あらすじ
アラバマ州グレイス。連続少女失踪事件が解決されないまま、サマーという少女が失踪した。双子の妹レインは、姉の失踪に疑念を抱く。サマーが私を置いていくはずがない。だが、レインが姉の足取りを追うにつれ見えてきたのは、彼女の知らないサマーの姿だった。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
解説、酒井さんが「この物語は、登場人物の背景や来歴、思い、物語が始まる前に起きていた出来事や物事の経緯などが、後出しで少しずつ言及されていく形式をとる。(省略)読者である私達の内面に浮かぶ波紋、染み込む情緒、徐々に変化する印象。そういった繊細なことが、とても大切されている小説である。(省略)だから、できるだけ何も知らない状態で接して欲しいのだ」と仰っている。
まさに同感。
最初はやや、いやむしろかなりとっつき難いのだが、徐々に与えられる情報でどんどんと物語世界に浸されていくのが実感できる。
なので、これから読もうと思われている方は以下、読み飛ばし頂きたい。
意外性が損なわれるからネタバレ気を付けてねとかそういうことではなく、物語の積み上げられ方、剥がされ方、ひとつひとつを生のまま堪能すべしという類の物語。
時は1995年、悪魔崇拝の影が残るアラバマ州グレイスでは、少し前に「鳥男」なる通称で知られた犯人が引き起こしたとされる連続少女失踪事件があった。
暫くの間なりを潜めていたと思っているところに、新たな少女失踪の話が持ち上がる。
少女の名はサマー。
父のジョーはかつて8年の刑で服役している前科持ち。
父の荒くれ加減に反して、読書をこよなく好み、教会通いにいそしみ、そこで牧師の妻からチェロの演奏を教わるいわゆる穏やかな優等生。
一方、妹のレインは未成年飲酒の常習、粗い言葉遣い、男遊びに明け暮れると奔放。
だが、姉のサマーとの絆は何よりも強く、姉の発見を誰よりも強く望む。
独自の捜索を進めようとする過程で、警官である父を早くに失った体つきは軟弱だが心意気だけは勇猛果敢なノアとその友人、父親からの家庭内暴力を抱えるパーヴに出会い、半ば手下のように扱う形で姉の発見に奔走する。
衝撃をもたらした『われら闇より天を見る』後初の邦訳作品。
ただ、原著の出版順としては『消えた子供』に次ぐ第2作目。
トーンとしてはまさに、この2作を足して割ったような感じ。
ノアとパーヴの少年コンビがもたらすユーモア交じりの成長譚と、メインの事件を取り巻くグレイスの町に生きる人々の擦り傷だらけの痛々しき人生。
そこに挟まるサマーの独白パート。
この事件の真相はどこにあるのか、「鳥男」は濡れ衣で別の事情があるのではと思わせるような、町の人々の疑わしき言動。
エピソード自体は決して目新しいものではないのだが、その描き方、場面、ワードセンスがとにかく秀逸で、不遇の少年達が自らの人生に立ち向かう心意気や、一見すれた少女レインの姉を思う心持ち、捜査を率いる町の警察署長ブラックが抱える後悔など、ことごとく感情が沸き立つ。
ほんと凄い作家さんだわ。
翻訳もいいんだろうな。
これまでの3作品、いつか絶対再読したいし、本棚に置いて置きたい。
心配なのは新作が出ていないこと。
でも英語でググルと今年『All the Colours of the Dark』という作品が出版されている。
早く邦訳されないかな。
さらなる高みに達していると期待したいな。
Posted by ブクログ
クリス・ウィタカーの翻訳3作目。原著は2017年の作品で、一昨年話題になった「われら闇より天を見る」より前の作品。
1995年のアメリカアラバマ州が舞台。隣の地区で未解決の少女連続失踪事件がある中、双子の姉サマーが失踪する。姉を探すレインは、ひょんなことから殉職した父を持つノアと暴力的な父を持つパーヴと出会う。一方、地元警察署の署長ブラックは、サマーの失踪と連続失踪事件が関連しているのか決断を下せずにおり。。。
「われら闇より天を見る」よりミステリ感は薄く、青春小説の色を強くした作品。現代パートはレイン、ノア、パーヴ、ブラックの視点で進み、過去パートはサマーの視点で進む。
何よりも、ノアとパーヴの会話が非常に良く。そして打ちひしがれた中年のブラックが、ゆっくりと立ち直る様も良い。
登場人物が多く、また序盤にある程度まとまって情報が入ってくるため、なかなか読み進め難いかもしれない。ただそこさえ乗り切れば、徐々にわかってくる人間関係や新事実を楽しめると思う。良作でした。
Posted by ブクログ
「われら闇より天を見る」と通じる雰囲気やテーマを感じた。貧困や差別、閉ざされた街の人間関係や宗教感など、全体に暗く重たい空気が漂っている。登場人物が多く、それぞれの背景が少しずつ明かされていく構成のため、最初の100ページほどは読むのに時間がかかった。それでも物語に慣れると一気に引き込まれた。ミステリーとしての面白さに加え、人間ドラマとしての完成度も高い作品だと思う。
Posted by ブクログ
去年新刊案内で気になった『終わりなき夜に少女は』(クリス・ウィタカー)。
海外の小説は、登場人物が多すぎて誰が誰だかわからなくなるという理由で避けていたのですが、
頑張って読んでみる事にした!
少女達の失踪、なかなか解決しない流れに「まだか……まだか……」と思いながら数日間格闘し、約450ページやっと読み終えた。
『名探偵コナン』(青山 剛昌)や『金田一少年の事件簿』(樹林伸)のように天才的頭脳を持った主人公がハイスピードで事件を解いていく感覚に慣れてしまっていたせいか、
結末を急ぐクセがある。
でも大抵の事件はなかなか解決できずで時が過ぎる事の方が多いでしょう。
連続する曇天なんて起きる事件は人の心を荒みやすくさせる事を『曇天に笑う』(唐々煙)で読んでイメージが付いていたから、
文字だけに留まらない緊迫感を感じられて面白かった。
けど……。
長かったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
Posted by ブクログ
『われら闇より天を見る』を読んで泣いたりしたので、こっちもまあまあ期待して読んだが、どうにもこうにも。われらは3作目で、こっちは2作目なので、ちょっと荒いというか、物足りなさを感じた。
ボビー牧師が許されるのマジわからん。
この話は、グレイスという箱庭で、作者という神があれこれしている構造なんだと思う。正しいことをすれば許され、後悔すれば許され、他人を赦せば許される。逃げ出せば死に、変わらなければ不幸が訪れる。
でも、ボビー牧師はダメだろ。レインはずっとサムソンがサマーをさらったかなんかしたと思うことになる。全部が全部すっきりしなくても、メタ的にはボビーにも何か無いと思う。息子マイケルを失って傷ついても不倫して少女に手を出しても良いわけじゃない。てか、サマー、ロリータ読んでたのに。読んで理解したうえで関係を持っていたのが救えない。だから死んだのか。
ブラックとピーチ・パーマーの関係も共感出来なかった。わかるけど、良いとは思えなかった。
ノアとレインも。
ノアとパーヴは良かった。パーヴ死んでなくて良かった。
最後の鐘楼のふたつの人影は誰だったのか。ボビーとサヴァンナ?
鳥男の正体はわかって良かったが、どうやって女の子を見付けてさらってきたのかわからない。クリニックの彼女が鳥男と通じていたというので良いのか?サムソンは?
全体的に合わなかったが、この田舎の閉塞感は良かった。