【感想・ネタバレ】ブレグジットの日に少女は死んだのレビュー

あらすじ

英国で話題の疑似ノンフィクション犯罪小説。

2016年6月、EU離脱を問う国民投票が行われた日、ヨークシャーの海辺の寂れた町で、16歳の少女が暴行を受けた上にガソリンをかけられ焼き殺された。犯人は同じ高校に通う16歳と17歳の少女3人だった。
ジャーナリストのカレリは事件の地に居を移して背景を取材し、被害者・加害者の生い立ちから事件に至るまでをまとめたノンフィクションを発表した。しかし、取材を受けた者たちから本の内容に誇張や曲解、捏造があるとの訴えが寄せられ、違法な取材手法も発覚、本は回収に。
凄惨な事件が起きるまでに少女たちに何があったのか、そしてノンフィクションの内容は真実なのか――。
「グランタ誌の選ぶ最優秀若手作家」の一人イライザ・クラークが、T・カポーティ『冷血』にオマージュを捧げた衝撃の疑似ノンフィクション型犯罪小説。ごく普通の少女たちが怪物になるまでをリアルに描き、悲劇すら消費してしまう現代社会を告発したディラン・トーマス賞候補作。

(底本 2024年7月発売作品)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ノンフィクションへの擬態が上手すぎ。
最近流行りのフェイクドキュメンタリーでこのジャンルが翻訳もので多くて嬉しい。
去年のトゥルークライムストーリーと手法は違うけど登場人物たちの陰湿さは同じくらい。胸糞が悪くなることはうけあいです。

1人の少女が暴行され最後には焼き殺された。その犯人は同じ高校の少女3人。1人犯人と間違われた少女、被害者家族、加害者家族へのインタビューに当事者の使っていたSNSの投稿、ポッドキャストからの引用が入り、事件の内と外から真実に見えるよう埋めていく。

人間関係のこじれが大きな原因で、その描写が細かくこっちの胃を締め付けてくるものばかり。
被害者と加害者の立場が入れ替わり立ち替わりして、どちらが悪いと簡単には判断させないようになっているのも心が痛くなる。

実在するかのような地名に建物、その歴史までしっかり描かれ、嘘だとは思えないのが恐ろしい。
犯人の1人が小さな地獄を作るんだと行動しているがこの少女たちの日常こそ地獄に思える。
お化けとか化け物より現実こそが1番恐ろしいものだと証明するような小説。


小説だとフェイクドキュメンタリーで
映画だとモキュメンタリーって呼称するのかな。
このジャンルは嫌な感じを存分に楽しめるからもっと流行ってほしい。

0
2024年07月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ノンフィクション?
フィクション?
と揺さぶりをかけての2次創作笑

ノンフィクションは嘘が書けないので、真実を抽出するにはフィクションの方が適しているのでは?とたまにノンフィクションを読むと思うのですが、逆手に取られた感があります。

0
2024年09月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

・あらすじ
イギリスの架空の田舎町、クロウ•オン•シーが舞台。

海辺の田舎町で16歳の少女が拷問の末ガソリンをかけられ焼殺される事件が起こった。
捕まったのは同じ高校の少女3人。

この事件の当日はブレグジットというイギリスのEU離脱を問う国民投票日であったため殆ど報道されなかった。
ジャーナリストのカレリはこの事件のノンフィクション本を書くために移住。
関係者からインタビューを実施し本を出版した。
しかし出版後に虚偽、捏造、誇張、違法に資料を手に入れていたことが発覚し本は回収されることになった。

・感想
この手の疑似ノンフィクション作品は最近増えてきた。
こういうの好き。
しかし私の苦手な10代の思春期女子のマウントの取り合いが事件の切っ掛けなので中々読み進められなかった……。
思春期女子の不安定さや攻撃性、仲間と思えない人間を排除する事への戸惑いのなさ、集団心理の暴走の怖さとか結構エグい。

ヴァイオレットやドリーの章から二次創作系の話になってきて、共感性羞恥まではいかないけどなんか居た堪れない気持ちになってきたw
nmmnシリアルキラーのファンダムなんてよりアングラなジャンルだし、検索避けとか徹底されてそう。
もちろん本作は擬似ノンフィクション作品なのでクリーカー自体は創作だけど、絶対現実にもその手のジャンル(実在のシリアルキラー同士のカップリング)はあるだろうし。

ドリーが同CP解釈違いのクリーカーとバトルしてるところはよくある光景だな……と思いながら読んでた。
そして居た堪れない気持ちになったりなどした。

本作はこの事件を自分の好き勝手に妄想して、解釈して楽しんで消費してるカレリも同じ穴の狢じゃないかという問題に帰結する。
実際にあった凄惨な事件を「娯楽小説に仕立て上げて、関係者から話を聞いた上で事実上二次創作をした」カレリ。
そしてそれをノンフィクションという体で本として出版した。
かなり悪質だなと思うし、その危険性をメッセージとして込めた作品なんだろう。

この手の擬似ノンフィクション作品は読者側にも「事件を面白おかしく消費することの危険性」とか「被害者を置き去りにする事への警鐘」が含まれるので定期的に読みたい。

0
2024年11月10日

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