【感想・ネタバレ】NHK「100分de名著」ブックス アリストテレス ニコマコス倫理学 「よく生きる」ための哲学のレビュー

あらすじ

幸せを獲得するためにすべきことが詰まった「実践哲学」の書!

天文学、生物学、詩学、政治学、論理学、形而上学などあらゆる分野の学問の基礎を確立し、「万学の祖」と呼ばれる古代ギリシャの哲学者アリストテレス(前384-前322)。彼が「倫理学」という学問を歴史上初めて体系化した書物が『ニコマコス倫理学』だ。
「倫理学」と訳されているギリシャ語は「人柄に関わる事柄」という意味で、彼が倫理学と呼ぶものは、義務や禁止といったルールを学ぶことではなく、どのような人柄を形成すれば幸福な人生、充実した人生を送ることができるのかを考察することだった。
アリストテレスは、幸福とは人間がもっている固有の能力を発揮することであり、そのためには、外的な幸運を生かすための内的な力である「徳(アレテ―)」を身につける必要があると考えた。その「徳」は一定の行動を繰り返し習慣化することで「性格」となり、身につけることができるという。また、人間同士の相互的な絆のことを「友愛(フィリア)」と呼び、それらを分類・分析することで、幸福になるために必要な友愛とは何かを明らかにすべく、思索を深めていく。
「幸福とは何か」を多角的に考え抜き、それを獲得する方策を説いたのが『ニコマコス倫理学』であり、現代人にとっても大切な「正義」や「欲望」、「生き方」や「友情」などの在り方について、読者がわが身に引き付けて考えるための「実践の書」なのだと、著者はいう。その発展的受容という観点から、特別章を加筆。キリスト教とギリシャ哲学を融合させたトマス・アクィナスの思想に『ニコマコス倫理学』の実践を見る。

【内容】
はじめに 「いかによく生きるか」を考える学問
第1章 倫理学とは何か
第2章 幸福とは何か
第3章 「徳と悪徳」
第4章 友愛とは何か
ブックス特別章 アリストテレスとトマス・アクィナス ~『ニコマコス倫理学』から『神学大全』へ
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おわりに

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Posted by ブクログ

これは読まねばならぬ...と幾度と決意し、その度に通読失敗を重ねてきた「ニコマコス倫理学」。
ついに100分de名著に助けを求めることに...
アリストテレスが著した史上初の体系的な倫理学の本。あらゆるもの・行為は「善」を目指し、そして最終的に収束する「最高善」は「幸福になること」であるいう前提に立ち、その実現に向けた実践を意識した論展開がなされる。

倫理学が扱う範囲を「たいていの場合にあてはまる事柄」と定義しており、これは自然科学が扱う「常にそうあるところのもの」と対比されているのがいい。ひとが「善い」と感じる事柄はひとつではないけども、ある程度の方向には収束するものだというバランスのいい定義だと感じる。この視点だと現代でよく見る倫理観点での白黒論争は倫理学の俎上から外れていることが分かる。

人間に備わる「徳」は生まれつき備わるものではなく、行為の反復により形成されるものである。しかし、いま現在から「徳」を再形成するには、まず既に身についてしまった「徳」を受けいれ、いま、ここからどのように振舞っていくのかを考えることが大切だと説く。当たり前の話ではあるが、立ち止まって一呼吸省みることでいつでもリスタートすることができると背中を押してくれているようでもある。

終盤では他者との関わりである「友愛」について語る。友愛は「善きもの」「有用なもの」「快いもの」が存在し、若い人は主に「快いもの」を追い求める。そして、「年齢が進むと、彼らの快いものが変わってゆく。それゆえ、若い人たちはすぐに友人になり、すぐに友人であることをやめてしまうのである」。この一節により、20代中盤までの人間関係の変遷を思い返され、ものすごく腑に落ちた。そして、それが落ち着いたいまは、求める友愛の種が変わったのだろうと。

解説書から入ってしまった訳だが、 全体として内容は明快で力強く、現代を生きる上でも視界をサッと明るくしてくれるものになっていると感じた。いつかは家に眠る原著をしっかりと通読したいものだ...

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2025年03月23日

Posted by ブクログ

めっちゃ分かりやすい。めっちゃ分かりやすいって事は、多少省略してるんだろうな?と思うけど、とても簡潔で読みやすかった。
ニコマコスを勉強したい学生の最初の一歩として、間違いなく良い本だと思う。100分de名著はマジで外れが無い、学生の目線では。

最後ここまで書いたんだから良いだろみたいなノリで自分の専門領域のアクィナスの話始めたの面白かった。

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2025年06月20日

Posted by ブクログ

万学の祖 アリストテレスの著書「ニコマス倫理学」の入門書。今読んでも全く古くなくて、むしろ今の時代においてさらに輝きを放つ古典中の古典。何度も読んで、その都度新しい発見や気づきを得られる、これが古典を読む醍醐味ですね。

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2025年08月27日

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