あらすじ
政治の腐敗、経済衰退、教育・医療の崩壊が止まらない現代。しかし私たちの足元には、未来の日本を再生させる可能性が溢れている。一歩立ち止まることで見えてきた「街場の救国論」!
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Posted by ブクログ
様々な媒体で書いた文章がより集まった内田節だらけの本。
2024年の選挙が終わったところであるので、2022年の少し古い選挙の話とのずれもまた興味深い。相変わらずのキレの良い話ばかりなので、気持ちよく読むことができた。
いくつか印象に残ったところ。
論争上手の人が「憲法23条をご存知ですか」とか、「ロシアのGDPを知ってますか」とか、「資本主義の定義ってなんですか」とか、自分が採点する側で相手が受験生であるという非対称的関係のうちに一気に持ち込むための技巧的な問いをする。
(いわゆる「ひろゆき論法」「石丸論法」と言うものだと、入院される直前の講演会で内田さんが話していた。感じが悪いから真似しないでくださいねと笑っていた)確かに相手をやり込める、イヤな論法である。
こういう話し方を日常ですると友人を失うことになるだろうに、権力を持つ人がこの論法で話すと喝采されるのは何故だろう。
「組織マネジメント原理主義」について。
トップの指示が遅滞なく末端まで視察されるのが最良の組織だと言う思い込みのこと。これもまた今の世の中に蔓延しているイヤな風潮である。
国語教育について。
母語運用能力を高めること。豊かな語彙と響きの良い音韻を駆使できること、カラフルな比喩や味わいの深い、故事成語や刺激的な術語を織り込んで、奥行きのある複雑な信念や感情を表現できるようになること。
相変わらずうまいことおっしゃります。
「複雑な現実は、複雑なまま扱い単純化してはならない。」
これも内田さんがよく語っていることであるが、これについての例え話がよくできている。
ギリシャ神話にプロクルステスと言う盗賊が出てくる。彼は、街道沿いで待ち構えて、通りがかりの旅人に彼の寝台で休息するように声をかける。そして寝台で寝かせて、旅人の体が寝台からはみ出したら、そこを切断し、逆に寝台の長さに足りなかったら、体を無理矢理、寝台の長さまで引き伸ばした。
話を簡単にする方法の中で、最も簡単なのは問題を消すことである。問題があるのにそこには問題などないと言い立てる。ナチスがユダヤ人問題の最終的解決は、「ユダヤ人を消すことだ」というアイディア思いついたこと。陰謀論で社会的不調が起きると、「それは邪悪でかつ強大なものの悪意の干渉」として説明される。
内田さんの病気の快癒を願うばかりだ。
Posted by ブクログ
ちょっと前にはたくさん読んでいたので久しぶりに大垣書店で見かけて購入。最初の章は時事ネタで、そこは苦手なんだけど、教育とか、レヴィナスについてとかはやっぱりいいなあと思う。短いというメディアの特質もうまく作用しているように思った。
Posted by ブクログ
「資本主義が滅びるのが先か、人類が滅びるのが先か」「経済も教育も国際社会での地位を失い、泥舟になってしまった日本」「もう一度“共有地”“コモン”を創り出す」毎回、金太郎飴のような繰り返し。でも手を替え品を替えて繰り返さないと、ますます転がり落ちていくばかり…。
Posted by ブクログ
ロシアは常に被害者の劣等感と大国の優越感の葛藤のうちにある。中国は中華皇帝による独裁と群雄割拠の内戦状況のどちらかしか知らない。米国は建国以来市民的自由と公権力による社会的統制いずれを優先させるを巡って分裂し続けてきた。三国とも固有の葛藤を抱えてきた国である。そして、その葛藤をまっすぐに受け止め、折り合いのつかないものをなんとか折り合わせて複雑な統治システムを創り出した時期には国力が向上し、どちらかに針が振り切れてシステムが暴走し始めた時期に衰運局面に入る。