評価され、南北朝時代のアクチュアルな意味がわかる良書。