あらすじ
蟻の超群がやってくる! 小さな巨人の賢い知恵と驚異の生態
もしアリが小さくなかったら、間違いなく地球の歴史は違っていた!――ヤマザキマリ推薦
「アリとキリギリス」に書かれる働き者で好感度の高いアリのイメージは今や昔、近年では「殺人アリ」として報道されるヒアリをはじめ、外来アリの侵入と繁殖力は日本列島をもかしつつある。電化製品を破壊し、仏壇の供え物は蟻塚になる。生態系をも変えてしまう。働き者から恐るべき害虫へ。身内(巣の仲間)には優しくとも人間を含め他の生物には無慈悲な外来アリは、私たちの生活のすぐそばまで迫ってきているのだ。その世界を支配するアリの生存戦略とは?
外来アリのなかでも1つのコロニー(群、親戚関係)が大陸を超え、世界を股にかけた圧倒的なスケールで知られるアルゼンチンアリの生態・駆除研究で東大総長賞を受賞、化学メーカーでは殺虫剤の研究に従事し、その写真作品で数々の賞も受賞、アリを追いかけて大陸を五大陸を踏破した異色のアリ研究者が描き出す!
◆目次
はじめに 変容するアリへの認識
第1章 BADな外来アリたち
第2章 社会的昆虫としてのアリ その生態と生活史
第3章 アルゼンチンアリの脅威の生態
第4章 アルゼンチンアリ海外見聞録
第5章 脅威のアリとの付き合い方 駆除と共存への道
おわりに
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Posted by ブクログ
昆虫好きな昆虫学者が書いた本なので、素人が読んでもわかりやすくて面白い。
筆者は昆虫が好きで、大学もその道に進んだ。にもかかかわらず、大学院修了後の就職先ではアリ用の殺虫剤の開発をしている。そうか、そういう進路になるのかと思った。
この件についてはあとがきでも触れられており、「自身で自問自答している」と書いてあった。そういえば、さかな君も魚を食べるし知識のお披露目で味もコメントしている(笑)。
それから、この本を読んでいくと、大学の勉強にかかるお金は授業料だけじゃないということがじんわりとわかった。筆者が学生時代から研究や研究補助のために国内外のあちこちに行っていることが想像できる。遠征地や頻度は専門や個人の能力にもよるだろうが、東大クラスになると学業のスケールも違うだろうと思った。
授業料以外にかかる持ち出しのお金も半端じゃない!本人は勉強に忙しくてそうそうバイトもできなさそうだし、親は大変だと思った。
筆者の学歴は東大→東大院です。
Posted by ブクログ
特定外来生物のうちでも、あり。
日本に限ったことではないが、長年自然淘汰で形成されてきた生物層に、別のエリアから面倒臭いやつが入ってくると一気に生態系が崩れる可能性がある。
あり。
本書では特に、世界中でむっちゃ問題になってる蟻、アルゼンチンアリについて述べる。
外来のありというとヒアリがパッと浮かぶが、あれはあれで問題としても、アルゼンチンアリは異常な繁殖力によって世界を書き換える。
一匹は小さいのだがとにかく数が多く、在来のアリを駆逐し、他の生物も捕食する。虫のバランスが崩れば植物の安定も犯され、食物連鎖の上に至るまで影響を及ぼす。
何より、家の中にまで大量に入ってくるので、欧米だと害虫はGよりアリの方が上位にあるらしい。
アリって、自分たちでコロニーを作って、他のコロニーの奴らとは仲良くしないんだが、アルゼンチンアリは複数の女王アリの存在とか色々社会性の違うところもあり、コロニーの規模が違う。
なんせ、カリフォルニアからヨーロッパ、日本に至るコロニーが、全部繋がっているという常軌を逸した世界なのだ。
多少駆逐しても、他からわらわらと仲間が集まって来るという、面倒臭い非合法組織の如き存在なのだ。
そんなアリの魅力から人間社会での問題、瀬戸際対策、駆逐の方法まで薄い一冊でまとめるのは大変だったろうが、面白かったです。若干、タイトルに問題ある気はするけど。