あらすじ
なぜロジャー・フェデラーは長きにわたりトップ選手でいられるのか?
ラグビーの最高峰オール・ブラックスとジャズの共通点とは?
一流のスポーツ選手の脳内では何が起きているのか?
累計10万部突破のベストセラー「失敗の科学」「多様性の科学」の著者待望の邦訳!
「卓越した成果を上げる人」の共通点。
元イギリスのトップ卓球選手でジャーナリストのマシュー・サイドが一流アスリートの共通点について、
心理学、神経科学、政治などあらゆる面から掘り下げたコラム集。
【目次(一部抜粋)】
第1章:チャンピオンのつくり方
選手の人生すべてを取り仕切る、トレーナーの存在
才能とは実は練習の成果である
チームを強化したければ、選手に権限と責任を与えよ
第2章:メンタルのゲーム
体が心を乗っ取る「1万時間」の積み重ね
勝利を邪魔するのは失敗への恐怖
スキルではなく「ゲーム・インテリジェンス」を高める
「ゾーン」を個人からチームに伝播させる
第3章:美について
試合は、アスリートが紡ぐ物語の最終章にすぎない
アスリートの天才的スキルを支える、チームの完璧なハーモニー
社会的手抜きへのアンチテーゼ、「魂のチームワーク」
第4章:政治のゲーム
独裁者も統制できない、人間のスポーツへの愛と渇望
テロリストに襲撃される、リスクを背負うアスリート
一度の中止もなく続いた、古代オリンピックが物語ること
第5章:スポーツのアイコンたち
タイガー・ウッズ
ミハエル・シューマッハ
アンドレ・アガシ
間違いなく最も偉大な人物
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
スポーツマンのあくなき向上心に大いに刺激を受けました。彼らの姿を見ていると、一つのことを極めることの難しさや、それを他の分野にどう応用するかを考えさせられました。スポーツにおいて勝利が一つの大きな目的であるのに対し、仕事や生活では同じベクトルの異なる価値観や目標を同じ様に取り組む必要があることを感じています。
また、個人の力を高めることの重要性はもちろんのこと、同時に組織全体の力を引き上げることの必要性も痛感しました。個人の努力とチーム全体の貢献が互いに影響し合いながら、共に成長し、勝利に向けて進むことが求められます。そして、その勝利を単に相手に勝つことと捉えるのではなく、栄光に向かって進むというより広い視点を持つことの大切さを学びました。
勝利を目指しつつも、そこに至る過程やチーム全体の成長も重視する姿勢が、真の成功へとつながるのだと感じました。
Posted by ブクログ
マシュー・サイドの本はこれで3冊目だった。失敗の科学があまりにも良かったので期待し過ぎてしまったところがあった様だ。それでもこの本を読みながら、グリフィス対パレット戦やキンシャサの奇跡の戦いなどYouTubeで検索しながら描かれている事を追って行くとまるでガイドブックの様な機能も果たしてくれたこの本に感謝したい。内容は多岐に渡りしかも、各スポーツ行ったり来たりするのでスポーツごとに分類すると言う方法もあったかも知れない。ただスポーツの歴史的瞬間を後追いするだけでも価値があると思う。今はいつでも過去の試合が見れる便利な時代になったのだから。
Posted by ブクログ
失敗の科学が面白かったので、こちらも読んでみました。生まれながらにして頂点に立つ者はいない。その通りで、一流のスポーツマンはみな並外れた努力をしている。小さい頃から親に怒られながらやっていたり、嫌なことを言われてもそれをバネにして努力したりする。それをやり続ける環境作りも大切なんだなと感じました。
Posted by ブクログ
★3.5
スポーツで一流の活躍している人に焦点を当てて描いたビジネス書。
同じ著者の『多様性の科学』では、科学的なアプローチで“何故多様性が必要なのか”、“多様性があることによってどんなメリットがあるのか”という事が描かれていましたが、こちらの書では科学的アプローチは少なめ。というか、ある意味、一流のスポーツ選手の事は、科学では解明しきれないという事なんでしょうかね。その人となりや、生活、活動、心理などに関しての描写が多かった気がします。
ところで、著者はランス・アームストロングが大嫌いみたいですね。ハッキリとそう書いてあるわけでは無いですが、描き方の端々から、軽蔑しているという印象を受けました。
中々面白かったです。
Posted by ブクログ
スポーツ記事の寄せ集め オーディブルにて
失敗の科学が素晴らしい本だったので我慢して聴いてみてたけど、内容としては著者がスポーツ誌か何かに寄稿した記事の寄せ集めという印象。
ほとんど勝者を科学することに踏み込んでいないので、タイトルだけ立派な本という印象
残り2時間ぐらいまで聴いたが、最後まで聴けなかった、、
Posted by ブクログ
継続した努力こそが報われるが基本ベースにある本
個人とその周りの人がどうするかに焦点を当てている
作者は卓球・テニス・サッカーの話題が多く
この3種目に興味の無い人はかなりきつい
ゴルフやツールドフランスやボクシングなどは少し
手でくる程度
そのスポーツに時間を割くかが
一流になるかの境目ではあるが
最低10000時間という途轍もない時間を投下して
始めて判断されるレベルに到達するという
皮肉にも程がある
名言
打たなかったショットの失敗率は100%だ
一流の選手が持っているのは、反応力ではなく
卓越した予測力。この複雑なスキルは
生まれ持った特性ではなく、長年の練習によって
脳に書き込まれたものなのだ
など
Posted by ブクログ
才能は練習の成果である。
天賦の才に見えるでしょうね、でもそれは良い結果を出すために、何年も神経を注いできた様子をみんな見てきていないから、そのように感じるのです。一万時間理論と言う言葉をご存知ですか。複雑なスキルであればあるほど、生まれも特性ではなく、長年の練習によって脳に書き込まれ刷り込まれたものなのです。その仕事に従事する年数に比例して、海馬の効果を大きくなっていると言う研究結果です。
Posted by ブクログ
コーチのダニー・ケリーが、権限を「指揮系統のより低いところへ」移譲したその度合いこそが、このチームの最も驚くべき洞察力の表れだろう。日々のトレーニングをいつおこなうか、選手たちは自分で決める。選手たちは、自分たちが守るべき明文化された規則や行動原則を自分たちで決める。キャプテンも投票で決める。無秩序な状態だと思う人もいるだろうが、実際には、指揮系統は強化されたのだ。
「責任を与えられ、意思決定の場に参加する人は、当事者意識を持ちます。その人は物事により責任を持って参加するようになるのです。そうすれば、チーム全体の力学も変わってきます」とケイトは言う。「若手の選手も成長します。自分たちが策定に関わった規則を進んで破ろうとする人はいませんからね。もちろん、しっかりと限度は決めなければなりません。多くの重要な決定はコーチがするのだという意識はみんな持っています。しかし、権限委譲は弱さではありません。逆に、強さの証拠なのです」
リチャードソン=ウォルシュがこのチームで得た知見は、企業を対象にした精密な研究結果とも一致する。心理学者のジェイ・コンガーとラビンドラ・カヌンゴは、従業員に力と責任を与えれば満足度が改善することを発見した。マネジメント研究者のケネス・トーマスとベティー・ヴェルトハウスは、「権力の分散は内発的モチベーションを生み出す」と唱える。マクリスタルも書いているように「人間は自ら決断をしたときのほうが、結果を出そうとしう意識が働くので力を注ぐようになる」のだ。
ブレイルスフォードは三つの重要な変化を挙げた。うち二つはチームの文化の改善で、もう一つは技術的側面の改善だ。「私は、成功するチームは感情的なたくましさを持つ文化から生まれると確信した。自転車競技は、エネルギーや力の出力のみで説明されることが多い。だが、人間的な側面もとても重要で、パフォーマンス・サイエンティストにはそれが過小評価されがちだ」
「最初に、私たちは「勝つための行動」アプリをつくってチームに変化をもたらした。インチキ臭く聞こえるだろうが、基本的なことなんだ。たとえば、勝つ者の行動は「不平を言わない」で、負ける者の行動は「不平を言う」。誰かに腹を立てて、そのことをチームメイトに愚痴りはじめたりすると、それがまた誰かに伝わり、チームのなかでがんのように悪影響を及ぼす。些細なことかもしれないが、破滅のもとになる」
プレイルスフォードはiPhoneを取り出して、そのアプリを見せてくれた。左半分に行動リストがあり、右半分に笑顔の絵文字、普通の絵文字、悲しい顔の絵文字がついた、自己採点のための目盛りがある。一つひとつの行動について、チーム・スカイのメンバーは週ごとに自己評価を提出させられ、それをブレイルスフォードがチェックして、一対一のミーティングをおこなう。
ブレイルスフォードは、ツール・ド・フランスのその日のステージにおける自己評価を入力しはじめた。一つ目の項目は「私は感情をコントロールできる」。「今日は感情をコントロールできなかったな。改善の余地あり」と彼は言う。二つ目は「個人的な問題を仕事に影響させない」。プレイルスフォードは笑顔の絵文字をタップした。「私は個人の問題を仕事に持ち込んだことはない」と言いながら。
リストにはほかに、このような行動があった。「チームを批判しない」「わずかなアドバンテージを追求する」「よく調べ、建設的なフィードバックを出す」「常に学びを模索する」「能動的に人の話を聞く」「チームメイトのために先回りして問題解決をおこなう」。ブレイルスフォードは言う。「最後の項目は、強調してもしきれないほど大事だ。「助けてくれればよかったのに」と人はよく言うが、それに対する答えは決まって「言ってくれれば助けてあげたのに」となる。それじゃあだめなんだ。問題があるかどうかを尋ねなきゃならないという状況がまずいけない。「先回りして」というところが、単なる良いチームと偉大なチームの差になるんだ」
「私は、常に選手たちがどういう状況かを把握している。そうやって文化を変えていくんだ。自己評価を紙に書かせるなんてのは良くない。実際の行動を変えられるようにしなきゃならない。このアプリは生き方を変えてくれたよ。今日のチームのミーティングみたいに、議論が熱を帯びたときにも、正しく振る舞わなければならないと、みんな自覚している。有害な行動が起こる前に防いでくれるフィルターみたいなものだね」
二番目の変化は、モチベーションを高めるための組織的な努力だ。ブレイルスフォードはそれを「やる気指数」と呼ぶ。「私たちは、モチベーションに影響を与えうるあらゆる要素を掘り下げて分析した」と彼は言う。「契約の最終年の選手は、新たに契約を取れるように一生懸命努力する。1年目の選手も同様だ。特に外から移籍してきた場合は、新しいチームで一目置かれたいからね。でも、何人かの選手については、2年目からモチベーション面でスランプに陥っているのを観測した。それに対しては、契約内容を微調整して直接対処することにした。私たちはまた、選手の私生活の調子や、トレーニングのデータも分析した。一人ひとりの選手にやる気指数をつけ、その動きを追跡したんだ。何かおかしな動きがあれば、すぐに対応する。やる気が下がるのは明らかに良くないことだ。先回りで対応すれば、下がってしまう前になんとかできる」
三番目の変化は技術的なものだ。チーム・スカイが利用しているアルゴリズムは、スポーツ界のなかでも最大級に高度で複雑なものだ。ケリソンのもと、チームは自分たちの固定観念を検討し直すとともに、特に、食事とパワーの間の動的な関係性について徹底的に調べた。「トレーニングの内容だけでなく、そのトレーニングのためのエネルギーをどう補給するかも重要です」とケリソンは言う。「狙った適応が得られるように、トレーニングごとにそれぞれ違った補給方法を採用しています。一部のトレーニングでは、脂肪を効率的に使える体をつくるために、炭水化物を減らします。別のトレーニングでは、パフォーマンスを最適化するために炭水化物を増やします。しかし私たちは、違った組み合わせも試しはじめました。やがて私たちは、ペダル回転数の違いに応じて、さまざまな栄養素が動的な相互作用のもとでパワーの出力に影響を及ぼすという、重要な知見を得ました」
しかし、まさにスポーツは取るに足らないがゆえに、私たちを魅了するのだ。人間の活動のなかで、スポーツほど正確に人間の本能をドラマ化するものはない。そこで表現される本能とは、勝利の追求、他人との比較、世界に挑む勇気、挑戦のなかで自分自身をより深く知りたいという思いである。
ここでいったんサッカーから離れて、ハーバード・ビジネス・スクール教授のテレサ・アマビルの研究について考えてみよう。彼女は何人かの芸術家を募集し、その作品のなかから10の注文作品(お金をもらってつくられたもの)と10の自主的な作品(制作そのものを愛し、自己表現への欲求から生まれたもの)を選び出した。そして、影響力のある芸術家やキュレーターのグループに、それらを評価してもらった。
「非常に驚くべき結果が出た」とアマビルは書いている。「注文作品は自主的な作品と比べて、創造性の面ではるかに劣ると評価された。それでも、技術面の評価では両者に違いがなかった。さらに、依頼された作品を制作しているときは、芸術家たちは自主的に制作しているときと比べ、著しく束縛を受けているように感じる、とも語った」
別の研究では、研究者が美術学校の学生に、お金を稼げる芸術家になりたいか、もっと根本的な意味で自己表現ができる芸術家になりたいかを尋ねた。20年後、研究者はその元学生たちがフルタイムの芸術家としてどのように活動しているかを調べた。すると、「絵画にしろ彫刻にしろ、外的な報酬ではなく活動そのものに喜びを追い求めた芸術家のほうが、社会的に認められる芸術を生み出してきた」そうだ。
この現象はいまではよく知られていて、名前がついている。作家のダニエル・ピンクが「創造性のパラドックス」と呼び著書『モチベーション130』(講談社)にまとめている。私たちは勝利とは異なるものに動機づけられているときに最も深いインスピレーションを得られるが、それがかえって私たちをより成功に導くのだ。芸術家を追跡する研究をおこなった研究者たちはこう述べている。「結果として、外的な報酬の追求を動機としなかった者ほど、外的な報酬を(生涯では)得たことになる」
だが、比較的つまらないと思われた「クラッチバット」(ここぞというときのバット)についての質問(「ミスをしたらどうなるかと、自分の心が心配しないようにするのは難しいですか?」)に答えるとき、ニクラスはガスバーナーのように輝きだした。まるで1000ボルトの電流が流れたようだった。やがてスチュワートも熱い会話に参入した。幅広い関心のなかで、この二人はほかの何よりもある一つのことを熱狂的に追い求めていた。それは勝つための技術だ。
「ネガティブなことは考えちゃいけないんですよ」とニクラスは、不道徳の危険性を警告する伝道者のように主張した。「私は考えませんでした。勝負のパットは常にチャンスだと思っていて、脅威だと思ったことはありません。多くの選手は、この心理的なトリックを使えないのですけど」
「トーナメントに勝利するために6フィートのパットを決めなければならないとき、幸せな気持ちでした。そのために自分は努力してきたのですから。心が高ぶり、なんと楽しかったことか。パットを打たせてほしい!ってね」彼は立ち上がらんばかりの勢いで力説した。スチュワートはうなずいていた。「心をどう操作するかにすべてがかかっているんです」とスチュワートは言った。
「あらゆるネガティブな感情を排除しなければなりません。なぜなら、それは成功か失敗かを決める瞬間に、自分にとって邪魔になるからです。勝利するための鍵は、熱くなっているときでも自分をコントロールできていることです。モータースポーツでは、危険についても考えなければなりません。1968年には、4ヵ月連続でドライバーが命を落としたこともありました」