あらすじ
太平洋戦争の敗戦で朝鮮半島北部の邦人は難民に。飢餓や伝染病で斃れゆく老若男女の前に忽然と現れ、ソ連軍の監視をかいくぐり、母国へと導く男――彼はかつて国家から断罪されたアウトサイダーだった。時間も資金も情報もない中で、頭脳と度胸を駆使した決死の闘いが始まる。見返りを求めない「究極の利他」が胸を打つ実話。
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Posted by ブクログ
朝鮮半島からの引き上げ,それを個人で助けた男松村義士男,まだまだ知られていない敗戦時の出来事事情,どんどん忘れられていく今,この本の意義は大きいと思う.また,帰国後の松村が引き上げのためにした借金の返済に苦しんだというのが,気の毒でならない.日本政府が払わなくてはならないものなのに.
アメリカかソ連かということだが,アメリカの捕虜になった方がずっといいというのがよくわかった.
Posted by ブクログ
”義人にして北朝鮮引き上げの英雄、黙々として多くを語らず、温情は全身に溢れて、日本民族救出のためには鬼神を泣かしめる離れ業を敢行した。北緯三十八度線が生んだ日本民族の巨星である。”
もし、あなたが言葉も文化も異なる異国の地に突然取り残され、故郷への帰還の道が閉ざされたとしたら――。第二次世界大戦終結後、朝鮮半島は北緯38度線を境に、南側をアメリカ軍、北側をソ連軍がそれぞれ占領統治しました。この冷戦の幕開けとも言える状況が、そこに暮らす日本人たちの運命を大きく左右することになったのです。
アメリカ軍の統治下にあった南朝鮮では、比較的早期に日本人の帰還が進められ、1946年春までに約45万人の日本人が祖国の土を踏みました。しかし、ロシア軍の支配下となった北朝鮮では、状況は一変します。約25万人の在北朝鮮日本人に加え、満州からの避難民約7万人が、文字通り「見捨てられた」状態に置かれてしまったのです。故郷を想い、不安な日々を送る人々。祖国からの連絡は途絶え、帰還の見込みも立たない絶望的な状況でした。
そんな中、在北朝鮮日本人の集団脱出を成功させた一人の男がいました。その名は、松村義士男。彼の勇敢な行動は、過酷な状況下で希望を失いかけていた多くの人々の命を救ったのです。
これは、決して忘れられてはならない、真実の歴史の物語です。
Posted by ブクログ
膨大な資料からよくぞココまでの作品に仕上げられた功績は素晴らしい。後世に残すべき一作。
欲を言うならば、事実を基にしたノンフィクションにして欲しかった。
後半は小説ぽくもなったけど、全編を大脱出劇に仕上げてることができたなら、世紀の大傑作になり得たのにと考えてしまう。
シンドラーより千畝より功績は大きいかもしれない。帰国後の不遇が残念で仕方ない。
Posted by ブクログ
1945年8月15日、日本の植民地支配が終わった朝鮮は北緯38度線を堺に米軍とソ連軍の分割占領下に置かれた。当時、朝鮮半島には約70万人の一般邦人が住んでおり、うち南朝鮮在住の約45万人は米軍の方針で1946年春までに日本本土への引き揚げがほぼ終了した。
だが、北朝鮮ではソ連が北緯38度線を封鎖、約25万人の邦人が移動を許されず、閉じ込められ、さらにソ連の侵攻で戦火にさらされた。避難のため、南下した人々は必死の思いで山間部を歩き続け、疲労困憊、ほぼ無一文で避難先にたどり着いた。だが、食料不足、劣悪な環境下での集団生活、感染症も猖獗を極めた。
そんな苦境にさらされた日本人を日本本土へ引き揚げさせるため、南朝鮮に次々と集団で脱出させた「引き揚げの神様」がいた。
彼の名は松村義士男。戦前は労働運動に加担したなどとして治安維持法違反で二度検挙された左翼活動家だった。だが、北朝鮮に渡ってから、共産主義の知己が多い人脈や、ソ連軍司令部の嘱託という職を生かし、日本人救済に尽力した。
彼は、当局と粘り強く交渉したり、鉄道での大量輸送や海路での試験的脱出など多岐にわたる工作を講じたりして、時には身の危険も省みず、また、多額の借金までして6万人の避難民を救済した。
本書には、様々な文献から埋もれていた事実や関係する人物像、元難民の声が多数集められ、松村に関する情報が掘り起こされている。松村が日本に帰ってからの半生は寂しく惨めで謎めいた部分も残されているが、全体として、感動的であり、「究極の利他」を学べた気がしている。
Posted by ブクログ
終戦直後、日本へ帰国しようとする日本人難民の運命は38度線で分かれる。米ソそれぞれの統治の違いから北朝鮮に遺された難民を救うべく奮闘したのは34歳の一民間人だった。
人脈を駆使しつつ様々なルートを利用して数万の難民を脱出させる。
忘れられた歴史にスポットをあてたノンフィクション。
Posted by ブクログ
日本政府何やってたん?尽力した人たち、ノーベル賞ものじゃん。ノーベル賞はさて置いても、何かあげて欲しいよ。遅いけど。私も生まれてなかったんだと思うしな。
金日成に会いに行った東大生も凄いな。