あらすじ
■もう、この男しかいない
戦後保守の可能性を一身に宿した政治家の全人生と政治ビジョンとは何か?
全国民必読の一冊、緊急出版!
■「納得と共感の政治」を掲げて石破はどこへ向かうか
はじめに──天命が降りる時
第1章 政治はなぜ国民の信頼を失ったのか
第2章 田中角栄──立ち帰るべき保守リベラルの原点
第3章 わが来歴──政治家以前
第4章 わが来歴──政治家篇
第5章 保守とはリベラルのことである
第6章 わが政策スタンスを語る
第7章 近現代史を学び直す
第8章 政治の信頼をいかに取り戻すのか
■政治はなぜ国民の信頼を失ったのか? 今こそ保守リベラルの原点に立ち帰れ
保守の本質は寛容です。相手の主張に対して寛容性をもって聞く、受け入れる度量を持つ、という態度こそ保守の本質です──。(本書より)
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Posted by ブクログ
石破茂氏といえば、改憲論者で、防衛大臣経験者。(失礼ながら)軍事オタクというイメージぐらいしかなかったが、この本で考えを改めなければならないと思った。
石破氏は自らを「保守リベラル」と位置付ける。保守の思想的源流はエドマンド・バークにあり、その本質は寛容性である。「人間も人間社会も完璧ではない。必ず間違いを犯す可能性がある。だからこそ、自分たちだけが正しいと思わず、常に異論、反論に耳を傾けるべきだ」という。
石橋氏が日本の保守リベラル政治家の範に置くのは、戦前に東洋経済新報社のジャーナリストとして活躍し、のちに社長となり、戦後には総理大臣となった石橋湛山である。そして石橋湛山の「小日本主義」こそ踏襲すべきであるというのである。
「小日本主義」は、戦前の日本の帝国主義的政策に対して、朝鮮・台湾・樺太を領有し、中国・シベリヤを干渉する膨張主義的な「大日本主義」を捨て、英米との貿易をすることの方が経済上の利益、すなわち国益が大きいという主張である。また、ヨーロッパ列強の真似をして植民地を拡大するのではなく、みずから率先して植民地政策を捨て、国際社会に範を示すべきで、そうすれば東洋全体、否、世界の弱小国全体を我が国の道徳的支持者とすることができ、どれだけの利益があるか計り知れない、とも言っている。
石橋氏は日中関係にも触れ、中国の軍事的台頭及び東シナ海、南シナ海における好戦的な姿勢に対しては、一定の軍事的抑止力が必要であるとしつつも、経済的、文化的、社会的な互恵関係を作り、双方にてとって利益となる、ウィン・ウィンの関係を継続させることが必要だと強調する。
そのほかの政策にも多くを語っているが、その中で興味を引いたのは、経済については、大澤真幸氏の分析を、気候変動については、斎藤幸平氏の「脱成長論」を取り挙げている。既存の保守政治家がこの二人の話を虚心坦懐に聞いている姿はほかに見たことがない。
国民の安全には特に力を入れているので、防災省の設置、ミサイル・爆撃に対するシェルターの設置も挙げている。北朝鮮からのミサイル打ち上げでJアラートばかりが鳴っても、シェルターを作るといった話は聞いたことがなかった。これでは何のために警報が鳴っていて、そのとき何をすべきかを示すことはできない。Jアラートが鳴るたびに政府の愚かさを失笑するしかなかったが、ようやく真っ当な政治家がいることに気づいた。