【感想・ネタバレ】江戸酒おとこ 小次郎酒造録のレビュー

あらすじ

灘の酒蔵から、訳あって江戸の酒蔵・山屋に修業に出された小次郎は、着いて早々に意気投合した浪人・龍之介とともに働きはじめる。ところが山屋は不注意から酒を腐らせてしまい、杜氏や蔵人たちが離反、江戸っ子からの信用も失った。再建を託された小次郎は、龍之介とともに新たな仲間を探し、斬新な酒造りで乾坤一擲の大勝負に挑む! 時同じくして、生き別れた妻が江戸にいることを知った龍之介は……。文庫書き下ろし。

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Posted by ブクログ

 江戸一番の地物の酒を造ろうと奮起する蔵人たちの粋な時代小説です。

 主人公は灘の酒蔵で育った次男坊。父親を亡くし、姉と入り婿の夫婦に代替わりしたところで厄介払いのように江戸の叔父の酒蔵である『山屋』の立て直しを命じられる。江戸へ下ってきてみれば、上物として飲まれているのは灘物ばかり。江戸酒は水割り酒で飲まれてばかりと知って、本当に美味い江戸の酒を造ろうと心に決めた彼は、ひょんなことから知り合った浪人の龍之介らとともに山屋で働き始めるのだが、その矢先、仕込み中の酒が全て腐る火落ちが起きてしまう。杜氏も蔵人も離反が相次ぎ、万事休すの山屋は心機一転、酒造りの仲間集めから再起を図るのだが。

 日本酒が飲みたくなるお話でした。江戸の人のための江戸酒作り。とても楽しく読めました。
 現代で普通に使われる『くだらない』の語源を初めて聞いたような気がします。今は東京には『上京』するものという感覚ですが、江戸の当時は江戸には『くだる』ものだったんですね。京都が上方で、灘で作られた酒が江戸に船で下っていく。情景描写が細かく、私も一緒に江戸の町で町人の方々の姿を見ているようでした。ライトな読み口でしたが内容はきちんと重みがあってよかったです。
 私はあまり焼酎が得意でなく、美味しいと思って飲んだこともないのですが、この話を読んで美味しい日本酒を飲みたいと思いました。いつか米焼酎にチャレンジしてみたいです。
 このお話の中では描かれない登場人物たちのその後のお話も色々とありました。龍之介と生き別れた元奥さんのその後や、小次郎の淡い恋の行く末などもそうですが、想像の余地がある終わりになっているのも余韻があっていいと思います。

 江戸の気っ風と酒のいい香りを感じる、味のある酒蔵再起のお話でした。

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2026年09月04日

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