あらすじ
コロナ禍、ウクライナ危機を経てインフレ転換した世界経済。有事対応で財政出動を繰り返した日本は、債務残高対GDP比で先進国最悪である。デフレ下でこそ持ちこたえられた財政には新たな破綻シナリオもよぎる。日本の危機的状況を再確認するとともに、立て直しの方策として、税制と財政ルールの改革、成長戦略、セーフティネット構築、ワイズスペンディングなど5つを提言。未来につなぐ財政民主主義のあり方を問う。
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Posted by ブクログ
気鋭の財政学者である著者が、日本の財政の危機的な状況を再確認し、それをどのように立て直すべきかを考察。具体的には、財政再建の方策として、①規模ありきの財政出動から、賢く効果的な支出「ワイズスペンディング」へ、②企業・産業の新陳代謝の促進、雇用の流動化、③抜本的な税制改革、④セーフティネットの構築、⑤規律を回復させる「ペイアズユーゴー」など財政ルールの設定の5つを提言。
我が国の財政健全化に向けて、非常に示唆に富んだ内容だった。
我が国財政の危機的状況について、また、MMT等の積極財政論的な奇策も跋扈しているが、経済において「ただ飯(フリーランチ)」はなく、政府が無制限に赤字を出し続けることはできないということを、改めて認識した。MMT、物価水準の財政理論(シムズ理論)等の奇策の概要とそれらの懸念点についても丁寧に解説されており、参考になった。
世間的な評判は悪いが、財政再建において重要な役割を果たすのが消費税であり、消費税には種々のメリットがあるという認識も共有した。そして、著者の5つの提言も、抜本的な改革が必要な部分も多いので実現可能性という点でどうなのかと思うところもあったが、いずれも納得できるものであった。
また、日本の財政にからめて、財政の機能や財政に関わる様々な経済学理論、そして、アベノミクスの功罪、世界で進む税制のイノベーション、給付付き税額控除の議論など、様々なトピックがわかりやすく解説されていて、勉強になった。ただ、キャッシュフロー税の説明など、自分にとってなかなか理解が難しい部分もあった。
本書で紹介されている、経済学者、一般国民ともに財政に対する危機意識は共有しているが、財政悪化の原因(経済学者は社会保障費が主と考えているが、一般国民は政治の無駄遣いや高い公務員の人件費がと答える人が多い)や消費税に対するイメージ(経済学者は安定財源、効率的な税というイメージが強いが、一般国民は景気に悪影響や逆進的で不公平という回答が多い)といった点では両者に乖離があるというアンケート調査の結果もとても興味深かった。本書でも指摘されているが、国民が財政について正確に理解し、「自分事」として捉えられるように仕向けることが重要だと思われる。
Posted by ブクログ
目新しいことは書いていないが、なぜ何人もの人が何度も言っているのにこんなに簡単で明らかなことが世論に伝わらないのか不思議だ。
国民は自分たちが受けている公共サービスと負担を結びつけていないと指摘しているが、たしかにそうだと思う。
そもそも政府が信頼されていないのが根本的な問題だが、自分の利益になる政治家を選ぶ国民の責任でもある。(財務省への不審感を国民に植え付けた政治家の罪は重いが)
日本人は、いつか財政破綻した時に、戦後と同じように被害者顔をするのだろう。
Posted by ブクログ
20240727-0815 日本の財政が危機的状況であることは、バブル崩壊以後の積極的な財政政策の結果であり、もうここ30年近く警鐘は鳴らされてきた。国・地方を合わせた政府の債務残高は対GDP比で260%に達するという。巨額な財政支出は経済対策だけでなく増え続ける社会保障費・地方財政への補填、近年ではコロナ禍への対策・エネルギー価格の高騰や直近では安全保障費への支出などによるものである。これまでは超低金利とそれに伴う円安が、財政負担を支えてきた。だが、2024年に入り植田日銀総裁のもとでゼロ金利政策は解除され、日銀による国債買い入れも減額されていくだろう。そうなったとき、日本の財政は持ちこたえられるのか、このままでは大いに疑問がある、というのが筆者の主張である。私も概ね賛成である。
ではどうしたらよいか?筆者は①規模ありきの財政支出から、賢く効果的な財政支出「ワイズ・ペインディング」②企業・産業の新陳代謝の促進(ゾンビ企業の退出)、雇用の流動化③抜本的な税制改革(消費税の増税はいずれ避けられぬだろう)④セーフティ・ネットの構築(筆者は「負の所得税≒給付付き税額控除」、ベーシックインカムを挙げている。このためには正確な所得情報が必要であり、マイナンバーをもっと活用すべき、ということか)⑤財政規律を安定させる「ペイ・アズ・ユーゴー」など新たな財政ルールが必要(独立した財政検証機関=歳入庁や英国のOBR、米の議会予算局(CBO)のような機関の設立)、等を提唱している。
これらの提唱は以前から論じられているし、国会でも論じられている。筆者は「日本人はどうも奇策を好むところがある」と、本書の中で述べている。いささかの皮肉が聞いているなと思う。財政再建は、MMTやヘリコプター・マネーのような奇策ではなく、やはり真っ当に愚直に進めていくしかないと思う。そのためには、例えば消費税のデメリットばかりを強調するのではなく、景気に中立的な税制であることや、企業の生産効率性を損なわない、国民全体に広く薄く税負担を求める税制であること等を広めるべきである。