あらすじ
地球平面説、気候変動否定、コロナ否定、反ワクチン、反GMO、そして陰謀論——
彼らはなぜエビデンス(科学的証拠)から目を背け、荒唐無稽な物語を信じてしまうのか?
その謎をさぐるべく、神出鬼没の科学哲学者は陰謀論者の国際会議に潜入し、炭鉱労働者と夕食を囲み、モルディブの海をダイビングする……。
はたして科学否定論者は何を考えているのか?
知りたくない事実に耳をふさぐ人たちに、どうやったら事実を受け入れてもらえるのか?
本書では、科学否定論者に共通する5つの特徴を通じて、地球平面説(フラットアース)、気候変動否定、反GMOなどの行動原理を分析。最新科学の成果も交えて、エビデンスを嫌う人たちの考え方、説得の方法を考える。
《科学否定論者に共通する5つの特徴》
1 証拠のチェリーピッキング
2 陰謀論への傾倒
3 偽物の専門家への依存
4 非論理的な推論
5 科学への現実離れした期待
インターネットを通じて勢力を増し、政治の世界にまで影響を及ぼしている科学否定——その拡大を止める反撃の狼煙となる一冊!
「マッキンタイアは、社会心理学の成果を用いて信頼関係に基づいた対話の有効性を理論的に補強し、その『実践編』として様々な人々と実際に会って議論を交わし、ときには潜入取材まで敢行している。それゆえ本書は、豊富な知識と堅実な論証で裏打ちされた論考でありながら、科学否定論のリアルな実態に迫る重厚なノンフィクションでもある」――解説・横路佳幸
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
巷に溢れる科学否定、陰謀論、反ワクチン
それらの背景には、不満を抱く大衆の"脅かされるアイデンティティ"がある
だからこそ、ポスト真実の現代社会では、科学否定を是正するのに真実をもって論破する方法は通用しない
面白かった!
Posted by ブクログ
読んだ。いや~~~~~~~よかった。読んでよかった。これは保守的な人たちや右派に腹立ててるリベラル左派の人こそ読むべき
陰謀論や科学否定論者に対して正しさは通じない。彼らにとって支持している陰謀論や科学を否定する言説はその人自身のアイデンティティと密接に結びついてるという。今まで生きてきた環境、生育歴、受けてきた教育、人間関係、職場の状況などなど。その人の人生と生活に根ざしたアイデンティティに関わる部分であるから、"正しさ”で説得しようとしても意味がなく、むしろ態度を硬化させてしまうという。こういった人たちにはどういう手立てを講じるべきかというと、何よりも大事なのは信頼関係である。その人の考えや言葉に敬意を払うこと、抱いた感情を尊重すること、そうして対面で会話を重ねて、信頼関係を築くことでしか、その人の主張や信じている説を変えられない
知識がないなんて馬鹿にするのは持ってのほかだという。本書からの引用だが"信念を理由に相手を侮辱したり、恥をかかせたりするのは、あきらかな間違いだ。"と書かれているのだ
都知事選のころなどから一部の左派リベラルの人たちが自分たちとは異なる主義主張の人を揶揄する様子を見てきた
私個人としても人間には感情があり、正しさだけで世の中の差別や偏見が解決できるなら、とっくに世の中は穏やかなものになっているだろと思う
そして陰謀論や科学否定に走るのは保守派や右派だけではないともこの本には書かれている。この本を読んでいて気分が悪くなったり、耳に痛いと思うリベラル左派もいるだろうけど、まさにそういうリアクションを催し、自分の支持しない説を差し出されると突っぱねるのは左右や保守やリベラルは関係ない
ちょうど先日某SNSで正しい情報だけでは相手の主義主張に変化を起こせない、態度が大切であるという研究結果を見たリベラル左派の人は『こういうファクトベースの話ではなく~』などと言っていたので、まさに『エビデンスを嫌う人たち』だなあと私は思ったんであった
Posted by ブクログ
途中の子供のいじめのくだりは暗澹たる気持ちになった。
科学アンチがそれ以外の人を説得しようとする構図と、著者が科学アンチを説得しようとする構図はほぼ一緒なのが興味深かった。違いは他や社会に有害か否かくらいだろうか
Posted by ブクログ
この本はまったくエキサイティングだ。なみのフィクションでは敵わないほど面白かった。
疑似科学があふれ、恥ずかしげもなく商品化されたものをあの手この手で売り込もうとする我が国の商売人にさえ引っ掛かる者には、科学否定論に太刀打ちするのはとても難しいだろう。
アメリカを舞台に気候変動やコロナやワクチンなどについて非科学的な立場をとる人々とどう向き合うのか、科学的に、人間的に、考え実践する作者の行動はアドベンチャー。
誰か日本版を描いてくれないものか。
Posted by ブクログ
ワクチンを頑なに忌避する人、陰謀論を信じる人、果ては荒唐無稽な論説を信じる人… 筆者はこのような人たちを断罪しない。共感し、寄り添い、より良い方向へ促す方策を探る。科学否定論を端的に示す5つの特徴は非常に納得感がある。長い本だが読んで良かった。巻末に付された訳者が書く要旨と科学否定論への意見が冴え渡っています。まず巻末から読むのもありかも。
Posted by ブクログ
面白かった!
科学否定派の人たちに対して、どうすれば自分の考えを聞いてもらえるか、こちら側の意見に寄り添って改めてもらえるか。
自意識過剰なところも見えてしまうけれど、私は著者さんのイデオロギーに大賛成なので、ムカつくこともなく応援する気持ちで読めた。
最近、同じ境遇で信頼できると思っていた人たちのなかから、とんでもないデマに惑わされたと思われる方が出てきて、もう無理や、、となっていたところだったので余計に。
この本を読んで、相手に敬意を表し、決して怒らず責めず、意見を尊重し対話することが結局派1番の近道であること。人がその考えに至るには、個人の境遇や心の問題が大きく関係すること。
本当にそうだと思うし、根気強くならないとと思うんだけれども、、とにかく無理な人とは話したくなくなる、時間の無駄、、と思ってしまうのも私。
でもそれがいっちばんダメらしい、、
ほんまに口だけ、エセカッコつけの自分がつくづく嫌になる、、
Posted by ブクログ
テーマに惹かれ購入。特にフラットアース国際会議への潜入した第1章は試みの面白さにプラスしてドキドキまでさせられ、その時点で読んで良かったと思ったがそれ以降も大変興味深く読んだ。
Posted by ブクログ
明らかに凝り固まった反対意見を持つ人に、どうしたら行動を変えてもらえて、自己効力感を持ってもらえるか。
この答えを探して手に取った本。
結論を一言ことでまとめると対話をすること。
明らかに間違っていたとしても、一方的に否定も反論もせず、相手の言い分をまず聞く。個人的な関係を気付いてから、中立的、客観的に議論すれば分かり合えるという主張だった。
全くその通りだが、まあなんとも難しいことだと感じた。でも目指してみたいとも思った。
科学的に考える時の、不確実性への態度の重要性について、随所に書かれていました。
著者の誠実性を感じられて好感が持てました。
Posted by ブクログ
科学 信じる 対極の発想。
でも全てを究明して深く考えられない。
対話が大切、とはいうものの、では
トランプとの対話も必要だろうか。
必要、というか可能だろうか、
そしてその優先順位はどうか。
左翼の非科学、遺伝子組み換えの話について、論理展開がうねうねしている。もっと簡潔にならないか。
筆者の対話で、遺伝子組み換えの大豆によりアジアの貧しい子どもは救われている。もし遺伝子組み換えを買わなければアジアの子どもを見殺しにする、と言っていたが、それは論理の飛躍ではないか。いや、正しいのかもしれない。
エアコンのボタンひとつで地球温暖化を促進しているとも言えるから。私がそこに違和感を持ってしまうのは、単なる遺伝子組み換え食品企業によるPR不足なのかもしれない。どうか分からないが。
タバコ企業による非科学への投資、は真実なのだろうが、少数の企業が多くの大衆を操っているという文脈ではちょっと陰謀論者寄りの話なのが面白い。
Posted by ブクログ
心理学では陰謀論に関わってしまう人は、自尊心の肥大、ナルシシズム、低い自己肯定感などさまざまな原因に求めている。
その中でも、陰謀論とは動揺をもたらす大事件に直面した時の不安や制御不能感に対処するためのメカニズムであるという説が支持を集めている。
自分が体験した出来事に無力感を覚える時、私たちは対峙すべき敵を明確にしてくれる説明に引き寄せられる。
陰謀論的な思考に1番ハマりやすいのは「直感に従う」傾向がある人。
信念の形成において中心的な役割を果たしているのは、証拠ではなく、アイデンティティである。
科学への現実離れした期待により、懐疑論が生まれやすくなっている。
新しい仮説が真実になる可能性は常に存在するが、だからといってその可能性によって既存の仮説の「保証」が損なわれるわけではない。
圧倒的な証拠を前にしながら、それ以外の仮説にも真実の可能性があるからという理由で、その証拠を信じないのは合理的ではない。
Posted by ブクログ
そんなにフラットアースを信じてる人が世界にはいるのかと驚き。
怪しい疑似科学はとにかく「チェリーピッキング」と「陰謀論」に注意。
モルディブが温暖化でヤバいことになってること初めて知った。
Posted by ブクログ
気候変動否定やコロナ対策など科学否定論者の行動は、特に政府の政策となると社会にとって危険なものとなる。彼らは情報や証拠では説得できない。説の否定は個人のアイデンティティの否定であり、イデオロギーや所属集団の問題となる。足りないのは信頼。
科学が信じられた時代、科学者は人格も行動も学説も全て正しいと信じられた時代、広く行き渡るのは教科書のような正しい情報だけだった時代、は遠くなったと思います。
Posted by ブクログ
知的領域の生活保護みたいなもので、社会構造上、一定数存在するのが「カルト的科学否定論者」。私自身は「専門知の反作用」という言い方もするが、それはつまり、敢えてテクニカルタームを重層的に用いて効率化や権威化、言語の忠実度を上げる事が専門技術の完成度を高める一方で、そこに付いていけないアマチュアを生み出す反作用を生み出すのは必然だという意味である。
事態が身に降りかかる関心事である場合、理解が付いていけないなりにも脳はナラティブ化しようとする。その論理を集団化する事で世界線の違う「裏専門知」を構築する。それで裏集団は安心できるようになるのだが、これは、互いの専門知を信頼して日々を暮らす表の大衆層に対し、そこから何かしらの理由でこぼれ落ちても生活保護というセーフティネットがあるというこの社会の二階建て構造の類型のようでもある。
専門知に対する順応の気構えで日々労働する大衆層とそれぞれの専門家が構成する「表の社会」。ここに私も属する。しかし、あまねく専門知を理解する能力は誰しも無いに関わらず、理解可能な言葉だけでナラティブを作り上げ、労働を放棄するように専門知を曲解する「一部の裏集団」。彼らは、科学そのものの不完全性を許さぬ一方で、その恩恵だけは享受するという意味で、生活保護的だ。
本書はその欺瞞に挑戦するが、良い反論になっているかは不明である。彼らには傾向があって、何故か否定すべきテーマが隣接しているかのようにパッケージ化されている。例えば、反ワク、フラットアース、地球温暖化否定、反ビッグファーマ、反GMO。これらはそれぞれ別の論点だが、一部を信じる人は何故かセットで信じる傾向が高い。証拠のチェリーピッキング、偽物の専門家への依存、非論理的な推論、科学への現実離れした期待など、そうした人たちに共通する傾向を本書では分析する。
ただ、最も警戒すべきは「悪意」と「善意の思い込み」であり、これらによる「行動力」だ。悪意は故意に混乱を巻き起こし、境界領域に侵出しようとする。その領域は善意の思い込みによって行動を起こしてしまう可能性がある。皮肉な事に、この起点は「善意」の思い込みからスタートし、結果ウロボロスの蛇になるのである。
そして何故パッケージ化されるかというと、これはコマーシャリズムやポピュリズム的作用であり、単に良い感じに不安を煽り、ワクワク感を纏うキャッチーさがあるから、というと言い過ぎだろうか。日々、平穏に暮らしているというのに。
Posted by ブクログ
科学否定論者。
地球は平面だ、ワクチンは悪だ、遺伝子組み換え食品は悪魔だ、温暖化は進んでいない。
それぞれを挙げて記事にしているが、それについての「データ」は示されていないので、まずそれぞれが科学的に正しいかどうかは自明として進んでいく。
こういう輩に、黙ってるのが一番ダメ、反論をしなければならないが、証拠を上げてもこういう奴らは全く聞きもしない。バカにわかるように話せというが、バカはそもそも聞いてないという、昨今よく見るフレーズがバッチリハマる。
そこは、アイデンティティに関わる問題だからというのが著者主張。
そうだろうな。自分の世界を壊されるくらいなら、事実をなんか見る必要がない。
ただこの人、科学的認知が同じ答えを導き出すと思ってる?思ってた?みたいで、それを踏まえてどう判断、どう行動するかは別なのがあまりわかってないか。知人の遺伝子組み換えについては別の考えを持つ科学者とのやりとりは面白かったが、経済をバカにしすぎ。経済は人を殺すことが分かってないように思った。
よくわからんのが、保守が大体非科学的で、リベラルが科学的だという大前提。日本とは全く保守、リベラルという言葉の意味が違うからなんだろうが、違和感バリバリ感じた。
「あなたが信じるそれは、どんな事実や証拠があったら、その考えは変わると思いますか」という質問は秀逸やなあ。
物凄い理性的に思えた、平面論者。南極には氷の壁があって越えられないという主張に、じゃあ、飛行機で行きましょう、燃料補給無しで飛べる距離だったら信用しますよね、と提案したら、いや、実は飛行機とは燃料補給なしで際限なく飛べるのかも知れず、それは、このような提案をされることを想定して隠されて来たのだと言い出した。
まあ、わかる。俺も、中学から高校くらいはそんなこと考えてたから。
著者の主張は、我々は黙っていてはいけない、こういう輩とはまず信頼関係を作ってそこから会話をしないといけないという。ほとんどセラピーなのだが、我々一般人は、そんな奴らに関わってる暇もないしそれほどの知識もない。確かにだから、そういう言論に触れるとコロッとやられる可能性があるのは確かだが。
そこで戦うのは、我々一般人ではなく、ちゃんと科学の世界に生きる方々ではないかと思うが、日本の場合、大槻教授という、戦った挙句にどこかに行ってしまった人もいるから難しい。
結局、と学会のように、無視はせず、議論もせず、笑い飛ばしてしまうのが一番いいのかも知れない。
今や、と学会も消えたけどな。
Posted by ブクログ
アメリカの科学哲学者による、地球は球でなくフラットであると考える人達をどう説得しようかという試み
証拠を提示しても考えを変えることはなく、その考え方はアイデンティティになっているようである。共感、敬意、傾聴で信頼を得ることによって接点を見つけていくしかない。
人間は、考えることを面倒くさがって何かを信じ、それが確証バイアス等で強化されるのかしら。
Posted by ブクログ
最初のフラットアース会議のルポは面白かったが、以降は翻訳書特有の読みにくさが続いた。
結論として、科学否定論者には正しいデータでも説得できない。自分自身のアイデンティティに根付いていることもあるからだ。
大事なのは、何を言うかではなく、誰が言うか。
膝詰めで話し合って、信頼を得るのが必要。
Posted by ブクログ
・反GMOの友人との議論は半GMOのほうが説得力がある。友人は食べて有害と言っているわけではなく「予防原則」に基づいて主張しているのに著者が聞き入れていないのは、首尾一貫していない。気候変動の予防原則とは方向が逆なだけなのだが。
・あとは気候変動対策の必要性を強調するわりに著者はモルジブまで飛行機で行ってカーボンクレジット払ったからそれで良しとしているし、自省が感じられない。
・自分は正しくて間違っている人とどう対応するかという上から目線を感じる。
How to Talk to a Science Denier:Conversations with Flat Earthers,Climate Deniers,and Others Who Defy Reason
【目次】
はじめに
第1章 潜入、フラットアース国際会議
第2章 科学否定とはなにか?
第3章 どうすれば相手の意見を変えられるのか?
第4章 気候変動を否定する人たち
第5章 炭鉱のカナリヤ
第6章 リベラルによる科学否定?
第7章 信頼と対話
第8章 新型コロナウイルスと私たちのこれから
エピローグ
《科学否定論者に共通する5つの特徴》
1 証拠のチェリーピッキング
2 陰謀論への傾倒
3 偽物の専門家への依存
4 非論理的な推論
5 科学への現実離れした期待
Posted by ブクログ
科学的エビデンスを信じない人たちと対話し、社会への悪影響を減らすための方策を探る話。
本書で取り上げられるのは、以下の人々。
・地球平面論者(フラットアーサー)
・地球温暖化を信じない人々
・反ワクチン
・反遺伝子組み換え食品
話として面白いのは、圧倒的にフラットアーサーの章。こんなトンデモをなぜ信じるのか理解し難いが、著者が対話したフラットアーサーのほぼ全員が、社会生活で何らかのトラウマを抱えていることが垣間見え、闇の深さを感じる。(ここはカルト宗教と同じ構造に見える)
あと、日本ではそれほど感じないが、アメリカでは左派・右派で分断が大きく、右派は反科学が多いみたいな論調で話が進むのも、闇深いものを感じる。彼の国も大変なんですね。