あらすじ
高校生の大谷三球は新しい趣味を探しに訪れた図書館で、
ひときわ目立つ服装をした女の子、涼風救と出会う。
三球は救が短歌が得意だということを知り弟子として詩を教えてもらうことに。
「三十一文字だけあればいいか?」
「許します。ただし十万文字分の想いがそこに込められてるなら」
日々成長し隠された想いを吐露する三球に救は好意を抱きはじめ、
三球の詩に応えるかのように短歌に想いを込め距離を縮めていく。
「スクイは照れ屋さんな先輩もちゃんと受け止めますから」
三十一文字をきっかけに紡がれる、恋に憧れる少女との甘い青春を綴った恋物語。
※電子版は紙書籍版と一部異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください
感情タグBEST3
ラブコメ&短歌入門の最適解
短歌を通して成長していくキャラクター達が素敵。細やかな情景描写がとにかく美しく、心が動かされるシーンが多々あった。短歌というユニークなテーマのもと、現在のコミュニケーションのあり方、相手に自分の心を伝える難しさについても考えさせられる。
短歌に興味がある人、うまく自分を表現したい人、高品質の青春ラブコメを摂取したい人なんかにおすすめ。
Posted by ブクログ
著者初読。KU。
畑野ライ麦氏の『恋する少女にささやく愛は、みそひともじだけあればいい』は、言葉という不確かでありながらも強靭な手段を通じて、人の心が通い合う瞬間の尊さを描いた秀作である。短歌という限られた器に感情を託す登場人物たちの姿には、若さゆえの不器用さと真摯さが交錯し、その葛藤が読む者の胸に静かに沁み入ってくる。
恋愛を描く物語は多いが、本作は「言葉の重み」を主軸に置いている点が印象的だ。言い過ぎても届かず、言わなければ伝わらない──そんな微妙な距離感が、短歌という形式を通して見事に表現されている。加えて、登場人物たちの心の機微が丁寧に紡がれており、思春期の揺れる感情を追体験するような読後感がある。
終盤には賛否を呼ぶ展開もあるが、それもまた物語に奥行きを与えている。静かで、しかし確かに熱を帯びた恋のかたちが、そこにはあった。