【感想・ネタバレ】ヤマケイ文庫 41人の嵐 台風10号と両俣小屋全登山者生還の一記録のレビュー

あらすじ

1982年8月1日、南アルプスの両俣小屋を襲った台風10号。
この日、山小屋には41人の登山者がいた。
前日から降り続けた雨は強くなる一方で、小屋番は不安に駆り立てられる。
テントサイトの登山者を小屋に避難させるも、夜半に濁流が小屋の目前にまで迫ってきた。
「しまった! しまった! しまった!」。

激しい後悔の念を抱きながら、小屋番は即座に避難開始を指示。風雨激しい23時3分、着の身着のままで裏山への避難を開始する。
まだのんびりしていた登山者たちも小屋の中に穴が開くにいたって、自分たちが追いつめられたことを知り、あわてて駆け出して行った。
這う這うの体で裏山へ避難するも、冷たい豪雨は容赦なく体温をうばっていく。
長い夜を経て、小屋に戻り、ささやかな休憩をとることができたが、なおも豪雨は両俣小屋に襲い掛かり……。

台風による気象遭難の惨劇というノンフィクションであるのみならず、若き小屋番の逡巡と決断、大学生たちの勇気と団結力など、登山者のヒューマンドキュメンタリーとしても秀逸な作品。


■内容
一 穏やかな日々
二 両俣小屋へ
三 九州地方の集中豪雨の頃
四 台風前の晴れた日に
五 一九八二年八月一日
六 長い夜
七 夜明けの恐怖
八 優しい光を浴びて
九 テントの十六人の行くえ
十 ささやかな晩さん
十一 第二の試練
十二 四パーティは一パーティ
登山者たちの手記

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

41人が立ち向かった台風10号とその後の鉄砲水。自然を前に人間の力は決して強くはないかもしれないが、支え合い、協力することで大きな困難も乗り越えられることを感じられる。
展開も早く、一気に読み終えました。

0
2025年04月20日

Posted by ブクログ

1982年の台風10号。南アルプスの北岳の両俣小屋。未曾有の豪雨に取り残された小屋番、登山客41名。増水する渓流に小屋が浸水する中、脱出し生還するまでを描いた感動作。

0
2024年12月09日

Posted by ブクログ

もう圧倒的。1982年に南アルプス標高2000m地点にある両俣小屋を襲った台風の中を生き抜いた小屋番と若きワンゲル部大学生を中心とした人々の壮絶なサバイバル記録。

いやー自然って怖い。著者が自分の事を"私"と表現せず、"小屋番"と言っているのが語りに客観性を与え、更に読者にもある意味感情移入をしにくく事象を正確に捉えようとする冷静な者の視点を与える。

極限な状態でのリーダーとしての決断、体力、責任感を学べる。そして小屋番の覚悟を追体験出来る。読んでる最中ずっと小屋番と学生達を応援したくなる。超オススメ。

帯にも引用されている以下の言葉がすべてを物語っている。

「必死になれ、必死になれ、緊張を持続してくれ。もうだめだと思うな。昔の人たちだってこういう目に遭ってきている。それを乗り越えてきている。われらにだってできぬことはない。」

0
2024年11月17日

Posted by ブクログ

昨年、他の本で絶賛されていて興味をもち、
ようやく高幡不動にあるカフェまで行って購入しました。復刻版がでたのですね。納得です。

あんな深いところまで行ったこともないし
これから行くこともないであろう場所の
地形がリアルに思い浮かび
一気に読んでしまった。
ワンゲルに在籍し活動していた時代の
独特な空気感が本当によくでていた。
恐ろしい災害に直面するなかで
それぞれのとる行動が本当に細かく
描かれていて、引き込まれる。
読みながら聡明な判断を下す男子学生には憧れに近い気持ちが湧くし、追い詰められる小屋番さんには寄り添いたいたくなる。

手放したくない本です。

0
2024年08月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

新人の小屋番だった星さんが、迷いながらも冷静に判断し、登山者たちと協力して全員を無事に生還させたのは本当に見事だった。経験したことのない規模の水害の中で、恐怖を抱えながらも行動できた精神力には圧倒された。登山者たちの勇気や団結力も素晴らしく、生き延びるために全員が持てる力を尽くしたことが伝わってきた

0
2025年10月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

現地に行かないと手に入れられないと思っていた本が普通に手に入った。

1982年の話で、文明の利器的に今とは少し状況が違うけれど、質の高い実録ということでとても貴重な本だと思う。

払ってもいい金額:1,000円
貼った付箋の数:0

0
2025年07月20日

Posted by ブクログ

手あかにまみれ、雨に打たれ、しわをつくり、見にくくなったこの地図は何を語ってくれるのだろう。

---
小屋番役立たずすぎだろ!
2年目とは言え、プロなんだからさぁ…。パニクったら人間こんなもん、ってのがリアルなのかな。でもそうならない為に事前にシステム構築するのがプロなのでは、、、モヤモヤ、、
、数多の至らなさをご本人が包み隠さず吐き出す話なんだろけどさ。

愛知学院大めっちゃいいヤツ……!
頑張り屋さんの三重短大も、控えめだけど頼りになる新潟大も、屈強な同志社大も、要領のいい東北薬科大も、九州の社会人パーティーもみんなすっき!!!
パーティーの力って凄いなぁと。思い遣り大事。

結局何事も、信じるべきは自分の判断なんだな。
冒頭で「行くな」って予言めいたこと言ってたオッちゃんの判断すげぇ。

0
2025年06月05日

Posted by ブクログ

台風の直撃、嵐の中でビバーク、山小屋に戻ったものの、再度別の小屋に向かう。疲労困憊した41人が亡くなる事なく生還したのは奇跡。生半可な気持で登山してはいけないと強く思う。そしてこういうとき人の本性は現れるのだな。

0
2025年05月20日

Posted by ブクログ

昭和57年。南アルプスにある山小屋を台風が襲い、山小屋崩壊の危機に陥る。そこから脱出し、安全な山荘まで嵐の中、尾根を歩き続けた若者たちの記録である。作者が山小屋の小屋番で、実際に遭難・避難しているだけに、臨場感が凄い。最後無事辿り着いたシーンは感動した。

0
2025年05月13日

Posted by ブクログ

すごい生々しい記述で、読みながら自分もその時にいるかのような追体験。取材力がすごい著者なんだろうなと思ったらまさかのご本人でした。そりゃあ生々しい文章になるわけだ。

自然の脅威とか人の生命力という文字を目にはするけれども、本当に凄いことなんだな。
とにかく凄い。
タイトルの通りの結果にはなるのだが、そこに至る過程がすごかった。人という存在の力強さ。他人を思いやる時に湧き出す力。素晴らしかった。

0
2024年12月12日

Posted by ブクログ

昭和57年8月、日本列島を襲った台風10号は、南アルプス両俣小屋にも襲いかかった。
両俣小屋には新米管理人と学生山岳部員等41名がいた。

本書はその当事者たちの過ごした嵐の中の全記録。
好天だだた山小屋が台風に飲み込まれ、さらに風雨に翻弄された数日間。経験と準備と、訓練、気力、そして運は、41名全員の命を救った。
本書を語ったのは、当事者である管理人。
その一部始終と、戦いの細かな記録、そして管理人が犯したミス(少なくとも本人がそう認識している判断)。
読者はその記憶とミスを犯した悔恨を自らのこととして感じる。

本書のような本が執筆される唯一の理由は、その災害を知り、自らがその立場に置かれた場合にどのように対処するか、学び考えておくこと。
その書かれた理由に報いるため、わたしは本書の状況及び判断を、よく見聞きし、覚え、シミュレーションし、自分がその場に立つ時に備える。
普段、天空の犬シリーズで親しんでいる広河原や両俣山荘。その親しみのある場所で起きた災害の記録を共有しておきたい。

0
2024年10月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

その時代のワンゲル部の空気感とか、山小屋の感じとかが印象深い。死なないって分かってたけど、死にそうな人が何人かいたんだけど無事に歩けて良かった。

0
2024年09月23日

Posted by ブクログ

桂木優『41人の嵐 台風10号と両俣小屋全登山者生還の記録』ヤマケイ文庫。

1984年に自費出版で刊行された『41人の嵐 1982年台風10号の一記録』を底本に文庫あとがき、文庫解説などを加えて再編集。

樋口明雄の『北岳山小屋物語』にも登場した両俣小屋を運営する名物女将、星美智子が桂木優の筆名で描いた巨大台風により被災した山小屋からの脱出と生還を描いたノンフィクションである。

『41人の嵐』の物語は、テレビ番組で再現ドラマ化され、紹介されていたので、おおよその内容は知っていた。

しかし、実際に過酷な体験した当事者の文章は生々しく、当時は如何に危機的状況であったのかがうかがえる。

1982年8月1日、南アルプスの両俣小屋を台風10号が襲う。この日、山小屋とテントサイトには学生たちを中心に41人の登山者がいた。前日から降り続けた雨は強くなる一方で、小屋番の星美智子は不安に駆り立てられる。小屋番はテントサイトの学生登山者たちを小屋に避難させるが、夜半に濁流が山小屋の目前にまで迫ってきた。

油断していた所に見舞われた最悪の状況。小屋番は即座に避難開始を指示。風雨が激しく襲う深夜に、殆ど着の身着のままで裏山への避難を開始する。

何とか裏山に避難するが、冷たい豪雨は容赦なく体温を奪っていった。まんじりともせずに長い夜を経て小屋に戻り、ささやかな休憩をとることができたのだが、台風は過ぎ去ったはずなのに、再び豪雨は両俣小屋に襲い掛かる。

山小屋を何度も襲う鉄砲水に山小屋の2階へも何時、水が来るかという危機的な状況に陥る。果たして……

最近の自然災害は昔よりも被害が大きく、何時何時起きるか全く予想がつかない。まるで、大自然が人間に牙を剥くかのようだ。台風だけでなく、線状降水帯という突然のゲリラ豪雨で、これまで被害の無かった土地でさえ、大きな被害を受けることになる。また、日本国内でも竜巻が当たり前になって来ている。夏の異常な暑さによる熱中症、冬の大豪雪や猛吹雪で幹線道路で立ち往生というニュースも良く目にするようになった。

我々は何時起きても不思議ではない自然災害に日常的に備えておく必要がありそうだ。

定価1,210円
★★★★★

0
2024年08月05日

Posted by ブクログ

携帯電話もない時代、電気も通らない山小屋で、巨大嵐に遭遇した41人。
大半が、大学生。
濁流が押し寄せ、山小屋が崩壊の危機に。
その山小屋の、経験乏しい女性小屋番の体験記。

まじで怖い。
本気でやばい。
大自然の恐ろしさ。

のだが、最初から全員生還したとお知らせいただいてるんで、何となく安心して読めた。
多分、素人文章なんで、それ故の生々しさ、臨場感はあるが、存外危機感が伝わらない。
話者の視点がところどころ変わって、そこもまあ、我に返ってしまう感じ。

こういうのって毎度思うが、優れたルポライターが聞き取って書いた方が、面白いんだよなあ。

本当にみんな無事だったのは奇跡に近いと思うし、喜ばしい。

後書きは、何つか、むしろ興を削がれたって感じかな。

0
2024年11月18日

Posted by ブクログ

1982年といえば、ホテルニュージャパンの火災があり、「ロッキー3」や「ET」が公開された年。「笑っていいとも」の放送開始に、CDが発売された年だったりで、
ファミコンが発売される1年前の黎明期だからインドア系のアクティブ派はバンド活動とかしてた時代だけど、先輩は「遊び文化研究会」とゆうサークルで潜伏活動してたから第1世代のオタクがポチポチ認知されてた頃かなw
そんな時代に遊び要素の強いアウトドア系サークルといえばワンゲル部。汗臭そうな山岳部よりも柑橘系デオドラントで、そこそこ富裕層の子女が集う感じがあるのですけどww
これは、作中でてくる愛知学院大学ワンゲル部のイメージなんですけどね。
この作品はそんな時代のハザード系ノンストップ・ノンフィクションです。
40年前と言ったらネットもGPSも無い時代、まして山中の山小屋では情報知りたくてもTVもないしラジオの気象放送頼りに天気図描いてた時代です。

台風10号の接近で山は大荒れになるなか山小屋で立ち往生する学生たち。小屋番2年目の星さんや学生達が奮闘する脱出ものです。
現役小屋番さんの星さんが若いころ、柏木優のペンネームで自費出版した本ですが絶版になり入手困難だったのですが復刻版がでて読むことができました。

0
2024年09月05日

「スポーツ・アウトドア」ランキング