あらすじ
本所・松坂町に暮らし、三味線の師匠として活計を立てている岡安久弥。しかしひとたび刀を握れば、鬼神のごとき戦いぶりを見せる一刀流の使い手だ。大名家の庶子として生まれ、市井に身をひそめ孤独に生きてきた久弥だが、ある転機が訪れる。文政の大火の最中、幼子を拾ったのだ。名を持たず、居場所をなくした迷い子との出会いは、久弥の暮らしをすっかり変えていく。思いがけず穏やかで幸せな日々を過ごす久弥だったが、生家に政変が生じ、後嗣争いの渦へと巻き込まれていき――
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Posted by ブクログ
主人公の久弥が、めちゃくちゃいい男なんですよね!
生まれ落ちた境遇から剣の腕はあるけど、それを隠し三味線の師匠としてヒッソリと暮らしてるんですが
人たらしとは、こういう人のことを言うんだと思うんです。
老若男女問わず、まあモテるし、読んでる私も好きになっちゃうほどに、さり気なく優しくて気風がよく凛とした佇まいなんだろうな、と。
実は時代劇好きなので、こういった主人公が出てくると嬉しくなっちゃいます。
そして青馬の存在、健気で自分を助けてくれた久弥を心の底から信頼し、いつしか父と慕うように。
また彼の生まれ育った環境が不遇すぎて辛くて、だけど守るために周りが固まったのは久弥の人柄があってこそ。
もうこれだけで泣けるというのに、もう一人健気な真澄さんという女性まで存在しちゃうし、罪な男です、全く。
なんなら最初はイヤなやつかもと思った血のつながらない兄の存在もグッとくるんです。
涙ながらにしがらみに流され、離ればなれになる愛しき存在達。
その場面は電車の中、マスクをしたまま泣きました。
どうしようもない、そんなことは久弥の境遇を理解していてもやはり辛すぎる。
ただそれらを乗り越えた先で手にした幸福は格別なものがあります。
問題解決から一気に加速していくラスト、そこに訪れる笑顔たちにやっぱり泣いちゃうんですよね。
私、時代劇は好きでも歴史小説は初めて読んだので、最初は難しいかも?と戸惑ったのですが、笹目先生の「独り剣客 山辺久弥 おやこ見習い帖」は本当に読みやすいので、オススメします。
読めて良かったです!!